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猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

最悪の事態に命を賭ける人たちがいないなら原発を再稼働してはならない

2021-03-07 22:58:01 | 原発を考える


きのうのNHK ETV特集『原発事故“最悪のシナリオ”~そのとき誰が命を懸けるのか~』は、10年前の福島第1原発事故はいかに危険なものだったかの証言を集めたドキュメントである。いろいろな驚愕の事実もあり、私はきのうテレビで見て、きょう、YouTubeでもう一度見た。

この事故は幸運にも日本に誰も住めなくなるような最悪事態を結果的には避けられた。緊急冷却水を原子炉に注がなかったので、老巧化した原子炉が割れることはなかった。老巧化していたから、格納容器のあちこちから、発生した水素ガスがもれて、建屋の水素爆発で済んだ。メルトダウンした核燃料は、制御棒の差込口から地下に抜け落ち、そこでデブリとなって水没した。水蒸気爆発がなかったのである。

10年後のいまなお、避難民が放射線量が高くて帰還できていなし、また、原子炉の廃炉作業の見通しが立たないが、それでも、最悪シナリオよりも良かったのだ。

最悪シナリオとは、福島第1原発が制御不可能になり、全員退避せざるをなくなることである。そして、それが、10kmも離れていない福島第2原発の制御不能を引き起こし、さらに飛び火をして女川原発も制御不能になるというシナリオである。すると、東京の住民も避難しないといけない。東日本の広大な領域に人が住めなくなるというものである。アメリカは200マイル圏内の米軍を撤退させる計画を立てていた。

米軍幹部から自衛隊幕僚長だけでなく、アメリカ政府からも日本政府は、事故処理の英雄的行動を求められたという。命がけで、犠牲をも払ってでも、原発事故の最悪シナリオを防げといわれたのだ。

いっぽう、東電幹部が政府に東電社員の退避を伺い、当時の首相、菅直人が怒って、細野豪志首相補佐官を東電本社に駐在させた。そして、政府と東電との統合本部を作ろうとした。しかし、政府が何をやってくれるのか、という不満を東電はあらわにした。勝俣恒久会長は、自衛隊に瓦礫の撤去を要求し、さらに、自衛隊に原子炉の管理をも任せますとまで言った。

そのころ、福島第1原発では、本社から交代要員や補充員が来ず、体調不良者や、泣きわめく者、現場からいなくなる者が続出していったのである。

その中で、政府も何かやらざるを得ず、壊れた4号機建屋最上階の核燃料保管プールの放水が始まったのである。経済産業省技官の戒能一成が自衛隊に目的とそのリスクを説明し、計画が実行された。もし、核燃料がメルトダウンしていれば、放水で水蒸気爆発を起こし、よりコントロール不可能になる。したがって、むき出しになった保管プールにヘリコプターから少し水をかけ、何が起きるか、見ることを戒能は提案した。

3月16日、自衛隊のヘリコプターは放水に4号機に向かったが、放射線量が高くて、引き返した。翌日、再び、4号機に向かったが、前日より放射線量が低く、放水を実行した。幸運にも、本当に幸運にも、水蒸気爆発は起きなかった。使用済み核燃料はメルトダウンしていなかったのである。

もし、水蒸気爆発したら、自衛隊員は生きて戻れなかっただろう。当時、私はヘリコプターの放水をテレビで見ていたが、水蒸気爆発の危険や、アメリカ政府と米軍からの圧力を知らなかった。たんに、自衛隊機の放水がへっぴり腰だと誤解していた。

その後、東京消防庁のレスキュー隊が来て、本格的な放水が始まった。

あとでわかったのだが、4号機の水素爆発は、3号機の水素ガスが4号機の建屋に流れ込むという施工ミスがあったのである。

さて、福島第1原発にはいろいろな不備があったことが、10年たっても新しく指摘されている。国は事前に設計ミスや施工ミスを発見できるとは限らないのである。

さらに、重要なことは、福島第1原発事故に先立つ、スリーマイル島原発事故やチェノルブイ原発事故は、保守点検のため原子炉を停止したときの人為的なミスによって起きている。

