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素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)
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来ました台湾問題。陳水扁の放った一撃に中共の混乱は必至だ!?
台湾
/
2006-02-28 22:18:56
正確にいえば、台湾の新情勢に対して「中共の反発は必至だ」がまずあって、そのあと「中共上層部の混乱は必至だ」になるかも知れないということです。「なるかも知れない」とは我ながら弱気ですが(笑)、この新情勢、実は米中間で示し合わせての出来レースの可能性も否定できないからです。
ともあれその「新情勢」なるものにふれておきましょう。日本でも比較的大きく取り上げられているニュースですから、皆さん御存知でしょう。
――――
●統一委を事実上廃止 陳総統、基本方針変更(共同通信 2006/02/27/22:06)
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=YNS&PG=STORY&NGID=intl&NWID=2006022701003313
【台北27日共同】台湾の陳水扁総統は27日、国家安全会議を招集、中台統一を前提とした対中関係の諮問機関、国家統一委員会と、同委が採択した国家統一綱領について「運用を終える」と述べ、事実上の廃止を決定した。陳総統は2000年5月の就任演説で「5つのノー」として統一委などを廃止しないと公約しており、約5年9カ月ぶりの対中基本方針の変更。中国は「独立への動き」と非難しており、中台関係の一段の悪化は必至だ。
(後略)
――
●台湾総統、「一つの中国」目標指針の廃止を発表(読売新聞 2006/02/27/20:21)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20060227i112.htm
(前略)
同綱領は、1991年、李登輝・国民党政権が策定したもので、中台を対等な政治実体として、「交流」や「敵対状態終結」など、統一に向けた段階的道筋を明記している。独立志向が強い陳政権が2000年に発足してからは、実質的に機能停止状態にあった。
(後略)
――
●陳総統、中台統一委と綱領を事実上廃止(Sankei Web 2007/02/27/22:21)
http://www.sankei.co.jp/news/060227/kok096.htm
(前略)
廃止決定は、陳政権との対話を拒否したまま台湾の最大野党、国民党との連携を強めてきた中国側に揺さぶりをかけるのが狙い。内政面では、昨年12月の統一地方選で与党、民主進歩党(民進党)が大敗したのを受け、政権死守に向けて対中強硬姿勢を鮮明にし、「統一志向」の国民党との路線対決に出た形だ。
陳総統は一方で、「台湾海峡(中台関係)の現状を変える考えはない」と強調し、独立宣言などは考えていないことを示唆。中国に対し「関係改善に向けた政府間対話」を呼び掛けた。
(中略)
また、台湾の実情に合わせた憲法改正を推進するが「主権問題は扱わない」と述べ、「中華民国」の名称変更などは行わない考えも示唆した。
(後略)
――――
台湾の総統である陳水扁は「独立」(台独)を本義とする民進党。ところがその民進党が与党であるにもかかわらず議会では最大勢力ではなく、一応「統一」を掲げている中共お気に入りの国民党やそれに近い諸派など野党の方が議席を持っています。いわゆる「ねじれ現象」です。当然のことながら、国民党などは今回の動きに大反発しています。
中共お決まりの派手な恫喝に代表される強硬姿勢、まあ武力侵攻による台湾併呑という選択肢を放棄していませんから口だけとは言い切れませんが、そうした大袈裟なパフォーマンスに加えて、この「ねじれ現象」が騒ぎを大きくしているように思います。
陳水扁のとった措置自体はチンケなものです。前掲報道でふれられているように、対中関係の諮問機関である「国家統一委員会」と同委が採択した「国家統一綱領」について、「運用を終える」としたもので、元々言っていた「廃止する」から一歩譲った形です。まあ事実上の廃止ではありますけど。
