功夫電影専科

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『少林皇帝拳(爛頭何)』

2015-02-15 21:56:20 | ショウ・ブラザーズ
「少林皇帝拳」
原題:爛頭何/鬥智鬥力鬥功夫
英題:Dirty Ho
製作:1979年

▼国内外からの評価が高く、数ある劉家良(ラウ・カーリョン)作品の中でも傑作と称される『少林皇帝拳』。主演の劉家輝(ゴードン・リュウ)と汪禹(ワン・ユー)の見せるアクションはとても見事で、私も数年前に本作を視聴しています。
しかし個人的にどうしても釈然としない部分があり、「面白かったけど後味が悪い」と結論付けていました(理由は後述)。ですが、このほど久方ぶりに視聴してその見識を改めたため、そのへんについても色々と書いてみたいと思います。

■物語は遊女たちをはべらせて遊んでいた汪禹と、宴を開いていた劉家輝が張り合う場面から始まる。実は汪禹は詐欺師で、盗んだ金品で豪遊していたところを役人に詰め寄られるが、劉家輝の取り成しで捕まらずに済んだ。
だがその際、盗んだ金品を劉家輝にちょろまかされてしまい、すったもんだの末に恵まれない村へ寄付されてしまう。激怒した汪禹は彼に掴みかかるも、遊女の惠英紅(ベティ・ウェイ)に阻まれて手傷を負うのだった(←実は劉家輝の仕業)。
 奇妙なことにこの傷がなかなか治らず、再び劉家輝のもとを訪れた汪禹は「私の解毒剤がなければ完治しない」と告げられ、不本意ながら彼に弟子入りすることとなる。
だがその一方で、朝廷の第四皇子が劉家輝の暗殺を目論み、将軍の羅烈(ロー・リェ)に刺客を放つよう命じていた。ある時は利き酒の席に、またある時は骨董品のお披露目に見せかけて、次から次へと刺客が襲いかかってくる。
 劉家輝は汪禹を巻き込むまいと密かに戦うが、最終的には自らが第十一皇子だと明かした。一連の戦いは次期皇帝の座を巡る争いによるもので、負傷した彼を放っておけない汪禹は正式に弟子入りを志願する。
一か月の短期特訓を経て、いよいよ皇位の継承式に向かうこととなった劉家輝と汪禹。果たして彼らは道中に待ち受ける第四皇子の刺客と、最後の関門である羅烈を突破することが出来るのだろうか!?

▲詐欺師が謎の紳士に振り回され、やがて皇族の陰謀に立ち向かうという単純明快な本作ですが、かつての私はラストシーンに疑問を持っていました。
物語の最後で劉家輝は無事に継承式へ出席し、杖を差し出した汪禹を放り出して終劇となります。これが私には命懸けで皇子のために闘い続け、最後まで気を遣った彼を用済みとばかりに捨てたように見えたため、悲惨すぎるラストと解釈していたのです。
しかし皇帝に謁見する場に一般人を連れ込むのは言語道断だし、そもそも今は継承式の真っ最中。劉家輝がお忍びで旅をしていたことがバレる可能性もありますし(笑)、あそこで汪禹が叩き出されたのは至極当然だと言えるでしょう。

 ところでこれは単なる深読みですが、汪禹があの場にとどまっていれば第四皇子に存在を知られ、更なる危険が及んでいたかもしれません(汪禹が一枚噛んでいることを知っているのは羅烈までで、第四皇子はまだ知らない)。
劇中で登場する皇帝は康熙帝で、その第四皇子といえば後の雍正帝…。劉家輝に対する仕打ちが明るみに出れば、継承式の結果も史実と違うものになっていたかもしれず、どちらにしても宮廷内の波乱は必至だったはずです。
 ゆえに劉家輝は汪禹が関わり過ぎること・知り過ぎることを危惧し、だからこそ彼を強引に継承式の場から叩き出したり、黒幕のことを聞こうとした所を何度もいさめていた…とは考えられないでしょうか?
ただ、そうすると唐偉成(ウィルソン・タン)に詰門した際の辻褄が合わなくなりますが…まぁこれはノーカンということで(苦笑

 そんなわけでストーリーは考察の余地があり、冗長さを感じる部分もあったりしますが、ことアクションについては素晴らしいものを作り上げています。
本作で武術指導を受け持った劉家良は、「アクションシーンの複雑化」をとことんまでに追求しており、1つとしてオーソドックスな立ち回りは存在しません。
 まず最初に劉家輝がこっそり汪禹を牽制し、惠英紅を操って功夫の達人に仕立て上げたかと思えば、王龍威や唐偉成と談笑しているように見せながら激闘を展開。追っ手との戦いでは、車椅子に座った状態で刀や槍などを華麗にかわします。
ラストでは2対3の決闘となり、片足の劉家輝に支援を受ける半人前の汪禹と、連係攻撃で迫る羅烈チームによる複雑化を極めたバトルが展開されていました(ただしこの立ち回りは複雑化が行き過ぎていて、スピード感が削がれていた感があります)。
単なる腕比べに終わらない功夫アクションが、最初から最後まで堪能できるなかなかの良作。ちなみに史実の第十一皇子こと胤[示茲]は11歳で病死しており、本作で劉家輝が演じた勤親王というキャラクターは架空の存在と思われます。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
雍正と言えば (醒龍)
2015-02-16 20:04:51
龍争こ門さん、どうもお久しぶりです。
記事の『爛頭何』の題名を見てうれしくなり書き込みさせていただきました。
劇中描かれていた皇子…、なぜか11番目だったんですよね。本来は14番目の皇子だと思うのですがここは少しひねってあるのでしょうか(?)。あと雍正モノなんかもいろいろありましたが『カンフーエンペラー』とか『雍正與年羮堯』等がありましたね。
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返信。 (龍争こ門)
2015-02-18 03:04:56
 醒龍さんこんばんは、こちらこそお久し振りです。
なぜ本作で病没した第11皇子を主人公にしたのか、確かに気になりますね(番号が違うので雍正帝ものでおなじみの遺言書改ざんも無いですし)。
なお、第11皇子にまつわる逸話か何かあるのかな?と調べてみましたが、それらしいエピソードは見つかりませんでした。
ちなみに『雍正與年羮堯』は今のところ未見です(苦笑
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手がかりは (醒龍)
2015-02-18 22:05:29
どうも、こんばんは。昔買った宮崎市定の本なども読み返してみましたが手がかりはつかめず。。爛頭何の原作本があるのか分かりませんが、こんな説はいかがでしょうか?幼少期に亡くなった康煕帝の皇子には6と11番目がいたと。作者が史実に左右されない新しいストーリーを書くにはこのどちらかを設定すればまったく新しいストーリーが出来上がる…と。6はさすがに縁起が悪い。それじゃあということで11に決定!(なーんて話かも)雍正與年羮堯についてはまたいつか。
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返信。 (龍争こ門)
2015-02-20 03:11:03
 醒龍さんこんばんは。夭折した皇子を題材にストーリーを膨らませた、という説は十分にありえますね。
ただ、劉家良としては功夫アクションに集中していたと思われるので、あまりストーリーに深い考えはなかったのかもしれません(爆
『雍正與年羮堯』はアクションに迫力があり、ジャッキーや李小龍とも縁のある作品という事なので、いつかは見てみたいです。
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