すなわち、原子力規制委員会がいくら頑張っても、完全に原発事故が起きないことは、あり得ないのだ。政治家に「世界で一番厳しい規制で再稼働している」と言われても、原子力規制委員会は困惑するだけである。絶対の安全なんて保障できないのである。だからこそ、「最悪のシナリオ」のとき、命を投げ出す覚悟の人がいなければ、原発を再稼働してはいけないのだ。

北澤俊美元防衛相が言うように、自衛官も人間であるから、民間企業が重大事故を起こしたから、国民のために死ね、とは簡単に言えないのである。自衛官は災害救助のために動員されても、死ぬために動員してはならないのである。

原発事故を反省しない日本政府にオリンピックを開催して欲しくない

2021-03-06 23:00:09 | 原発を考える


3月11日が近づくと、10年前の東日本大震災と原発事故を思い出す。

2011年3月11日、大地震が起きた日は、曇りのどんよりした空であった。横浜の集合住宅7階にある私の住まいは大きく揺れた。妻はちょうど外にいて、私のいる建物が左右に大きく揺れるのを目撃していた。そのころ、地震で送電線鉄塔も倒れ、高さ20メートルを超える大津波が福島第1原発を襲い、緊急停止していた原子炉を冷やせないという事態が生じた。その日、大津波に多くの人が呑み込まれる一方で、原発のメルトダウンが始まったのである。

新型コロナの感染爆発より、私にとって重苦しい日々であった。悪夢のような日がつづいた。福島の多くの人が、メルトダウンした原発から吹き出る放射能を避けて、逃げ惑ったのである。

ところが、テレビをみると、あの原発事故に何の反省もせず、菅義偉首相はポンポンと死者たちに手を合わせて、それで忘れてしまおうとしている。

私が、ドイツのアンゲラ・メルケル首相を尊敬するようになったのは、福島第1原発事故を受けて、彼女がすぐに原発事故の倫理委員会を設置し、2011年6月6日に、当時17基あるドイツの原子炉のうち、8基を、即、閉鎖し、残りは2022年12月11日までにすべて閉鎖すると決定したのである。

去年までに、さらに、3基廃止されている。きょうの新聞によれば、ドイツ政府はスウェーデンやドイツの電力会社、4社と、それぞれ、原発廃止に伴う補償問題で合意に達したという。いよいよ、原発の全廃の実現が近づいている。

日本政府やメディアは、原発を廃止すれば、石炭などのCO2排出が増えると、ドイツ政府の悪口を言っているが、ドイツの連邦会議は2038年までの石炭火力発電所を全廃する『脱石炭法案』を、昨年の7月3日に可決・成立させている。

日本を除く各国は、原子力も火力も使わない方向に順調に転換しているのだ。

メルケル首相は、新型コロナ感染対策でも、リーダーシップを発揮している。昨年の彼女の新型コロナ対策のスピーチにも心が動かされた。

ところが、安倍晋三はオリンピックを使って、原発事故を風化させようとし、日本の原発依存体制を改めようとしない。

原発事故後、日本では、一度、すべての原発が稼働しなくなったのに、政府は、いま、つぎつぎと再稼働している。去年のIAEAの報告書によれば、日本の54基あった原子炉のうち、33基を動かすことになっている。そして、経済産業省は、日本の電力の20%から22%を原発で満たすという、長期計画を発表している。IAEAの報告書によれば、原発事故の前の2010年の原発の依存率も29.21%であった。すなわち、原発事故前に復帰するのが、自民党政権の目標である。

安倍晋三は、世界で一番厳しい規制で原発を稼働しているという。1カ月ほど前、原子力規制委員会の前委員長は、「世界で一番厳しい」というのは事実に反するから言わないで欲しいと苦言をのべていた。

