女性の権利拡大運動で一時有名だった、俵萌子の田舎暮らしの本だ。昨年末に亡くなるまで、栃木県赤城山麓で別荘生活を送っていた。
田舎暮らしの参考になるかと思い読んでみたが、田舎暮らしの話はほとんど出てこないで、犬と猫の話ばかりである。全くの看板に偽りあり、である。
別荘地に住み着いたメスの野良犬を飼い始めた下りが面白かったので、最後まで読むには読んだ。その野良犬「クウ」は別荘地の残飯をあさりに来ていた。仕事場が有る東京に帰るとき、管理人さんに訳を話すと、管理人さんは「鎖で繋いどきゃいいよ。餌は朝晩やっとくよ」といわれたので、別荘で飼い始めたという。おしっこは管理人さんが来た時に鎖を外すだけだ。ところが、「こんな飼い主なのに、私が行くと彼女は身悶えて喜ぶ。何日留守にしても、嫌味の一言も言わない。すねもしない。ふくれもしない。愚痴の一つも言わない。ただひたすら喜ぶ。20回も30回もジャンプし、きゃんきゃん叫び、飛びつき、ひっくり返って腹を出し、うなり声を上げ、家中走り回って、何度も私のところに戻ってくる」という犬だ。こんな話をきくと、犬を飼っていない私でも飼いたくなってくる。
犬は自分の生活範囲を守るという習性が有ることから、「クウ」を鎖に繋がずに放し飼いできることが分かる。1700坪の敷地に放し飼いされた「クウ」は飼い主がいない間も逃げずに敷地内で生きている。では、「クウ」はどうして「我が家の敷地」を認識したのだろうか、と考えると、思いついたことがあった。俵が歩くとき「クウ」は必ずつい歩く。そして、俵がここから行かないという境目のところに、おしっこを駆け回っていたのだ。こうして、自己の守備エリアを知った犬は、そこから出ず、逆にそこへ入ってくる犬や人に攻撃するらしい。
こういう犬の飼い方も有るのかと参考になった。