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猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

米大統領選後の偶発的な暴力だけは防がなければならない

2020-11-07 22:43:42 | 国際政治
 
慶応大学の中山俊宏教授が、きのう(11月6日)、ツィターでつぎの指摘をしていた。
 
「今は皆が 誰が勝ったかということに気を取られているが、一番重要なことは、トランプが08年のオバマを上回るであろう数の得票をしたこと、即ちアメリカはトランプ主義を斥けることはしなかったということ。いまトランプはこの勢いを感じているはずだ。」
 
私は、ドナルド・トランプの側近は、選挙制度のルールを尊重し、投票結果が確定したとき、トランプのもとから去るであろう、と考える。訴訟を連発して、アメリカの政治に空白を生むようなことは、彼らも避けたいと思うからである。それに訴訟はお金がかかる。
 
しかし、中山が指摘するように、多数の支持者がトランプ側にいるのだ。その中に、ルールより、結果だけを重んじ、暴力に走る者が現れるだろう。最悪のシナリオは、ジョー・バイデンが乱暴者に撃ち殺されることである。バイデンはまだ正式に大統領に就任していないのだから、法が予期していない事態が生じる。とてつもない混乱である。これだけは、防がないといけない。
 
この偶発的な事故さえ防げることができれば、あとの混乱は、時間が多少かかっても、沈静化すると思う。人間は冷静になれば、暴力を嫌い、ルールに従う。民主主義がふたたびアメリカで機能すると信じている。
 
[追伸]
朝起きたら、開票が終わり、ジョー・バイデンの当選が確定したと、喜びで大騒ぎしているとの映像が舞い込んできた。このまま、偶発的事故が起こらず、来年の大統領就任式にいたることを願う。

バーニー・サンダースはアメリカを変える 大統領選の民主党候補

2020-02-09 22:37:43 | 国際政治
 
バーニー・サンダース(Bernie Sanders)上院議員が今年の大統領選の民主党候補に名乗りをあげている。
人によって、バーニーだと民主党が勝てないとか、バーニーとドナルド・トランプとが大統領選で一騎討になるとアメリカ国民が分断されてしまうとか、バーニーが大統領になるとアメリカの財政赤字が加速するなどとの声がある。
 
私は別に民主党が大統領選に勝たなくても、アメリカ国民が分断されても、かまわない。私は、バーニーが大統領選の民主党候補に名乗りをあげ、アメリカ国民の一部が、もしかしたら、バーニーが勝つのではと心配しているのが面白いのだ。
 
アメリカは、70年前に、共和党右派のジョセフ・マッカーシー上院議員が国会内に委員会を設置し、共産党員および共産党シンパを喚問し、公職やアメリカから追放したのである。これによって、アメリカの左翼運動は壊滅的打撃をうけた。そして、共産主義者や社会主義者は非国民だという情緒的信条がアメリカ国民に植え付けられたと、私はこれまで思っていたからだ。
 
ところが、左翼だと思われるバーニーが大統領選にうってでて、自分の信条をおおやけに話すことで、左翼への感情的反発、毛嫌いがアメリカの社会から消えていっている。バーニーが勝たなくても、アメリカの社会に左翼という考えの種子をまいているのだ。
 
バーニーはどこかの組織に属しているわけでない。バーニーがスピーチをし、本を書くことで、左翼の考えを広めている。バーニーの話を聞いて、若者が集まり、若者がそれを広め、発展させていく。バーニーが死んでも、バーニーの思いはさらに発展し、アメリカの歴史に影響していく。
   ☆   ☆   ☆
「種をまく人が種蒔きに出て行った。 
まいている間に、ある種は道端に落ち、鳥が来て食べてしまった。 
ほかの種は、石だらけで土の少ない所に落ち、そこは土が浅いのですぐ芽を出した。 
しかし、日が昇ると焼けて、根がないために枯れてしまった。 
ほかの種はイバラの中に落ちた。するとイバラが伸びて覆いふさいだので、実を結ばなかった。 
また、ほかの種は良い土地に落ち、芽生え、育って実を結び、あるものは三十倍、あるものは六十倍、あるものは百倍にもなった。」(『マルコ福音書』4章)
   ☆   ☆   ☆
バーニーが実際に訴えていることは、19世紀の社会改革運動に近い。生産手段の国有化を唱えているのではない。働く人たちの生活の向上だ。国民皆保険、最低賃金制、労働組合の組合倍増、グリーン・ニュー・デール、高等教育の無償化、……、など33の公約をネットにあげている。その1つ1つに丁寧な説明がついている。
 
アメリカの社会は、不平等を肯定するものが、権力をにぎってきた。神様が人間を不平等に作ったとする「予定説」を信じる者が権力をにぎってきた。しかし、マッカーシーの「赤狩り」の前には、不平等に反対するものもいた。そして、いま、ふたたび、アメリカに平等の思想が広まる。もしかしたら、多数派になるかもしれない。
 