6,7年前、安倍晋三は、福島第1原発の汚染水がコントロールできていると言って、「おもてなし」の滝川クリステルを使って、たぶん、オリンピック関係者にわいろを払って、東京オリンピックを引っ張ってきた。

そして、安倍晋三はうれしそうに、リオ・オリンピックの閉会式でマリオの扮装して、電通との蜜月を示した。その後、滝川クリステルは環境相の小泉進次郎と結婚した。一昨年、オリンピック関係者にわいろを払ったという記事がでたが、どうなったのだろうか。

いまだに、福島第1原発の汚染水がコントロールできていない。原子炉はメルトダウンしてデブリになっている。中性子を吸いとるホウ素いりの冷却水をデブリに注いでいるが、三重水素(トリチウム)を含む水となって戻ってくる。東芝のALPS汚染水処理システムでトリチウムが除去できないといって、福島第1原発に汚染水タンクが立ち並ぶ。

しかし、東芝のALPS汚染水処理システムで除去された放射能物質はどこに保存されているのだろうか。また、どうして、いまだに、注ぎ込んだ冷却水の水素がトリチウムになるのだろうか。

放射能物質を除去といっても、ほかに移動するだけで、人工的に消去できない。東芝がウソつきなのか、東電がウソつきなのか、それとも、経済産業省がウソつきなのか。汚染水から放射能を除去するというストーリーそのものが意味がないのである。

さらに、水素が三重水素になるのは、中性子を吸い込むからで、デブリが中性子を放出しているとしか、考えられない。すなわち、核分裂連鎖反応が小規模に いまだに起きているからだ。だから、原子炉の解体撤去は危険で進めることができない。最終的には、チェルノブイリ原発事故処理のように、コンクリートの壁で原子炉建屋全体を覆うしかないのかもしれない。今後、原発事故処理が300年つづくだろう。

それなのに、安倍晋三は昨年1月20日の内閣総理大臣施政方針演説でつぎのように言う。

〈2020年の聖火が走り出す、そのスタート地点は、福島のJヴィレッジです。かつて原発事故対応の拠点となったその場所は、今、我が国最大のサッカーの聖地に生まれ変わり、子どもたちの笑顔であふれています。〉

安倍晋三は大うそつきで非情な極悪人だ。他の国は、太陽光発電や風力発電の技術を高め実用化しているのに、日本ではそれを抑え込んでいる。そして、原発事故を風化させ、何もなかったことにしようとしている。菅義偉はそれを継承している。

先日、森喜朗の女性蔑視発言で、自民党政権の復権とともに起きた闇の世界の復帰が、明るみに出たが、その象徴といえる東京オリンピックは開催して欲しくない。

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罪を強さと勘違いする時代、福島第一原発放射能汚染水の海洋放出

2020-10-17 22:55:10 | 原発を考える


菅政権は、福島第原発内の放射能汚染水を海洋に放出することをこの10月中に閣議決定するという。メディアは風評被害が生じるから、漁業関係者の了解を得て海洋放出にせよ、という趣旨の報道をしている。弱腰でないか。漁業関係者は、すでに海洋放出反対の声明を出している。それでも、菅政権は海洋に放出するという。

聖書では、人が嫌がることが「悪」で、嫌がることをするのは「罪」である。

コロナ騒ぎで人びとが感染拡大を恐れているのに、菅義偉は、GOTOキャンペーンで、旅行しろ、飲み食いしろという。日本学術会議会員の任命拒否をして、その理由は言う必要はないという。中曽根康夫の国費1億9千万円の葬式を強行した。いま、放射能汚染水を海洋に放出しようとしている。そして、来年にも女川原発を再稼働しようとしている。

菅は強い総理大臣のイメージで権力の座を守り抜こうとしている。

じつは、ある人の嫌がることは、別のひとにとっては嫌がることでもない。社会が共感力を失うと、ある人が嫌がることを「どうどう」とすることが、「罪」と思われず、「強さ」と思われる。このことは、日本では、鎌倉幕府の崩壊期に起きた。昭和の中国侵略期にも起きた。ドイツでは、17世紀の30年戦争中に、そして、ナチ政権下で起きた。

