「燃えよデブゴン7」
林世榮/仁者無敵
The Magnificent Butcher
1978
▼実在した伝説の武道家・黄飛鴻の弟子、林世榮のお話である。
林世榮は黄飛鴻映画でもよく登場し、鄭則士や呉民才といったおデブ俳優が演じている事が多いが、実際はデブじゃなかったらしい(肉屋だったことも怪しいとか)。ちなみに林世榮の弟子の息子、すなわち孫弟子はあの劉家良だったりする。
無論、香港映画界で最も功夫に秀でて、最も脂肪が秀でている(笑)サモハンにその役が回ってきてもおかしくない…ということで彼が主演している本作。しかし袁和平率いる袁家班と洪家班のコラボという夢の組み合わせ!これだけでも本作は見る価値があります。というか、これ"だけ"しか見る価値が無いというか…(後述
■林世榮ことサモハンは、ある日誤解から李海生(リー・ハイサン)道場の門下生をボコッたことで關徳興演ずる黄飛鴻から大目玉を喰らい、キツイ罰を味わうことに。
その李海生は凄まじい鉄拳の使い手で、彼の道場には他に扇子捌きが芸術的な林正英やネコのようにすばしっこい鐘發、ワッキーそっくりな棒術使いの元武がいたが、他に修行もろくにしないで遊びほうける放蕩息子の馮克安がいた。
彼は無類の女好きで、兄を尋ねてやってきた蒋金の彼女を奪おうとする始末。そこに居合わせたサモハンは、反撃して馮克安をボコボコにしていた蒋金を悪者と勘違いしてぶっとばしてしまう。
蒋金は彼女がどこを探してもいないので途方に暮れ、首を吊ろうとしていた。その矢先、彼を助けたのは樊梅生だった。彼がまんま『酔拳』の袁小田スタイルなのは、当初この役が袁小田で予定されていたから。実際に撮影もされたらしいが、袁小田が亡くなったために全部カットしたという。そんな代役・樊梅生は蒋金の話を聞いて馮克安を叩きのめした。腹の虫の収まらない馮克安はサモハンと樊梅生を騙して二人を戦わせようと画策する。
果たして計画は成功するが、樊梅生はカンフーの達人でサモハンは手も足も出なかった。しかし二人は和解して蒋金の家に戻り、協力して馮克安を懲らしめた。その時、蒋金の彼女とついでに李海生の養女を助け出した。
その夜、蒋金の探していた兄こそがサモハンであったことも判明して意気揚々の一同。だがサモハンと一緒に彼の家に来たハネッかえりの養女を馮克安が見つけ、乱暴を働こうとしたところ勢い余って彼女を殺害してしまう。
馮克安はこの罪をサモハンに擦り付け、父の李海生と門下の林正英らを引き連れ、何も知らないで戻ったサモハンはたちまち殺人犯扱いに!怒りに燃える李海生は寳芝林に乗り込んだが、兄弟弟子の元彪が林正英を、韋白が元武を撃破する。しかし李海生の拳は手強く、駆けつけたサモハンはまともに喰らって重傷を負ってしまう。
樊梅生の元に預けられたサモハンは一命を取り留め、李海生に対抗すべく樊梅生から拳法を伝授される。奇襲を仕掛けてきた鐘發を返り討ちにするが、その一方で今度は馮克安により蒋金が殺された。復讐に燃えるサモハンは位牌を片手に馮克安を撲殺。そしてあんな放蕩息子でもやはり可愛かったのか、こちらも怒りを燃やす李海生の姿が…。最早、止める事の出来ない闘いが始まろうとしていた。
▲スゴい。そりゃもう洪家班と袁家班の夢のタッグだから、殺陣が既に芸術の域にまで達している。冒頭の關徳興Vs李海生の習字対決から始まり、次々と隠し武器を駆使する林正英Vs足技の元彪、棒術で迫る元武Vs武器で対抗の韋白、おそろしくすばしっこい猫拳の鐘發Vsサモハン、そしてラストのサモハンVs李海生の行き詰る死闘!110分のちょっとロングな映画の尺がそんなに長く感じない、素晴らしいバトルが目白押しなのだ。
しかし、元はといえば馮克安が馬鹿な事を起こさなければ、李海生が真実を見極めていればこんな事態にはならなかったはずだ。李海生側は有能な弟子のほとんどと当事者の息子らが死んで死屍累々。サモハンも弟が殺されてかなり殺伐としている。よくよく考えれば馮克安に殺された李海生の養女も嫌な女だったし、やはり悪いのは教育できていなかった李海生…なのか?
