面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「ロボジー」

2012年03月05日 | 映画
家電メーカー木村電器の社員である小林(濱田岳)、太田(川合正悟)、長井(川島潤哉)の3人は、いつも思い付きで業務命令を出すワンマンな木村社長(小野武彦)から、流行りの二足歩行ロボットの開発を命じられていた。
近く開催されるロボット博で、木村電器を大いに宣伝するのが社長の目的。

いよいよロボット博まであと1週間と迫ったある日。
完成に向けて徹夜続きの3人のもとへ、社長がハッパをかけに来る。
好き勝手に“吠えて”社長が出て行くと、究極の睡眠不足に苛まれていた3人のイライラが頂点に達したその時、制作途中のロボット「ニュー潮風」を不意に動かしてしまった。
見事な二足歩行を見せる「ニュー潮風」は制御不能に陥って研究室の窓から飛び出し、地面に落下!
木端微塵に大破してしまう。
窮地に追い込まれた3人は、とにかくロボット博を乗り切るため、「ニュー潮風」を着ぐるみにしてごまかす計画を立てた。
中身を空にした「ニュー潮風」に、ピッタリと収まる人間を探すために開いた架空のオーディションで、仕事をリタイアして侘しい一人暮らしを送る73歳の老人、鈴木重光(五十嵐信次郎)が選ばれる。

そして迎えたロボット博。
各社がロボットのパフォーマンスを披露する舞台で、なんとか持ち時間をこなした「ニュー潮風」。
ホッとした3人がそそくさと立ち去ろうとしたとき、何を思ったか鈴木重光は“単独行動”に出ると、あろうことか一人の女性が事故に巻き込まれそうになるところを助けてしまう。
二足歩行だけでなく、咄嗟の判断によって人助けをした「ニュー潮風」は絶賛を受けることに!

一躍世間の注目を集めた「ニュー潮風」に社長は大喜びしたのは言うまでもない。
大々的にマスコミに取り上げられてしまうという思いもよらぬ展開に、3人は顔面蒼白となる。
そして、ロボット博で「ニュー潮風」が助けた女子大生の葉子(吉高由里子)はロボットオタクで、自分を助けてくれた「ニュー潮風」に恋をしてしまったことから“追っかけ”を始めるようになり、事態は益々ややこしいことに…


「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」「ハッピーフライト」とヒット作を世に送り出してきた、日本で最も注目を集める映画監督の一人である矢口史靖監督の最新作。
どちらかと言えば、主人公を中心に若者の元気な姿を描くイメージがある矢口監督であるが、本作の主人公はそれとは真逆の老人。
老人とはいえヨボヨボというわけではなく、それどころかヘンに元気で頑固で我儘放題…まあ、エネルギーの“種類”は異なるものの、主人公が元気であるところは矢口作品の基本路線をしっかり踏襲している。
その元気な主人公の活躍に大いに笑い、ホロリとし、そして最後にニヤリとしながら物語はサラリと終わる。
いつもの溌剌さは控えめながら、軽妙洒脱な“矢口節”を、主人公を演じる五十嵐信次郎ことミッキー・カーチスが、年齢そのままに熟成した演技で見事に謳いきる。
エンディングテーマも含めて、彼なくして「ロボジー」は成り立たない。


ミッキー・カーチスのハマり具合が絶品のヒューマン・コメディの秀作。


ロボジー
2012年/日本  監督:矢口史靖
出演:五十嵐信次郎、吉高由里子、濱田岳、川合正悟、川島潤哉