そして、いま、世界的にそれが起きている。ドナルド・トランプも安倍晋三も菅義偉も「罪びと」である。強い権力者を望む民(たみ)は愚かものである。

メディアも数値をあげて、海洋放出の「悪」を具体的に非難した方が良い。2年前に牧田寛がネット上で、今年も『科学』2020年2月号(岩波書店)で丁寧に海洋放出の問題点を指摘している。

だいたい、人類共有財産の大気や海洋に放射能汚染水を放出するという発想は、「環境保護」の流れに反している。そこでは、お金の崇拝、経済優先がいつのまにか正義になっている。

汚染水を蒸発させて大気に放出すれば、雨になってまた地表にもどる。

海洋に放出すれば、汚染水がひとりでに薄められて、思う人もいるかもしれない。そんなに甘くない。汚染水の拡散のスピードは非常に遅い。そして、時間の平方根で広がるから、実際上、何十年間は放出現場に滞留する。

福島第1原発の放射能汚染水は約130万トンである。原発事故後、毎日400トンの汚染水が生じている計算になる。牧田寛は、もともと、500トンから1000トンの水が地下に流れこんでいた場所に福島第1原発に作ったという。その地下水を周りの井戸からくみ上げ海洋に流すようになっていたという。

東日本大震災の地震で原子炉建屋の壁にひびが入り、地下水が地下室に流れ込むようになった。メルトダウンした炉心の核燃料は炉心の底を破って地下室に落ち込み、デブリとなった。本来、制御棒で核分裂連鎖反応を抑え込む仕組みだったところ、核燃料が熔けてデブリができたので、連鎖反応がつづき、中性子を周囲に放射する。その結果、トリチウム(三重水素)は発生つづける。

核爆弾と違い、固い容器に閉じ込められていないので、爆発はせず、ブスブスとずっと燃え続ける。したがって、トリチウム水は今後も発生する。政府はどれだけの汚染水が毎年発生すると考えているのだろうか。

東京電力は7年かけて海洋放水するという。牧田は、130万トンの放射能汚染水の放出に、50年から70年かかるという。そして、それでも、トリウム水は発生つづけるだろう。

トリチウムはベータ線を出してヘリウムに変わる。じつは、福島第1原発の汚染水処理システムはトリチウム以外の放射能物質をとり除けたわけでない。したがって、ベータ線総量をおさえる必要がある。ベータ線の測定は大変だということで、東電は告知濃度限度比の総和を抑えるように、海水で薄めた後、放出するという。いったい、どれだけ薄めれば良いか、報道されていない。

いま、20倍に薄めるとすると2600万トンの汚染水が放出されるのである。深さを50メートルとすると、720メートル四方に汚染水が7年で滞留することになる。

放出が海洋生物に影響がないと言えない。トリチウム水の毒性を軽く見積もるのは、人間は毎日2リットルの水を飲み、2リットルの水を排出するからだ。すなわち、排出されることを前提した議論を、たえず汚染水のなかにいる海洋生物には、適用できない。菅義偉と小泉進次郎は、海洋生物の環境を壊しても構わないと考えている。

海洋放出や大気中放出以外の汚染水処理の方法があるのに、お金がかかるからということで、検討対象からはずれている。しかし、現状では役立たずの東芝の放射汚染水処理システムALPSにお金を棄てまくっている。官僚の誤りを是認していて、何が「叩き上げ」の菅義偉か。単なる暴力じじいではないか。

きっと、みんなで「罪びと」になれば怖くないと思っているのだろう。

放射性物質を海洋や大気に放出しても原発を推進する日本政府

2020-03-11 23:22:58 | 原発を考える

きょうは東日本大震災の9年目である。9年前の3月12日に福島第1原発の1号基で水素爆発が起きて、原子炉建屋とタービン建屋がふっとんだ。原子炉建屋の枠組みだけが残っている状態を各テレビ局が放映した。14日には3号基の原子炉建屋で、15日には2号基の圧力抑制室で、4号基の原子炉建屋で、水素爆発を起こした。それでも、理由もなく、私は、大丈夫だと息子に言った。