しかもこの国家統一委は国民党政権時代に李登輝・前総統が中共との統一対話先延ばしのために設立した性質のもので、民進党政権になってからは文字通り開店休業状態。『産経新聞』(2006/02/28)によるとその年間予算は約3600円、1カ月当たり約300円ですから文庫本も買えません(笑)。
ただ形骸化しているとはいえ、政権に「中国との統一を最終的目標とする」という建前を持たせていたという政治的な意味はあります。今回それを捨ててしまったことで、「統一」以外の選択肢も可能、ということになった意義は小さくありません。選択肢が増えたというのは、台湾人の将来は台湾人によって決定されるのだ、という意思表示でもあります。
――――
さて、台湾側のこの動きに対して中国側は「人民網」(『人民日報』電子版)と国営通信社・新華社が論評抜きで速報。
●「人民網」(2006/02/27/16:59)
http://tw.people.com.cn/GB/14810/4147198.html
●新華網(2006/02/27/17:40)
http://news.xinhuanet.com/tai_gang_ao/2006-02/27/content_4235147.htm
『解放軍報』はそれを即転載し、上陸作戦に関する演習に海軍が力を入れている、とか戦略ミサイル部隊の専門要員の若返りや実力の向上が進んでいるといった署名論評をさり気なく滑り込ませています。「恫喝度」を高めているつもりなのでしょう。
http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-02/26/content_417893.htm
http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-02/26/content_417974.htm
注目の論評は前日(2月26日)に台湾事務弁公室が出した「そんなことしたらただじゃおかねえぞ」的恫喝声明を再掲載するなどして急場をしのぎました。
http://news.xinhuanet.com/tai_gang_ao/2006-02/26/content_4229511.htm
前日に出した声明を改めて持ち出したことで、中共にとって陳水扁による措置が想定の範囲内であったことがわかります。
――――
で、今日(2月28日)になって中共から改めて声明が発表されています。陳水扁がとった措置を、
「台湾独立に向けて一歩踏み出したもの」
と決めつけ、恫喝声明同様、
「中台間の現状を一方的に変化させるものだ」
という趣旨の文言を交えて激しく非難しています。ただそれだけだと「武力侵攻か?」などという憶測を呼びかねないので、
「両岸(中台)の平和的統一は中華民族の偉大なる復興を促進し、台湾同胞を含めた内外の中華子女の共同責任であり、我々が一貫して堅持している奮闘目標である」
と付け加え、経済・文化交流の拡大によって結びつきを強めよう、というフォローを入れています。ただし最後は、
「だが、我々は『台独』には断固反対し、『台独』分裂勢力が如何なる名目、如何なる方式によって台湾を祖国から分割せしめることを絶対に許さない」
という一文で締めています。
http://news.xinhuanet.com/tai_gang_ao/2006-02/28/content_4237886.htm
台湾が中共政権に実効支配された時期は1分1秒すらないというのに「独立断固反対」とは不思議なことを言うものです。ちなみに日本政府は1972年の「日中共同声明」が示す通り、台湾が中国の領土の一部であるということを正式に承認していません。
――――
論評といえば外交部まで声明を出しているのが面白いですね。28日の定例会見で劉建超・報道官が記者の質問に答えたもので、
「陳水扁が『国統会』の運用と『国統綱領』の適用停止を強行したのは、台湾海峡の平和への挑発、両岸関係の緊張化、『法理的台独』を企図するものである。陳水扁による逆行したこの措置は両岸の同胞および国際社会からの強い非難を浴びている」
というのですが、台湾が内政問題なら外交部が回答する範疇じゃないでしょう。以前にも台湾に関する問題で「それは台湾事務弁公室に聞いてくれ」とスルーしていたというのに。……するとここで米国が登場するのです。
「我々は、米国が一つの中国政策を堅持し、台湾『独立』を支持しないと米国政府報道官が改めてコメントしたことに注目している。一方で、我々は米国が陳水扁の『台独』分裂活動の深刻さと危険性をよく認識し、『台独』分裂勢力に対して如何なる誤ったシグナルを与えることなく、我々とともに共同して中米関係と台湾海峡の平和・安定という大局を維持・擁護することを米国に促すものである」
