功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『沖天炮/冲天炮』

2009-09-15 22:44:37 | カンフー映画:佳作
沖天炮/冲天炮
英題:Two Graves to Kung Fu/The Inheritor of Kung Fu
製作:1977年(73年?)

▼多分このブログを見ている人は既にご存じかと思いますが(2回目)、この秋に協利作品が何本か発売されるようです。
もうそのラインナップは各所で公開されてますが、まさか『天才功夫』に『匯峰號黄金大風暴/闖禍』までソフト化されるとは未だに信じられません(笑)。しかし『猴形扣手』発売中止の件もあるので実際にリリースされるまで油断はしない方が良いかと思われます(個人的には『猛男大賊[月因]脂虎』の商品化には納得できないところもあるのですが・爆)。ということで今回は『カンフー・クエスト/覇者の剣』に引き続き、再び協利電影発売を記念した協利レビューをお送りしていきます。
この作品、主演はショウブラから出向してきた劉家榮(ラウ・カーウィン)で、同じくショウブラで仕事をこなしてきた仲間たちが会しているが、どうも彼の単独主演作は(私が知る限りでは)本作だけのようだ。劉家榮の代表作として有名な『Mr.ノーボディ』は石天(ディーン・セキ)が脇に来るし、デブゴン映画ではサモハンが影の主役として立ち回った。もっともこれらは後出しの付加価値に過ぎないが、結果的に本作は歴史上唯一の劉家榮単独主演作ということになる。流石は協利電影、目の付け所が斜め上を行っているぞ(笑

■物語はとてもシンプルで、劉家榮と4人の悪党が切った張ったの大勝負を繰り広げるというものだ。劉家榮は採石場で働く好青年で、石堅(シー・キェン)の道場に通っている。そんな劉家榮たちの町に、突如として怪しげな男たち(徐蝦・王將・黄培基)が出没するようになった。不穏な空気が町を支配する中、劉家榮は王將が起こした殺人事件の濡れ衣を着せられ、時を同じくして石堅は徐蝦ら極悪トリオに殺害されてしまった。
この極悪トリオを操っているのは、連中のボスである陳鴻烈(チェン・ホンリェ)だ。彼らの目的は町全体の支配にあり、警察署長を買収して自らが警備隊に成り代わると、職権を乱用して横暴の限りを尽くし始めた。劉家榮の友人である馮克安(フォン・ハックオン)が、石職人の任浩が次々と極悪トリオの手によって命を落としていく。面会に来たヒロイン・李影と牢獄から脱出した劉家榮だが、これは資産家である李影の父から財産を巻き上げようと、陳鴻烈が仕組んだ罠であった。
続いて李影も敵の手に落ちるが、極悪トリオの悪質さについていけなくなった警備隊員から密告を受け、遂に立ち上がる劉家榮。怒りの火の玉となった劉家榮は王將と黄培基を、そして徐蝦を撃破して陳鴻烈に立ち向かうが、そこにはあまりにも哀しい結末が待っていた…。

▲正直、少し期待外れな作品だ。ストーリーはただ単に陰惨なだけだし、片っ端から善良な人物が殺されていく様は気持ち良くない。
監督は本作でボスも演じた陳鴻烈だが、あまり奥行きの感じられない物語になってしまったのは残念である。また、唯一の劉家榮単独主演作であると先述したが、本作における劉家榮はどこか個性に欠けていた。別に劉家榮の演技が悪いわけではないが、やはり彼はダブルキャストでこそ光る存在なのだと改めて認識しました。そういえば劉家輝はともかくとして、劉家良も単独主演作をあまり撮ってないような気が…(ピンの主演は『秘技・十八武芸拳法』くらいか?)。
これで功夫アクションも淋しい出来だったら目も当てられないが、こちらは劉家榮自身が渾身の殺陣を構築していて本当に素晴らしい。右も左も悪役俳優ばかりで占められた本作だが、似た感じのキャスティングである『白馬黒七』のような体たらくには陥っておらず、立体的な技の応酬を見ることができる。特に黄培基と徐蝦は劉家榮と同じ殺陣師ということもあって、ラストの2連戦は手に汗握る名バトルと言えよう。
ただし問題なのは…そう、陳鴻烈だ。これまでにも『燃えよジャッキー拳』『唐手[足台]拳道』などでラスボスとして君臨した陳鴻烈だが、どちらの作品もモタついた立ち回りに終始している。本作では劉家榮を相手に闘っているが、徐蝦たちの見せた前哨戦に比べると物足りない内容だった。そもそもこの陳鴻烈、劇中では徐蝦らに指示しているだけで戦闘には参戦しておらず、彼が動き出すのはラストバトルのみ。せめて石堅にトドメを刺す役が彼だったら「陳鴻烈は強い」と印象付けられたと思うのだが……。
と、ちょっぴり厳しい評価になりましたが、功夫アクションは協利らしくサービス満点だし、レア対戦も数多く実現しているので、とりあえず見て損は無い作品かと。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