そして、そのとき、原子炉のメルトダウンが起きていたとは、私は知らなかった。公表されなかったからだ。

メルトダウンとは、核燃料であるウランが熔けて原子炉から流れ出し、デブリという重金属のかたまりになることだ。当然、ウランが臨界半径より密に集まるから、連鎖核分裂反応がブスブスと起きている可能性がある。

それから9年後、原子炉の下のデブリから放射能汚染水がいまだに流れ出している。

      ☆        ☆

経済産業省の小委員会が、昨年の12月23日、福島第1原発敷地内のタンク群にためられている放射性汚染水の処分方法を、海洋放出と大気放出の二つに絞ったという。朝日新聞によれば、

〈 処分方法について政府に提言する経済産業省の小委員会が23日、とりまとめ案を議論し、大きな異論は出なかった。3年にわたり風評被害の影響を検討してきたが、根拠にしたのは結局「前例」だった。〉

問題は「風評」被害なのか。

放射性物質は人間の力で消滅させることができない。長い年月をかけて、自然に崩壊するのを待つしかない。したがって、汚染水の処分方法とは、危険な放射性物質をどこに置くかである。

そして、経済産業省の提案は、福島第1原発敷地内は汚染水タンクでいっぱいだから、薄めて海に捨てるか、大気に放出するか、どちらにしろ、あとは潮まかせ、風まかせということである。薄めないといけないというのは、もともと、タンク内に閉じ込めていた汚染水は、危険な物質だからである。

経済産業省や東電のサイトを見ても、長々と専門用語や法律用語が並んでいて、読み手の頭を混乱させるだけで、危険な物質をどこに置くかの問いにたいして、人類共有財産の海や大気に捨てれば良いという、トンデモない結論を権威づけている。3年間議論して、結局、企業にとって安ければよい、ということになっている。汚染物質を公共の海や空に捨ててはいけない、というのは、公害問題の基本的教訓であるのに。

思い返してみれば、昨年の6月28日の朝日新聞紙への寄稿『原発と人間の限界』で、作家、高村薫が、安全性も確立されていないのに、なし崩し的に政府が原発再稼働を推し進めている、と怒っていた。

環境省大臣に就任した小泉進次郎の発言「福島第1原発の処理済みの汚染水対策は環境省の所管でない」にたいして、9月17日、日本維新の会の松井一郎代表は「将来、総理を期待されている人が『所管外だ』とか、そういうことで難しい問題から批判をそらすようなのは非常に残念だ。真正面から受け止めてもらいたい」と述べた。

原発再稼働を推進する経済産業が、原発の放射線物質の「あとは潮まかせ、風まかせ」を主張することに、環境省がほっておくのが理解できない。経済産業省と東電がしようとしているのは地球の環境を大きく壊すことではないか。

私は地層処分が妥当と思う。コストがかかっても、東電が原発を稼働して失敗したのだから、東電の自己責任である。

牧田寛は、昨年の9月8日にネット上で、海洋放出、大気放出の危険性をのべ、恒久的大タンクを主張している。

じつは、私は、いまだにトリチウムが汚染水に含まれることに、デブリが核分裂連鎖反応をつづけているのではと思っている。

通常の放射性物質は、核分裂の結果生じた核のゴミである。ウラニウムが核分裂を起こして、燃えたウラニウムが放射性物質に転化するのである。原子炉が停止した後、放射性物質は増加せず、時間とともに減少する。

ところが、トリチウムは水分子の水素原子が中性子を吸ってできるのである。いまだに、デブリが中性子を発生している疑いが高いのである。中性子はウラニウムが核分裂するときに発生する。核燃料のウラニウムは、メルトダウンによって、デブリという塊になったのだから、臨界を越えて、核分裂連鎖反応が起きても何もおかしくない。

