功夫電影専科

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『隷嬢剣/くノ一妖刀伝説』

2009-04-13 23:21:43 | 女ドラゴン映画
「隷嬢剣/くノ一妖刀伝説」
原題:劍奴/劍奴之血契約/劍奴之血[放犬]約([放犬]の正字は「放」の部分が異なります)
英題:Slave of the Sword
製作:1993年

▼再び香港三級片のレビューだが、今回は『獣』よりもサプライズに満ちた作品だ。なにしろ監督と武術指導が、あの朱延平(チュー・イェン・ピン)&林萬掌の『カンフーキッド/好小子』コンビなのである。朱延平がこのような三級片を製作していた事や、その作品が日本に上陸している事実にも驚きだが、当時の朱延平は同年に武侠片の『フライング・バトル』を、その翌年にはキッズ向けの『ビビアン・スーの恋しくて…(笑林小子)』を撮っている。いくら香港映画がフリーダムとはいえ、このジャンルを飛び越えたムチャぶりは度を越えていると言っても良いはずだ(笑

■本作は明朝末期を舞台にした武侠片だが、ストーリー自体は支離滅裂で『ドラゴン特攻隊』『炎の大捜査線』等の朱延平作品を髣髴とさせる。謎の刺客に襲われ、父の陳慧樓や親類を殺害された陳寶蓮(チェン・ボーリン)は、謎の刺客の罠によって遊郭に売り飛ばされてしまった。遊郭の女将・倪淑君は剣客の樓學賢(『精武英雄』で李連杰(ジェット・リー)に倒されて周比利(ビリー・チョウ)にも倒される"芥川さん"と言えば、思い出す方も多いはず)を従えており、裏で暗殺の仕事なども請け負っているらしいが…。
実は倪淑君、かつて陳寶蓮や樓學賢と共に陳慧樓に拾われた過去を持ち、ただ1人だけ可愛がられた陳寶蓮を疎んじて復讐しようと画策していた。しかし倪淑君は陳寶蓮に乗り換えた樓學賢の刃に貫かれ、そして樓學賢も陳寶蓮の毒酒で…??実は、陳寶蓮は倪淑君と樓學賢を始末するため、暗殺組織のボスによって送りこまれた刺客であったのだ(陳寶蓮を陥れたのも計略の内)。ところが話は二転三転、更に想像を絶する結末が待っていた…。

▲武侠片という体裁を取っているだけあって『獣』よりは見ていられたものの、映画としては『獣』よりもトンデモない作品である(苦笑)。功夫アクションはこの当時のワイヤー古装片にありがちなクルクル舞ってキンキン斬りあうだけの殺陣だが、林萬掌が一枚噛んでいるため見栄えについては申し分ない。特に『精武英雄』ではいいとこなしだった樓學賢が、本作では堂々と剣戟アクションで舞っている姿も興味深く、暗殺組織のボスにあの莫少聰(マックス・モク)が扮しているのも大きなポイントだろう。
しかし本作は途中まで普通の物語だったものが、クライマックスに突入した途端に酷過ぎる超展開へと突入してしまうのだ。どんでん返しといえば古龍原作の武侠片などでお馴染みの展開だが、本作におけるどんでん返しはあまりにも救い様が無く、そのアングラさは『獣』以上と言ってもいいかもしれない。『獣』の時もそうだったが、三級片というものは登場人物全員が外道で、最後は皆殺しで終幕するという決まりでもあるのだろうか?
個人的にはこれまで見た朱延平作品の中ではダントツでワースト。エンドテロップで5度も高笑いを繰り返す莫少聰の姿が作品の崩壊具合を現しているようで、何ともいえない嫌な気分にさせてくれます。…ところで、くノ一なんてどこにも出てなかったぞ!?

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