日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 いやはや、全くもって恐れ入谷の鬼子母神てなもんです。……寒いですか、そうですか。東京は明け方から雪になる見通しだそうですから、きっとそのせいでしょう。

 そんなことより、他でもない我らが麻生外相です。いい意味で観客を裏切ってくれるあたり、さすがはファンタジスタといったところでしょう。……いや、確かに私は前々回の末尾で、

「ファンタジスタも芸術的なプレーで魅せてくれるでしょう(笑)」

 とは書きました。書きましたけど、かくも早く、しかも想像を超えたスーパープレーをみせてくれるとは思いませんでした。日本の外相が台湾を「国家」だとサラリと言ってのける。潰す気ですか中共を?潰す気でしょう?(笑)。

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 台湾の現在がある所以は日本の統治下で民度が向上していたため、という麻生外相による指摘は正にその通りです。

 清王朝から「化外の地」扱いされていた台湾が、日本統治の下で教育水準が向上し、インフラが整備され、産業が振興し、衛生面でも大きな改善をみた。……といったことは紛れもない事実。「鐵證如山」と、外交部・孔泉報道局長の好きな言葉を中共政権に贈ってあげましょう。

 もちろん、その一方で日本統治下における台湾人は二等国民扱いでしたし、当初は日本統治に反発する勢力を討伐したことで台湾住民に多数の死者が出ました。逆に霧社事件のような、日本人が殺される出来事もありました。

 しかし、50年にわたる日本の統治が終結してから60年も経っているというのに、
「日本精神」という単語がいまなお褒め言葉として使われているのはなぜでしょう。約40年に及ぶ国民党による戒厳令統治を経ても、オジサン(欧里桑)・オバサン(欧巴桑)・トーサン(多桑)などといった言葉は、現地に溶け込んでしっかりと根付いて残っています。

 中共が描いてみせるような「残虐無比で凄惨目を覆うばかりの植民地統治」であれば、また国民党による戒厳令統治下で行われた反日教育が台湾人に受け入れられていれば、こういう現象が起こり得る筈がありません。「哈日族」に代表されるような親日的な空気が広く浸透していることもないでしょう。

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 ところが中共としては自分が描いてみせた虚構を何としても守り通したい。そこでクマー!(AA略)とばかりに、麻生外相の垂らした釣り餌にどんどん食い付いてもう入れ食い状態。

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 ●麻生発言に「強烈な憤慨」 中国外務省が非難(共同通信 2006/02/05)
 http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=MNP&PG=STORY&NGID=intl&NWID=2006020501003022

 【北京5日共同】中国外務省の孔泉報道局長は5日、麻生太郎外相が4日に福岡市内の講演で日本の植民地支配下で台湾の教育水準が向上したなどと述べたことについて「公然と侵略を美化する言論に驚くとともに強烈な憤慨を表明する」と非難した。

 孔局長は、日清戦争後に日本が台湾占領を強行し「台湾住民を奴隷のような目に遭わせ、中華民族に深刻な災難をもたらしたのは世界中が知っている事実」と強調。「加害国の外交当局最高責任者がこのような言論を発表することは、歴史を歪曲(わいきょく)し、中国人の感情を傷つけるものだ」と批判した。

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 という訳で、中国側から飛び出した脊髄反射3連発。

 ●(1)日本の外相が日本帝国主義による中国台湾での植民教育を美化
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-02/05/content_4137081.htm

 ●(2)中日関係の基礎を損なわしめる謬論だ
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-02/05/content_4139481.htm

 ●(3)中国、日本外相による侵略の歴史を美化する言論に激しい衝撃
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-02/05/content_4139901.htm

 (1)速報、(2)解説、(3)公式声明、といった内容です。前掲の共同電は(3)に相当するものかと思われます。そして、今日(2月6日)になって香港紙『明報』と親中紙『香港文匯報』からの転載記事が2本。

 http://news.xinhuanet.com/world/2006-02/06/content_4141565.htm
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-02/06/content_4141522.htm

 「虚構」を崩されることと台湾を「国家」と扱われたことに反発しているのですが、公式声明である(3)の孔泉発言を読むと、

「日中間で取り交わした3つの政治文書」

 という強い抗議につきものの文言が出てきません。「激しい衝撃」と言いつつも、初動としては抑制されている印象です。「李登輝氏訪日正式決定」というカードが日本側に残っているので、出し惜しみしているのでしょうか(笑)。

 逆にいうと、今後ボルテージがどんどん高まる余地が十分に残っているということです。台湾問題に敏感で神経質になるのは人民解放軍。その機関紙である『解放軍報』は、脊髄反射記事3本を全て即座に転載しました。さすがです(笑)。