核爆弾と違って、固い容器に閉じ込められているわけでないから、74年前の広島や長崎のような、核爆発を起こすことはない。しかし、デブリは今後もトリチウムを生産するし、他の放射性物質を生産しつづける。

安倍晋三は、放射能汚染水がコントロールできていると言ってオリンピックをひっぱってきたが、全国の原発を再稼働するためにオリンピックを利用しただけで、放射能汚染水のコントロールは失敗である。

昨年の9月19日に東京地裁は東京電力旧経営陣に無罪の判決を下した。津波対策の必要性が社内から報告されていたにもかかわらず、経済性から旧経営陣はその報告を無視した。あまりにも無責任ではないか。司法は経済産業省のご機嫌をうかがうのか。

さらに、10月18日の朝日新聞インタビューで、元政府事故調委員長の畑村洋太郎(東京大学名誉教授)は、事故調は失敗で、福島第1原発の事故原因がわかっていない、といった。すなわち、福島第1原発の事故は、8年前の3月11日に全電源を失った時点でも まだ うつ手があった という。それが、なぜ実行されなかったのか、どうすればよいのか、検証されていないという。

畑村は、あの事故では、放射性ガスのある程度の放出はしかたがなく、メルトダウンを避ける方を優先すべきだ、と考えている。じっさい、メルトダウンの前に、すでに、原子炉のふたや管の部分から放射性ガスが吹き出ていたことがわかっている。

私は私で、非常用の冠水設備で原子炉を急冷しても大丈夫なのか、疑っている。日本の原子炉は初期の耐用年数20年を超えて運用されている。原子炉の鋼鉄は中性子を反射するためだが、中性子を浴びていれば、強度は当然落ちる。それを急冷すれば、ひびが入るのではないかということである。

ところが、この問題が検証されないで、初期の耐用年数を超えた原子炉の稼働が、原子力規制委員会で認可されている。

日本は原発の必要がないにも関わらず、地元の利権と関係していることが、今年の10月判明した。関西電力の経営陣が、福井県の高浜町の助役と癒着して、原発推進していたのである。

とにかく、日本政府の原発推進政策はひどい。合理的判断や倫理的判断がない。国会議員やジャーナリストには、腰を据えて、政府の原発政策を追及して欲しい。

東日本大震災と原発事故の記憶 - 8年目の3月11日

2020-03-07 15:28:19 | 原発を考える
1年前に書いたブログです。2020年3月7日。けさ、BSでも、NHKスペシャル『メルトダウン 連鎖の真相』の再放送をやっていた。

8年前の3月11日14時46分18秒(日本時間)にマグニチュード9.0の大地震が宮城県沖に起きた。高さ30mから40mの大津波が東日本の各地を襲った。
あの日、私と息子は横浜市の集合住宅の7階にいた。大きな揺れが長く続いた。妻は、外にいて、集合住宅が揺れるのを見守っていた。

あのとき、テレビは、何日も何日も大津波の映像を流し、コマーシャルは公共広告のACジャパンばかり、ニュースは政府広報ばかりで、バラエティー番組もドラマも映画もオープン戦中継もなかった。

あの日、福島第一原子力発電所では、送電線鉄塔が地震で倒れ、非常電源が津波で水をかぶり、核燃料の冷却電源を失い、3基の原子炉のメルトダウンが始まった。

3月11日の夜に、原子炉が冷却できていない、というニュースが流れた。おびえる息子に、原子炉がそんなに簡単に爆発することはないと、私は言い張った。

3月12日に水素爆発が起きて、1号基の原子炉建屋とタービン建屋がふっとんだ。原子炉建屋の枠組みだけが残っている状態を各テレビ局が放映した。14日には3号基の原子炉建屋で、15日には2号基の圧力抑制室で、4号基の原子炉建屋で、水素爆発を起こした。それでも、理由もなく、私は、大丈夫だと息子に言った。

