功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『扮野小子』

2007-10-14 21:38:01 | カンフー映画:傑作
扮野小子
The Young Avenger
1980

▼ショウ・ブラザーズを代表する功夫スター・汪禹(ワン・ユー)の主演作だ。監督が唐偉成(ウィルソン・タン)で、キャストも徐少強・朱鐵和・黄杏秀とショウブラ系(というか劉家良系)で締められているが、ショウブラ作品ではない様子。もしかすると劉家良も関与しているのかも…?

■汪禹は葬儀屋で働く一方で、棺の遺体から貴金属を盗む墓荒らしを生業としていた。そうやってせっせと稼いだ金は馮敬文の賭場ですっからかんにしてしまうダメ人間の汪禹。彼は今日も墓荒らしに精を出すが、その帰りにオバケと出会って咄嗟に逃げ出した。
そのオバケこと朱鐵和は、「別にお前を祟る気はない…ある4人の男を始末してほしいのだ。報酬も渡そう…」と汪禹に持ちかけてきた。汪禹は金を頂いてトンズラしようとしたが、そうは問屋が許さない。「変な真似したらホントに祟り殺すぞ?」と再び登場した朱鐵和。彼の命令で何がなんだか解らぬままに、汪禹はターゲットの1人がいる映画小屋へとやって来た。
映画小屋では石堅が出演している無声映画を名調子に乗せて上映しており、たまにフィルムが詰まると客をじらさないように即興の寸劇が始まる。そこで寸劇係をしているのが標的の湯錦棠だった。汪禹は苦戦するものの、寸劇に紛れて湯錦棠を打ち倒した。
なんとか1人を倒したはいいが、敵はまだまだ強い連中が揃っている…ということで、朱鐵和は汪禹に特訓を施すことにした。何故にここまでして連中を殺したいのかと汪禹に問いただされ、朱鐵和は実は自分がオバケではない事を明かし、すべてを語り出した。
17年前、朱鐵和は仲間の唐偉成・徐少強・江島・湯錦棠に裏切られ、谷底に突き落とされたという(なお、回想シーンに出てくる丘は『嵐を呼ぶドラゴン』のラストバトルの場所)。辛くも生きていた朱鐵和だが、その顔は無残な傷跡が…。彼の身の上に同情した汪禹は、改めて朱鐵和の仇討ちを誓うのだった。
次に汪禹が向かったのは徐少強が仕切る娼館だが、徐少強はめっぽう強く大苦戦。なんとか黄杏秀を人質に脱出したが、朱鐵和が重傷を負ってしまう。「やはりお前を巻き込むべきではなかった…この金で逃げろ」と言う朱鐵和に対し(そういえば朱鐵和はなぜこんなに大金を持ってるんだっけ?)、汪禹は彼を守る決意を固めていた。その勇姿に、かつてのがめつい守銭奴だった頃の面影は無かった。
そして翌朝、攻め入ってきた徐少強は足手まといだとして黄杏秀をあっさり殺害。汪禹は血も涙もない徐少強の剣術に様々なトラップを駆使して勝利するが、朱鐵和は命を落としてしまう。朱鐵和の遺志を継いで、汪禹は唐偉成の人身売買に加担していた江島を撃破する。更には矢継ぎ早に唐偉成のもとへと飛び込んだ汪禹はザコどもを一蹴し、いよいよ最後の大一番である唐偉成との戦いに挑む!

▲武術指導は監督の唐偉成自身が担当しており、全編に渡って濃厚なファイトが披露されている。最後の汪禹VS唐偉成では汪禹が墓荒らしに使っていた七つ道具を駆使して戦うのだが、武器がシャベル・クワ・カリスティック・棒と変幻自在に変化。これらのギミックも含めてなかなか面白く、最後の決戦を盛り上げていた。
ストーリーは守銭奴だったボンクラがいつしか立派な功夫使いとなって悪を討つというオードソックスなもの。個人的にはせっかく登場しておきながらあっという間に退場してしまった黄杏秀が惜しく(たぶんショウブラ仕事の合間に出演したんでしょうね)、また汪禹が強くなる過程ももう一段階欲しかったところだが、上質のアクションもあわせて功夫映画ファンなら抑えておくべきタイトルですね。