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素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)
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対日民間賠償請求、中国での訴訟実施はどうやら本気?
中国観察
/
2006-02-22 07:31:18
今回も泣き言から入らせて下さい(笑)。いや笑っている場合じゃなくて、泣き言も何も中国発の記事が多くて大変なんです。
季節柄といってもいいのですが、普段のニュースに加えて昨年の統計が色々出てきたり、全人代(全国人民代表大会=立法機関)に向けた時事評論が増えたり、その全人代を前にして各地方の人民代表大会で人事異動や新たな決定がなされたり。対日関連の報道にも目立った規制はかかっていない様子なので分量は減っていません。
……ということで、仕事をしながら集める記事の量がA4に9ptsで詰め込んでも50頁前後あります(涙)。もちろんその全てを熟読する訳ではありません(というより、できませんよそんなこと)。統計だからとりあえずとっておこうとか、後で使えるかも知れないから保存しようとか、当ブログのネタとしては小さいけど面白いし、姉妹サイト「楽しい中国にユース」で使えるからピックアップするとか。
後々に起こる何事かの伏線かも知れないからこれは外せないな。……とゾクゾクしながら取り上げる記事もあります。
――――
そういう中で、件の「氷点事件」以外にも注目している現在進行形の出来事がいくつかあります。そのなかで、ここ数日の間に関連記事が出てきたものがあって二者択一を迫られたのですが、続報であることを優先して今回の主題と相成ります。
既報したエントリーは以下の通りです。
●中国国内での対日民間賠償訴訟、初めて実現か。(2006/02/17)
あと「中国民間対日索賠聯合会」会長で糞青ども(自称愛国者の反日教徒)が崇拝してやまない「珍獣」(プロ化した糞青)の代表格・童増に対するインタビュー記事も参考になります。新華社系国際誌『環球』によるものです。
●対日賠償要求訴訟――中国での実施を(新華網 2004/12/31)
http://news.xinhuanet.com/world/2004-12/31/content_2402406.htm
「民間による対日賠償要求には3つの段階がある。第一段階は民間による対日賠償要求という理論を打ち出し、被害者が自分の権益を要求するという意識を高めることだ。第二段階は理論の実践で、中国人被害者が日本へ赴いて実際に訴訟を起こすこと。そして第三段階は言うまでもなく中国国内での訴訟を実現させることだ」
とこの記事で童増は語っています。いよいよ第三段階、という訳ですが、そこまでに約20年を費やしているそうですから、ネット上で騒ぐだけの糞青と違い、「珍獣」童増は基地外ながらもさすがに苦労人だな、と思わず感心してしまいます(笑)。
――――
で、今回出てきた記事がこれです。
●一部日系企業に照準、対日民間賠償要求は国内訴訟で勝算高まる(新華網 2006/02/21)
http://news.xinhuanet.com/overseas/2006-02/21/content_4207731.htm
既報した記事同様、国営通信社・新華社電で童増にインタビューする形式の記事です。「獨家專訪」(独占インタビュー)とわざわざ銘打っていますから価値ある記事と新華社は認めているのでしょう。
ただしその内容自体は既報記事と重複する部分が多く、目新しさには乏しいです。最初のケースとなるのは三井三池鉱業所所属の炭鉱で強制労働をさせられたと主張する河北省の農民・田春生氏(76)。
「訴える相手は中国に進出している日本企業だ」
と童増が語っていますから、詳しい方なら大体の見当はつくかと思います。
問題は、中共当局がそれを許すか、ということ。建前を崩すことになるからです。日中関係の原点ともいうべき「日中間で取り交わされた3つの政治文書」において、中共政権は戦争に関する対日賠償請求権の放棄を明記しています。国内訴訟が実現すれば、対日批判で中共が常々持ち出してくるこの「3つの政治文書」を自ら踏みにじることになります。
「政府としての賠償権は放棄したが、民間組織や個人に関する賠償権はこの範囲内ではない」
というねじ曲げた解釈で強行突破する訳です。
「正気か?」
「いまそれをやってどんなメリットがあるんだ?」
ということを私は考えてしまうのですけど。
――――
「民間組織や個人に関する賠償権はある」ことを保証した法律は中国国内にありません。そのことは『環球』のインタビューで童増自身が認めており、国内訴訟の実現を阻んでいる要因は何かと記者に問われて、
「第一に、立法がなされていないことだ。私は1992年に全人代に民間による対日賠償請求のため関係法規の制定が必要だと訴え、『中国民間対日賠償請求法』を起草して全人代に提出したのだが、これまでずっと議事日程にのぼることがなかった。法律の制定は必須事項だ。それがなければ法的根拠がないことになってしまう」