あのとき、経済産業省は、関東各地で計画停電を行い、また、テレビで節電を呼びかけた。

当時の枝野幸男官房長は、はじめ、テレビで、「原子炉が冷却されている」と言っていたが、それを、「すぐには健康に被害がない」に変えた。住民の避難が、なし崩し的に毎日拡大されていった。

後からわかったことであるが、緊急時環境線量情報予測システム(SPEEDI)が予測した放射性気体が飛ぶ方向に、住民が避難していた。現在、避難者がどれだけの放射能を浴びたのか、の記録が、残っていない。私は、放射線医学総合研究所を含む原発関係者が意図的に調査を行わなかったのだと思う。

3月19日には、牛乳、ほうれん草に、食品規制法の暫定基準値を超えた、残留放射性物質が検出された、との報道があった。それから、毎日、食品の放射能汚染の報道が増えた。

同じ3月19日の午後に、東京消防庁のハイパーレスキュー隊は、福島第1原発3号基の使用済み燃料貯蔵プールに2,000トンを超える連続放水を行った。テレビで英雄のように放映された。放水に携わった約50人のうち、27ミリシーベルトが1人、14~15ミリシーベルトが3人、10ミリシーベルト以下が45人だった。
同じ日、東京電力は、作業員6人が緊急時の上限の100ミリシーベルトを超える被ばくをしたと発表した。年20ミリシーベルが、3月11日以前の被ばく上限であったのだが、この原発事故を受け、緊急時上限100ミリシーベルトが作られた。泥縄のご都合主義でないか。

6月11日、相馬市の酪農家が、壁に白いチョークで「原発さえなければ」「仕事する気力をなくしました」「残った酪農家は原発に負けないでがんばってください」と書いて自殺した。

福島第一原発3基の原子炉が放出した放射性物質は、チェルノブイリ原発事故を大きく上まわる。これは、どれだけの核燃料が原子炉にあったからか推定される。政府発表の数値は、陸上で観測した数値からの推定値であり、発生源の原子炉にあった放射性物質の量からの推定値でない。発生量より、陸上の量がかなり少ないなら、大量の放射性物質が海上に降りそそいだのだと思う。魚介類が放射能で汚染されたのは当然である。

電源が途絶えてすぐに水素爆発が起きたということは、それ以前に気体状の放射性物質が、冷却できない原子炉から漏れ出ていたのではないかと、今になって、私は思う。
不活性気体の放射性物質、アルゴン、クリプトンが拡散していたはずである。これらは寿命(半減期)が短いから、あとでは検出できない。

記録が残っているのは、寿命が長い放射性物質、ヨウ素とセシウムだけである。これらが気体となって、壊れた建屋から吹き出し、広がらないで、風船のように、風に吹かれて遠くに運ばれた。遠く離れた土地で、雨となって降りそそぎ、土壌を放射能で汚染した。麦わらも汚染されたから、それを食べた牛の乳は当然汚染された。西では静岡県の茶畑まで汚染された。

いま、3基の原子炉はメルトダウンして、溶けだした核燃料は水の中に浸されているから、水に溶ける放射性物質が、毎日、原子炉の外に流れだしている。放射性物質に色々なものがあるから、原子炉施設からの水をろ過装置で浄化するというのは無理である。そのため、第一原発の敷地に汚染水タンクが延々と立ち並ぶ。

もはやタンクを置く場所がないから、海に汚染水を流すというのは、あまりにも無責任だ。放射能汚染水は、敷地内の地下深い場所に、地層処分するしかないだろう。深く押し込めば、地下深くで拡散しても、陸上や海中に染み出すまでには、放射性物質の大半は崩壊しているだろう。

原発事故の問題は、事故を防ぐという観点からも、事故を処理するという観点からも、事故による被害を最小にするという観点からも、何も解決していないように見える。
事故を防ぐには、原発を停止し、電源を別にすればよいが、経済産業省はこれに反対し、原発の再稼働を推し進めている。誰のためであろう。これも忖度(そんたく)なのか。