バーニーは、“Outsider in the White House”(2015)、“Our Revolution: A Future to Believe In”(2016)、“Where We Go from Here: Two Years in the Resistance”(2018)を出版している。このうち、“Outsider in the White House”は日本語に翻訳され、大月書店から『バーニー・サンダース自伝』から出版されている。
 
バーニーは、バーモント州選出のアメリカ上院議員である。バーモント州はカナダとの境界にある小さな小さな州である。人口61万人、陸地は24000平方kmである。人口は千葉市より少なく八王子より多い。「上院議員は各州2名」という規則のおかげで、バーニーが上院議員になれたのである。しかし、2016年の大統領選民主党候補に名乗りをあげたことで、アメリカ全体に名が知れたのである。
 
バーニーは78歳なので、これからそんなに長く政治活動できるとは思えないが、死んでも何かが残る。楽しみだ。

イギリス総選挙結果のBBC予測に深い悲しみ

2019-12-13 10:50:09 | 国際政治



今回のイギリスの総選挙で、保守党が大勝し、労働党が大敗するとのBBCの出口調査による予測がでている。現在、確定しているのは5議席だが、保守党が50議席増やし、368議座席と過半数を大きく上回り、労働党が71議席を失い191議席になるとBBCは予測した。

悲しい予測である。1930年10月17日のベルリンでの講演でのトーマス・マンの怒りと悲しみを思い起こさせる。彼の講演のタイトル「ドイツの呼びかけ 理性に訴える(Deutsche Ansprache Ein Appell an die Vernunft)が示すように、大衆が理性的な選択をしなかったことへの、怒りと悲しみである。

1930年9月14日、世界的恐慌に襲われたドイツ国民は、総選挙で国民社会主義ドイツ労働者党(ナチス)を国会の第2党に選択した。トーマス・マンは、これに市民社会が築いてきた理念「自由、公正、教養、楽天主義、進歩への信仰」への否定を感じ取ったからである。

いま、イギリスは、保守党政権下の緊縮財政で格差が広がり、弱者の切り捨てが広がっている。ところが、今回の総選挙で、保守党のボリス・ジョンソンは、EUがすべて悪い、EU離脱だ、強い保守党を、と騒いで、変化を求めるイギリス国民を保守党に集めた。

ヒトラーもジョンソンもトランプも安倍晋三も詐欺師である。変化がどの方向に国民を導くのかを、大衆は、理性的に判断しなければならない。市民社会の理念「自由、公正、教養、楽天主義、進歩への信仰」や「議会制民主主義」は貴重な歴史的遺産である。詐欺師に心理操作されてはいけない。

1930年代と同じく、現在の各国の国民は、変化だけを求めて、理性を失い、破滅にいそしんでいる。大衆は絶望にとらわれ、憎しみを爆発させ、たがいに敵視し、健常なものは精神を病み、引きこもる。

イナゴが多くなり密集度がますと、色が きみどりいろ(黄緑色)から おうかっしょく(黄褐色)に変わり、ますます、数をまし、大群となって移動するという。Locust plagueである。忘れたころに、繰り返し、イナゴの大群が発生し、破滅へと飛び立つという。

旧約聖書『出エジプト記』10章15節にも次のようにある。
「いなごが地の面をすべて覆ったので、地は暗くなった。いなごは地のあらゆる草、雹の害を免れた木の実をすべて食い尽くしたので、木であれ、野の草であれ、エジプト全土のどこにも緑のものは何一つ残らなかった。」

新約聖書『ヨハネの黙示録』9章3-4節にも次のようにある。
「そして、煙の中から、いなごの群れが地上へ出て来た。このいなごには、地に住むさそりが持っているような力が与えられた。
いなごは、地の草やどんな青物も、またどんな木も損なってはならないが、ただ、額に神の刻印を押されていない人には害を加えてもよい、と言い渡された。」

黙示録の世界と違い、絶望した大衆は 「額に神の刻印を押されている」か否かによらず、だれかれ の区別なく、互いに傷つけ合い、破滅がやってくるまで横暴のかぎりをつくすのである。

トーマス・マンでなくとも、イギリスの総選挙の予測結果に、深い悲しみと怒りを感じずにはいられない。しかし、絶望はいけない。絶望は、破滅の予測を本当のものにする。


広告代理店ルーダー・フィンとノーベル文学賞のペーター・ハントケ

2019-11-06 22:19:18 | 国際政治
 
きょうの朝日新聞に、ペーター・ハントケに今年のノーベル文学賞を授与したのは、「ノーベル賞委員会によるペーター・ハントケの名誉回復なのだ」と、池澤夏樹が書いていた。
 