 私の邪推が万一間違っていなければ、今後、軍主流派は外交部への介入をいよいよ強めるでしょうし、「科学的発展観」を礼讃し祭り上げつつ、胡錦涛を掌握する方向へ動くことになるでしょう。

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 ところで上述したように今朝の香港紙(2006/02/06)から『明報』と『香港文匯報』の記事が中国国内メディアに転載されていますが、親中紙の『香港文匯報』はともかく、『明報』の記事が採用されることに時代の変化を感じます。以前ならまずあり得ないことでしょうが、香港の中国返還によって「転向」したことが功を奏したのでしょう。堕ちたものです。

 それはともかく、『明報』より更に派手な親中路線へと「転向」して香港人の顰蹙を買ったのが『東方日報』とその姉妹紙『太陽報』。その親中度も『明報』よりずっと高いのですが、今回は転載の栄誉に浴することができませんでした。そのうち『太陽報』(2006/02/06)の記事が面白いのです。

 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20060206/20060206023632_0000.html

 記事の最後で台湾外交部の呂慶龍・報道官が『太陽報』台湾特派員の取材に答える場面が登場します。麻生外相発言について回答を求められた呂報道官は、

「麻生太郎氏のコメントについて台湾当局はすでに承知しているが、日本によって統治された時期は台湾の歴史の一部分で、事実でもあり、台湾政府は麻生太郎氏のコメントに理解を示すことができる。ただこの件に関してそれ以上言及することは差し控えたい」

 と語り、『太陽報』が期待したであろう内容とは正反対のコメントが飛び出してしまったのです。さすがにこれでは中共も転載できないでしょう(笑)。

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 そして、こうなります。

 ●台湾:「麻生発言」は問題視せず(毎日新聞 2006/02/06)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/news/20060207k0000m030051000c.html

 【台北・庄司哲也】麻生太郎外相が台湾の教育水準の高さを日本の植民地支配と結びつける発言をしたことについて、台湾の黄志芳外交部長(外相)は6日、「日本は歴史問題で中国や韓国と争議を起こしているが、この問題で台湾とも争議を引き起こさないように望む」との認識を示した。

 台湾では、メディアが発言の内容を伝えるだけで大きな論議にはなっておらず、台湾政府も基本的には発言を問題視しない姿勢だ。台湾テレビ「TVBS」は麻生外相について「反中国、親台湾の立場とみられており、靖国神社参拝問題でも中国の不満を引き起こしている」と紹介した。

 また、麻生外相が発言で台湾を「国」としたことについて、台湾外交部の呂慶竜報道官は「台湾を指し示すために用いた言葉で、特に意識はしていない。台日関係は良好で、今後も継続させたい」と述べた。

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 と、台湾がスルーしてしまい、日本国内もまた静かです。結局中共が独りで騒ぎまくってキリキリ舞いの道化師と化している状況となってしまいました(笑)。滑稽です。でも、中共政権にとってはシャレにならないでしょう。別の意味で「激しい衝撃」を受けたのですから。

 対日外交カードであった筈の「反日」がいまや中共政権にとって内政面でのアキレス腱であり、それゆえに日本側の一挙手一投足ごとに政権内部がグラグラと動揺してしまう。そしてそれを修正し平常に復させるためにあれこれと手を打つ破目となり、その分だけ本来国内の構造改革に費やすべき時間や統治者としての余命を浪費している。……とは当ブログが常々指摘しているところですが、今回もその典型例といえるでしょう。

 中共による脊髄反射記事のうち(1)には「麻生太郎による最近の妄言一覧」みたいな小見出しで記事9本へのリンクが張られています。なるほど超攻撃型3トップ(小泉・麻生・安倍)にあって麻生外相は攻撃の起点を務めることが多いようです。つまり今回で10回目の妄言、ということになるのでしょう。

 前にも書きましたが、十年前であれば麻生外相は10回クビを飛ばされている勘定になります。十年ひと昔とはよくいったもので、まさに隔世の観があります。いまや多くの日本人は、ひと昔前に比べれば高い免疫力を身につけたということになるでしょう。

 もちろん麻生外相の「妄言」にではなく、中共の発する「毒電波」に対して、です。

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 という訳で、あとは「激しい衝撃」でグラリと揺れた中共の新たな政治劇を楽しく鑑賞するのみです。生暖かく見守ってあげようじゃありませんか。

 「李登輝氏」カードという最高の燃料がいつ投下されることになるのかも興味津々。事前発表のないまま5月10日に「やあ、やあ」と突如成田に現れる、という驚愕の展開も面白いかも知れませんね(笑)。まさに「好戯在後頭」(お楽しみはこれからだ)であります。



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