今年は珍しく台風があまり本州に上陸しなかった。それで柿などの果物が豊作になると、私は期待していた。しかし、例年にくらべ、柿の出回りが少ない。私の引きこもりの息子は、新型コロナ流行で外国からの農業実習生が日本に入国できないからだろう、と言った。
今年の夏は、関東圏で農園荒らしが頻繁に起きた。梨などの果物が盗まれたり、子豚や鶏などの小家畜が盗まれたりした。メディアに、ベトナムからの農業実習生ではないか、という報道が流れ、窃盗の疑いで20人前後が逮捕されたが、どうなったのだろうか。農業実習生の生活困窮があまりにもひどく、哀れで記事にもできない状況なのだろうか。
何年か前だが、農業実習生や漁業実習生が生活に追い込まれて雇用主を殺したとかという話しがいくつか新聞にのった。また、養殖にたずさわる実習生が、集団で仕事に出かけ、夜明け前の冷たい海で溺れ死ぬニュースもあった。
11月27日の朝日新聞夕刊に、警察官として7年間に400人近くのベトナム人を取り調べた金谷学は、その多くが100万円以上の借金を抱えていた、と証言している。
自国の送り出し機関で聞いていた条件と実際に日本でもらえる給料に大きな差があり、抱えている借金のため、自国に帰ることもできないのだろう。
私が若い頃、東北や北海道から東京や大阪に出稼ぎにでてきて、期待された稼ぎがなく故郷に帰れず、そのままドヤ街の住人になったという話しをよく聞いた。
しかし、異国からの実習生は逃亡しても、それだけで不法滞在者になる。人を殺さなくても、物を盗まなくても、犯罪者とされる。
問題の発端は、人手不足に陥った農家や養殖業や工場や建設業の人たちのために、1993年に、自民党が、安い労働力を、人権を無視して、海外から導入しようとしたことにある。
人権を無視した労働力の異国の送り出し機関も、日本の監督機関も、日本の雇用者も悪い。しかし、外国人技能実習制度を作った日本政府が一番悪い。合法的な奴隷制を現代につくりだしたからである。
外国人技能実習制度を廃止しなければいけない。
戦前、日本ではやった言葉に「万国のプロレタリアートよ団結せよ」がある。私が若い頃まで、その言葉が生き残っていた。
プロレタリアートは、もともと、古代ローマ帝国の最下層の自由民たちのことである。収穫期に臨時に雇用される賃金労働者で、ふだんは施しで生きていた。
プロレタリアートは、昔から、そうだったのではなく、没落自作農の末裔なのである。没落の理由は、奴隷を使った大地主に農産物の価格競争で負けたからである。
古代ローマ帝国は他国とたえず戦争をして捕虜を獲得していた。そして、捕虜を非常に安い価格で奴隷として大地主に売り払っていた。安い労働力が入ってくることで、自作農が大地主に負け、土地を手放し、プロレタリアートにおちていったのだ。古代ローマでは何回かプロレタリアート革命が起き、大地主の土地を解放して自作農を増やそうとするが、安い価格の奴隷がローマ帝国に流入して、また、自作農の没落が起きた。
古代ローマ帝国の没落は、領土拡張が止まり、戦争による超安い価格の奴隷の入手が止まったことで始まる。奴隷制は生産性が低いから、大地主の没落が始まり、帝国の維持ができなくなっていく。
1993年に自民党が始めた、安い労働力を海外から導入するための、外国人技能実習生制度をやめるときがきた。単に、海外からきた実習生に同情してではない。私たちのためにもだ。
第1に、その制度があるがために、良心的な事業者のビジネスがなりたたなくなる。第2に、日本国民の働く人たちの賃金を下げる要因にもなる。第3に、いつまでも海外から安い労働力が導入できるわけでもない。導入できなくなったとき、合法的奴隷制に頼った日本経済は破綻する。
[関連ブログ]