と、明確に答えています。その後現在に至るまでの一年有余においても関連法規は成立していません。今回のインタビューでも、
「もし裁判に勝ったら、中国の法律に基づいて裁判所が強制執行を実施することになる。だが執行が行われなくても、勝訴さえすれば、16年にわたって悪戦苦闘を重ねてきた民間による対日賠償請求にとっては重大な勝利であり、重要な意義を持つことになる」
と童増の語り口は歯切れが悪くなってしまいます。でも国内訴訟での勝算を問われると、
「実のところ、公正公平の原則において、中国であろうと日本であろうと、勝算の確率は同じである筈だ。だが日本軍国主義主義思潮と右翼勢力の影響により、日本政府は第二次大戦において犯した戦争の罪について正確な認識を有していない」
とお約束の対日批判。このあたりは「珍獣」童増の面目躍如といったところです。
この記事の文末で童増は、「中国民間対日索賠聯合会」が今後
「中国国内で理性的に対日賠償要求活動を展開していく」
とし、また
「訴訟は近く行われることになるだろう」
とひそやかに囁くが如く、記者に語っています。
――――
現在の日中関係に照らせば、このタイミングで国内訴訟の実施は正気の沙汰とは思えませんし、それで中共政権が得することも何もないように思えます。内政面においても、統治者にしてみればデメリットの方が多いようにみえます。
例えばですよ。いかに糞青とはいえ、ここまで悪化した社会状況(貧富の格差、地域間格差、失業問題、党幹部の汚職蔓延など)について、
「日本における右翼勢力や軍国主義の台頭のせいだ」
と断ずる馬鹿はさすがにいないでしょう。胡錦涛政権にとっては、逆に国内訴訟の実施というイベントを名目に昨年4月の反日騒動のような乱痴気騒ぎが起きるのが怖い。もし再び暴発となれば、今度は鉾先がどこに向くかわからないからです。外資とりわけ日本企業の対中投資にも少なからず影響が出るでしょう。
昨年10月の小泉首相による靖国神社参拝に際して、胡錦涛政権が民間による抗議活動を徹底的に抑え込んだのもそのためです(
◆
)。「SAYURI」を上映禁止にしたのも姑息ながら同じ理由によるものでしょう(
◆
)。要するに「起爆剤」が出現しては困るのです。あの空気が読めない点に可愛気のあった童増が、今後の関連活動を
「理性的に」
展開していく、とオトナぶってわざわざ強調してみせたのも、そうした懸念を振り払うためかと思います。
逆にいえば、童増らの活動は胡錦涛政権からゴーサインをまだもらっていない、と読んでいいのかも知れません。……ということで、例によって政争の気配を感じることになります(笑)。
――――
だって内政面や対日関係、ひいては対米関係などに与える影響を考えても、このタイミングで国内訴訟を強行するというのは「空気読めボケ」と言われる行為じゃないかと思うのです。そういう「空気を読まない」行動をあえてやろうとする硬質な、あるいは動脈硬化的な動きに、尋常でないものを感じざるを得ません。
当ブログでも以前紹介したように、昨年末から今年初めにかけて、外交部報道官による対日批判が従来の運動律から大きく外れて、ある種常軌を逸したものになった時期がありました。問答無用のゴリ押しともいうべきものです(
◆
◆
◆
)。それについて私自身は、指導力に難のある胡錦涛が軍主流派と取引して、胡錦涛の提唱する「科学的発展観」を大々的に礼讃し胡錦涛擁護を打ち出してもらい(=統制力の向上)、その見返りとして軍主流派が政治に口出しすることを黙認するようになったのではないか、と以前から勘繰っています(
◆
)。
今回も一見それと同質なようではありますが、童増に代表される民間団体を前面に立てていることから、形としては「反日」を掲げて胡錦涛に政争を仕掛けた昨年春の騒動にむしろ似ています(
◆
)。今回の「新華網」の記事は大手ポータルのニュースサイトをはじめ相当広範に転載されていますから、もし本当に政治的な示威活動なのだとすれば、なかなかのパワーを有した政治勢力、ということになるでしょう。
他でもないアンチ胡錦涛諸派連合、ということになる訳ですが、以前紹介した先月下旬の「江八点」記念活動、胡錦涛の思惑とは裏腹に地味に流すつもりが新華社や『人民日報』などによって大々的に報道されてしまったあの不自然な動きを思い出します(
◆
◆
)。たぶん今回の事件もそうした挙動不審や「氷点」事件といった一連の流れの中で捉えるべきなのかも知れません。
もちろん「国内訴訟の実現」という動きそのものにも注目する必要があることは言うまでもありませんけど、「そっちがそう来るならこっちもこうやっちゃうよ」ということについては
前掲のエントリー
で語り尽していますので今回は措きます。ともあれ童増らのリーチが通るのかどうか、市民レベルに如何なる影響を及ぼすかについて眺めていきたいですね。思わぬところから火の手が上がったな、というのが現時点での率直な感想です。
今年も賑やかになりそうですね(笑)。
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