……なんてことを言っています。昨年秋にブッシュ米大統領がダライラマ14世と会見したことに反発し、12月の香港における民主化問題で、支持を訴えるべく訪米した民主派の香港議員に政府要人が会見したことには「内政干渉だ」などと言っていたその口が、やはり内政問題である筈の台湾に関しては米国の関与(協力)を求めている。中国お得意の「雙重標準」(ダブルスタンダード)の典型ですね。
http://news.xinhuanet.com/world/2006-02/28/content_4239272.htm
もしかすると、本当は米国だけじゃなくて、台湾との縁が深い日本にも協力を要請したいのかも知れません。それをやらないのは、靖国参拝問題や歴史認識の問題で日本に対し散々内政干渉を繰り返してきた中共としては言い出しにくいのと、日本に公然と頭を下げてお願いするというのは中華たる面子が許さないといったところでしょうか(笑)。
――――
今回の問題について、中共はとりあえず反発姿勢を示しつつも、しばらくは模様眺めに徹するのではないかと思います。前述した台湾政治の「ねじれ現象」で、陳水扁の措置に台湾内での反発が強いであろうことを見越して、状況を眺めつつ時機が至れば国民党との関係強化や経済面での協力強化というようなアメを持ち出して来るのではないでしょうか。
陳水扁が今回の措置を打ち出せたのは、米国の了承があったからというのも中共は織り込み済みでしょう。あるいは事前に米国からの通告があったかも知れません。これについては4月に訪米予定の胡錦涛・総書記が米中首脳会談を通じて何らかのアクションを起こすでしょう。冒頭で「出来レースの可能性も」としたのはそのためです。
ただ、議会選挙などで国民党が大勝したりしていることを以て「台湾の世論は統一に傾いている」という判断をしているなら中共は痛い目に遭うことになるでしょう。浮動票ともいうべき現状維持派の多くが、実は潜在的独立派(トラブルなく独立できるなら独立派に一票)かも知れないということです。
一方で、中台関係は時間が経つにつれて、人員往来などが深まるにつれて、「統一」よりも台湾人意識を強化させることになる、という見方を中共が持っているかどうか。
……これは香港のケースで実証済みですが、民度や政治制度が余りにかけ離れているため、観光やビジネスなどで中国本土住民との接触が密接になればなるほど、「こいつらはおれたち台湾人とは違う。別物だ」という意識が育ち、強化されることになります。日本の対中感情悪化の大きな原因のひとつも中国本土住民と生活レベルで接触するようになったからでしょう。
要するに、現状維持の期間が長引くほど、中共にとっては選択肢が狭まり、軍事侵攻による併呑というオプションが台頭してくることになります。
――――
ともあれ今回の件によって、中共上層部に混乱が生じる可能性は否定できません。いかに想定の範囲内とはいえ、「中台関係の現状を一方的に変化させる」「台独への第一歩」という点については我慢できない向きも多いことでしょう。その筆頭は言うまでもなく制服組です。
胡錦涛と手を組んでいるとみられる軍主流派は劉亜洲中将、朱成虎少将といった電波型対外強硬派に比べれば現実に柔軟に対応できるとはいえ、所詮は軍人です。陳水扁からの一撃に対して胡錦涛に何らかの反撃を迫るとか、訪米に関して色々注文をつけるといった可能性は否定できません。
軍人でなくても、アンチ胡錦涛諸派連合の中にはこの機を利用して胡錦涛イジメに乗り出す政治勢力もあるでしょう。前回にもふれましたが、例えばこの20年余りの改革・開放政策での既得権益層が、胡錦涛にとっての「抵抗勢力」なのです。時期もうまいことに一年の計を定める全人代(全国人民代表大会=立法機関)の直前。ここはひとつ前座ともいえるイベントに期待したいところです。
――――
最後になりましたが、「中台間の現状を一方的に変化させるものだ」という物言いはそのままそっくり中共に返してやりましょう。昨年の全人代で
「反国家分裂法」
を制定したことで中台間の現状を一方的に変化させ、国際社会でも非難を浴びたことを、連中は都合よくすっかり忘れているようですね。
●性犯罪ですよこれは。(2005/03/13)
●「三二六大遊行」雑感。(2005/03/28)
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