自由人

 己を『”親も無し、妻無し、子無し”職も無し、ローンもなければストレスもなし』と詠んで、六無斎清々を僭称。

アメリカンドリームと下克上

2009年01月31日 16時09分40秒 | コラム
 アメリカ大陸には、アジア系の先住民がその地に応じた生活をしていたのだが、大航海時代からヨーロッパ人の侵略、そして移住も始まった。アメリカの歴史はメイフラワー号による、本国で抑圧されてた人々が、自由の天地創造を目指し移住したのがその始まりと見なされているが、100年後には東部に13の植民地を営むまでになった。彼らは基本的に古い体質(国家権力や道徳観)をヨーロッパ置き去り、個人の能力、才量、努力によってそれぞれの夢の実現が可能との新たな価値観の基、本国から分離独立の道を選び、先住民を居留区に追いやり、メキシコから領土を奪い、今の合衆国の旗が示す、51の星の数にあたるUSAを築いた。

 この国でも、応仁の乱以降、中央の国家権力が崩壊し、いずれも自己責任で生き延びる必要性が現実のものとなり、御伽草子の『一寸法師』が語る、戦国版アメリカンドリームの時代を迎えた。一般民衆の活き活きとした生活ぶり、それでいて、働くことが好きで、慎ましく、礼儀正しさは、F.ザビエルをして感嘆せしめたものである。

 この国でも、個人的に優れた資質を持つスポーツ選手が、野球だと大リーグ、サッカーだとヨーロッパを目指すものが増え続けているが、文化や芸術そしてスポーツでのグローバリズムは歓迎されるべきであろう。そのためには、柔道がJYUDOに、相撲がSUMOになることも容認しなければならない。

 しっかりと監視しなければならない、容認してはならないのが、資本の自由化という名の、金(カネ)のグローバリズムであろう。金(キン)だと確実に労働生産物だし、交換の仲立ちとして、互いの労働の産物を交換し合う貨幣の役割を果たしてくれる。『100年来の金融危機』と言って何か自然災害のような言い分がまかり通っているが、1929年の世界恐慌は、第一次世界大戦中、直接の当事者でなかったアメリカの此の期間での大好景気、戦後、ヨーロッパの経済復興による、生産過剰が引き金だし、今回の金融危機は、ニクソン・ショック(ドルの金交換停止)がその原因だ。

 第二次大戦後、世界の金(キン)の三分の二を保有するアメリカ、そのアメリカの通貨ドルが、それまでのポンドに代わり国際通貨の役割を果たすようになった。
 別な言い方をすれば、世界貨幣の鋳造権、紙幣発行権をアメリカが持つようになったということである。鋳造権を持つとどんなマジックが行使できるかは、江戸時代、初期の質実剛健・質素倹約は影を潜め、消費生活に徹するに連れ次第に贅沢になってくる。当然幕府の財政も苦しくなり、贅沢な生活が出来なくなる。そこで御用商人から大枚の借金をし、その贅沢な生活を維持するのだが、当然返却の見通しもなく、借金を断られるようになる。そこで、勘定奉行(今でいえば日本銀行)の奉行であった荻原重秀が考えついたのが、貨幣の改鋳である。簡単に言えば、1万両を借り、鋳直して2万両とし、その1万両を返却し、残った1万両でそれまでの生活を維持できたのである。一連の改鋳で、幕府は500万両を手にしたと言われている。当然江戸時代の人々の富の500万両が奪われたことになるのだが。

 ニクソン・ショックによる、金(キン)の後ろ盾のないドルが、国際通貨の役割を演じる事は、江戸時代のマジックと同じ事が行われているということである。
 1ドル=360円の固定相場で、ドルショックまでの期間に日本が蓄えた貿易黒字によるドルが、あっという間に3分の1に目減りしてしまった。その間日本の商品をアメリカ人は割安感で購入でき豊かな消費生活が出来たから、日本商品が売れに売れた訳である。その決め手は、労働賃金が日本とアメリカでは当時、1対7の割合であったからだ。日米間の繊維摩擦、鉄鋼摩擦はダンピングと疑われても致し方なかったろう。第二次大戦後の組織、ILOは、各国の労働者の労働条件をなるべく均一にすることが目標だったのだが、現実には、安い労働力を求めて、資本が移動するのを押しとどめることが出来ないでいる。その恩恵を受けてるのが、G8、そして最近では、G20にまで増える勢いなのだろうか、、、。

 アメリカンドリームが人類に幸せをもたらすかは、疑問符が付くようになってきたようだ。それを体現してるはずのアメリカでは、現在、上位400人の総資産が下位1億5000万人のそれを上回る超格差社会となっている。個人の能力や資質、努力の違いで生まれる格差は容認しなければならないが、『カネがカネを生む』テクニックを使っての格差は何としても生ませてはならない。

 豊かな者がさらに豊かになり、その上傲慢になるのも食い止めてやらねばならないと思う。以前に、TVで、アメリカの成功者が、「要塞の町」との特別なコミュニティを作っているとの番組を見たことがあるが、『存在が意識を決定する』のみならず、『意識が存在を決定する』事実を知り、大いなるショックを受けたことを思い出す。

 変動為替相場が曲者で、各国の経済事情は日々変わるものではないし、一定期間(半年、ないし1年)は固定相場にすべきである。そして、各国の経済状況により変更し、さらに一定期間、固定相場を維持する必要がある。ニュースで、毎日為替相場の変動を報道しているが、ファンドに集められた投機資金が、ニューヨーク・ロンドン・東京の三分され、時差を利用したり、売り買いを通して、円高、円安、を作り出し、クリックで差益を得てる事実を追求し、批判する必要がある。それらの投機資金が株価操作に移転し、利を得ようとしても、実体経済に根ざす企業の株価は、その企業の業績により安定するものだ。