面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「エグザイル/絆」

2009年03月02日 | 映画
中国返還を間近に控えたマカオ。
昼下がりの住宅街で、ひとりの男の帰宅を待っている4人の男達。
タイとキャットは彼を守るために、ブレイズとファットは彼を殺すために。
彼らの“ターゲット”はウー。
ウーを含む5人は同じ“組織”に所属し、固い絆で結ばれてきたのだが、ウーは組織のボスの命を狙って失敗し、逃亡していた。
やがてウーが帰ってくる。
馴染みの4人は彼の後について部屋へと入る。
と、いきなり始まる激しい銃撃戦!
壁には次々と穴があき、部屋のドアが宙を舞う。
だが、まだ赤ん坊のウーの子供の泣き声を合図に、男たちは銃を下ろす。
そしてウーの妻も交えて晩餐を楽しむのだった…。

本作は、ヴェネチア映画祭を皮切りに世界中の映画祭で絶賛された、ジョニー・トー監督の最高傑作と言われている。
『インファナル・アフェア』シリーズでお馴染みのアンソニー・ウォン、フランシス・ンをはじめとする、香港映画界を代表する一癖も二癖もある男優たちが集結している。
さまざまなシーンに込められたオマージュや“遊び”に、トー作品ファンなら感嘆の声を漏らすこと必至というこの作品。

恥ずかしながらトー作品を観たのはこれが初。
緊迫感あふれるオープニングから、突如始まる激しい銃撃戦。
と思いきや、唐突に仲良く飯をかきこむ5人。
大物の命を狙うも失敗して逃亡するが、その行き先はコイン任せ。
幼い頃から一緒だった5人が見せる、歳をとっても変わらぬ無邪気さと、マフィアの一員として生きることの厳しさ。
まるで桂枝雀の落語論を見るかのような、緊張と緩和の繰り返しによる独特のリズムを持ったストーリー展開にぐいぐい引き込まれ、時間を忘れた。

男たちの熱く固い絆が胸にグッとくる、緩急織り交ぜたハードボイルドの逸品。
ラストシーンのヤツら、カッコ良すぎる!


エグザイル/絆
2006年/香港  監督:ジョニー・トー
出演:アンソニー・ウォン、フランシス・ン、ニック・チョン、ジョシー・ホー、サイモン・ヤム