そうして誤解に誤解が重なった末のオチも個人的には面白くない。弟子が死にかけて民間人にも犠牲者が出たというのに、用事があったとはいえ天下の黄飛鴻が最後にのうのうと登場(關徳興はゲスト出演とは解っているけど)し、李海生が重傷を負っている事などに触れずに看板が逆だったことに怒って劇終…黄飛鴻は威厳のある人物っぽく描写されているが、これでは分からず屋の頑固ジジイだ。
關徳興自身もこの作品は好きじゃなかったようですし、物語の陰惨さで言えば『ペディキャブ・ドライバー』とタメを張るヒドさ。アクションは文句なしの傑作だっただけに、このストーリーは色々と辛かったです。
林世榮/仁者無敵
The Magnificent Butcher
1978
▼実在した伝説の武道家・黄飛鴻の弟子、林世榮のお話である。
林世榮は黄飛鴻映画でもよく登場し、鄭則士や呉民才といったおデブ俳優が演じている事が多いが、実際はデブじゃなかったらしい(肉屋だったことも怪しいとか)。ちなみに林世榮の弟子の息子、すなわち孫弟子はあの劉家良だったりする。
無論、香港映画界で最も功夫に秀でて、最も脂肪が秀でている(笑)サモハンにその役が回ってきてもおかしくない…ということで彼が主演している本作。しかし袁和平率いる袁家班と洪家班のコラボという夢の組み合わせ!これだけでも本作は見る価値があります。というか、これ"だけ"しか見る価値が無いというか…(後述
■林世榮ことサモハンは、ある日誤解から李海生(リー・ハイサン)道場の門下生をボコッたことで關徳興演ずる黄飛鴻から大目玉を喰らい、キツイ罰を味わうことに。
その李海生は凄まじい鉄拳の使い手で、彼の道場には他に扇子捌きが芸術的な林正英やネコのようにすばしっこい鐘發、ワッキーそっくりな棒術使いの元武がいたが、他に修行もろくにしないで遊びほうける放蕩息子の馮克安がいた。
彼は無類の女好きで、兄を尋ねてやってきた蒋金の彼女を奪おうとする始末。そこに居合わせたサモハンは、反撃して馮克安をボコボコにしていた蒋金を悪者と勘違いしてぶっとばしてしまう。
蒋金は彼女がどこを探してもいないので途方に暮れ、首を吊ろうとしていた。その矢先、彼を助けたのは樊梅生だった。彼がまんま『酔拳』の袁小田スタイルなのは、当初この役が袁小田で予定されていたから。実際に撮影もされたらしいが、袁小田が亡くなったために全部カットしたという。そんな代役・樊梅生は蒋金の話を聞いて馮克安を叩きのめした。腹の虫の収まらない馮克安はサモハンと樊梅生を騙して二人を戦わせようと画策する。
果たして計画は成功するが、樊梅生はカンフーの達人でサモハンは手も足も出なかった。しかし二人は和解して蒋金の家に戻り、協力して馮克安を懲らしめた。その時、蒋金の彼女とついでに李海生の養女を助け出した。
その夜、蒋金の探していた兄こそがサモハンであったことも判明して意気揚々の一同。だがサモハンと一緒に彼の家に来たハネッかえりの養女を馮克安が見つけ、乱暴を働こうとしたところ勢い余って彼女を殺害してしまう。
馮克安はこの罪をサモハンに擦り付け、父の李海生と門下の林正英らを引き連れ、何も知らないで戻ったサモハンはたちまち殺人犯扱いに!怒りに燃える李海生は寳芝林に乗り込んだが、兄弟弟子の元彪が林正英を、韋白が元武を撃破する。しかし李海生の拳は手強く、駆けつけたサモハンはまともに喰らって重傷を負ってしまう。
樊梅生の元に預けられたサモハンは一命を取り留め、李海生に対抗すべく樊梅生から拳法を伝授される。奇襲を仕掛けてきた鐘發を返り討ちにするが、その一方で今度は馮克安により蒋金が殺された。復讐に燃えるサモハンは位牌を片手に馮克安を撲殺。そしてあんな放蕩息子でもやはり可愛かったのか、こちらも怒りを燃やす李海生の姿が…。最早、止める事の出来ない闘いが始まろうとしていた。
▲スゴい。そりゃもう洪家班と袁家班の夢のタッグだから、殺陣が既に芸術の域にまで達している。冒頭の關徳興Vs李海生の習字対決から始まり、次々と隠し武器を駆使する林正英Vs足技の元彪、棒術で迫る元武Vs武器で対抗の韋白、おそろしくすばしっこい猫拳の鐘發Vsサモハン、そしてラストのサモハンVs李海生の行き詰る死闘!110分のちょっとロングな映画の尺がそんなに長く感じない、素晴らしいバトルが目白押しなのだ。
しかし、元はといえば馮克安が馬鹿な事を起こさなければ、李海生が真実を見極めていればこんな事態にはならなかったはずだ。李海生側は有能な弟子のほとんどと当事者の息子らが死んで死屍累々。サモハンも弟が殺されてかなり殺伐としている。よくよく考えれば馮克安に殺された李海生の養女も嫌な女だったし、やはり悪いのは教育できていなかった李海生…なのか?
そうして誤解に誤解が重なった末のオチも個人的には面白くない。弟子が死にかけて民間人にも犠牲者が出たというのに、用事があったとはいえ天下の黄飛鴻が最後にのうのうと登場(關徳興はゲスト出演とは解っているけど)し、李海生が重傷を負っている事などに触れずに看板が逆だったことに怒って劇終…黄飛鴻は威厳のある人物っぽく描写されているが、これでは分からず屋の頑固ジジイだ。
關徳興自身もこの作品は好きじゃなかったようですし、物語の陰惨さで言えば『ペディキャブ・ドライバー』とタメを張るヒドさ。アクションは文句なしの傑作だっただけに、このストーリーは色々と辛かったです。