池澤夏樹によれば、ユーゴスラヴィアという連邦が崩壊する過程で、ボスニアの政治集団と契約を結んだアメリカの広告代理店ルーダー・フィン(Ruder Finn)が、「民族浄化」という言葉を作り、国際世論を誘導して、セルビア人を悪者にしたてという。作家ハントケは、セルビア人でないのにもかかわらず、セルビア人を擁護し、孤立しても、信念を変えなかったという。
 
国際世論というものは、たんに、各国のメディアや政府や知識人の言動をさす。普通のひとびとは外国で起きていることを直接目撃できず、メディアや自国の政府のいうことを信じてしまう。
 
広告代理店が誘導した国際世論でもって、NATOがセルビアの町々を爆撃した。そして、セルビア人の指導者を捕まえて、国際法廷で終身刑に処し、獄死させた。恐ろしい話である。
 
不思議なのは、アメリカ政府は諜報機関をもっているから、真実を知っていたはずなのに、セルビアの町々を空爆して、普通の人たちを殺したのである。アメリカ政府はユーゴスラビア連邦の完璧な解体を望んでいたため、ユーゴスラヴィアの屋台骨をなしていたセルビア人勢力を ウソの情報にもとづき 叩き潰すのを黙認していたのではないか。このときのアメリカ大統領は民主党のビル・クリントンである。
 
アメリカ政府が直接関与したウソのニュースには、湾岸戦争のときの油まみれの海鳥の報道写真がある。これによって、アメリカ政府がマスコミを味方に引きつけた。このときのアメリカ大統領は、お父さんの共和党のジョージ・ブッシュである。
 
息子のジョージ・ブッシュも、アメリカ統領として、イラクに大量殺害兵器があるとして、イラクに先制攻撃をし、フセイン大統領を殺した。大量殺害兵器があるというのはウソの情報であった。
 
今日歯医者に行ったら、週刊文春が田中角栄のロッキード収賄が明るみにでたのはニクソン政権の陰謀だという連載をしていた。
 
私は、アメリカのファーウェイ(Huawei)叩きも、トランプだけでなく、共和党・民主党幹部たちの陰謀ではないかと疑っている。
 
情報が本当かウソかの見わけは難しい。広告代理店がつくった意図的なウソは、ひとの感情に巧みに訴える。そして、すぐ ばれないように、情報の整合性に気を使う。そして、広告代理店が国際世論を誘導でき、空爆をひきおこせるのだ。
 
1つの対策は、信頼する情報源を限ることである。もう1つの対策は、国連の多数意見だからといって、アメリカ政府の要請だからといって、他国の戦争に参加しない。他国からの難民は引き受けるが、他国に行って戦争をしない。

EU離脱か残留かはどうでもよいのではないかー岡目八目

2019-09-13 22:46:49 | 国際政治



9月11日の朝日新聞で、英国がEUからどう離脱したいのか、EU側からは理解できないという記事があった。私もよくわからない。解説して欲しい。

わかることは、保守党のボリス・ジョンソン首相が孤立しているということだけである。保守党内でも反乱が起きており、ジョンソン首相側の動議自体が議会ですべて否決されている。ジョンソン首相が英国議会を1ヵ月閉鎖するのは違法であるとの裁判所の判決もでた。最高裁の判決は来週だというが、最高裁でも違法となれば、ジョンソン首相はどうするのだろうか。

英国がEU離脱是非の国民投票を行ったのは、2016年6月24日である。離脱支持が51.89パーセントで、残留支持の48.11パーセントに勝った。

離脱支持が勝ったのは、ブレイディみかこは、貧困層の白人の怒りがEU離脱に走ったからと分析する。

EU離脱支持はイングランド地域に集中し、スコットランドは残留支持が集中する。スコットランド人は、貧困の怒りをイングランド人に向ければ良いが、英国の主流を自認するイングランド人は、貧困の怒りを英国内の誰かにもって行きようがなく、EUにもっていったということだ。

貧困層の白人の怒りがEU離脱に走ったとの分析が本当だとすると、EU離脱か残留かの問題ではなく、貧困を解決するしかないように見える。EUを離脱しても景気は良くならないし、EUに残留しても景気は良くならない。景気は政治で浮揚できるものではない。すると、景気の浮揚ではなく、赤字覚悟での貧困対策しかない。

だとすると、EU離脱で3年間も身動きできなくなっている英国議会は何を狙っているのか、さっぱりわからない。貧困の怒りを、ルールにそった争い、伝統的な議会制度で吸収するために、選挙にでるしかないのではないか。そして、合意なきEU離脱をしようとも、EU離脱が永遠の未来に延期されようとも、どうでもよいのではないか。

モノや金や人が国境を越えて自由に移動できることは理想だが、現実は、ヨーロッパ内のことであり、アジアや中東やアフリカやアメリカを含んでのことではない。それに、理想は、経済的不満を解決できない。

だから、EUを離脱してみて、それがひどい選択だと思ったら、EUに復帰すればよいのではないか。