番禺の事件に続報が出たり色々な動きがあるようですが、何だか私の方が虚脱してしまった感じなので小ネタに逃げます。週末向きの話として使おう使おうと思いつつちょっと古びてしまった題材です。
世間は連休を謳歌しているようですが、そんなもの、私には全く無縁でした。まず週末に昔むかーし関わったことのある業界の展示会に義理で顔を出す破目になりました。完全夜型生活の私としてはそれでもう十分重労働だったのですが、日曜日が中秋節で連休となったのをいいことに、土曜から3日間、香港から色々な人が来てそれに応接するうちに私の連休は終わっていました(涙)。
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どうしてそうなるかと言うと、香港のある分野に以前肩入れしたことがありまして、もう随分前のことなのに虚名だけが残っているようなのです。それで私を叩けばまだ何か音がするだろうと思っている若い連中がこの3日間にゾロゾロと来日しまして、来日ついでに五月雨式に訪ねて来られてしまえば会わない訳にはいきません。
何を勘違いしたのか香港政府の若手官僚まで会いに来たのには驚きました。
「今度香港政府もいよいよこういうことをやることになったのですが、どうすればうまくいくでしょうか」
いやだからもう私を叩いても何の音もしないのです。それに今さらそんなことやろうったって手遅れ。香港はもう終わってるんですから緩やかに玉砕するしかないんですよ。……と言う訳にもいきません。ちょうどそのテーマを昔文字にしたことがあるので、
「香港社会がこういう条件を満たせるようになればうまくいきます。無理ならやらない方がいいと思います」
と、それを印刷して手渡したりしました。
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そんな感じで金土日月を過ごした後に残ったのは、みんながみんな手土産に持ってきた月餅の山です(笑)。そりゃ季節柄イチ押しの菓子折なのでしょうが、一部を親に送ってあとは近所に配りでもしないと消費できそうにありません。古い友人と会う機会も持てたのですが、奴もやっぱり月餅を持ってきたのには閉口しました。
「おい今年の中秋節は『九・一八』(柳条湖事件)だぞ。それなのに日本人に手土産を持ってくるとは一体どういう了見だ(笑)」
「バーカ、おれたち香港人を大陸の連中と一緒にするなよ。歴史の話なんておれたちには何の関係もない」
という冗談が言い合えるのもたぶん奴が私と同世代だからで、いま学校で勉強しているガキ共ならまた違った反応になるのかも知れないなあ、などと思いました。
ともあれ期間限定で無理やり昼型生活に戻したうえ、色々な人と会ったので何だかボーッとしています。嵐のような4日間でした。おお、嵐。そうです今回は正にその話をしたかったのです。……って無理矢理ですか。そうですか。
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米国のハリケーンで水没した住宅街をワニが泳いでいる映像を目にしましたが、似たようなことが中国でも起きています。遼寧省の話です。
8月中旬と古いネタなのですが、確か8月15日記念で民間組織が大連かどこかで反日活動をやるとかやらないとかいった話がありました。結局当日は北上してきた台風(温帯低気圧?)で暴風雨となり、半島で突き出た位置にある大連はともかく、同じ遼寧省でも内陸部ではそれどころじゃありませんでした。
嵐です。豪雨による洪水の被害も出た筈ですが、そんなこと私は覚えちゃおりません。ともかく同省本渓市の太子河の河畔に、観光スポットであるワニ園がありました。34匹のワニを飼育していたそうです。
……となればもう先の展開が読める話ですね(笑)。太子河のさらに上流にダムがありまして、豪雨で水かさが増し危険水位に達したので放水することになりました。「1時間後に放水」とワニ園にも通知がありました。8月13日の午後2時ごろのことです。
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河畔と書きましたがこのワニ園の池は太子河の本流から2mとしか離れていなかったのです。
ともかく34匹のワニを河から離れた池に移動させないとお待ちかねの展開となってしまいます(笑)。飼育係はじめ職員が急いでワニの移送にとりかかりましたが、ワニがむずかって作業は遅々として進みません。ようやく5匹を移したところでタイムリミットの1時間が過ぎてしまいました。
お待ちかねの展開です。ダムの放水により太子河の水位はみるみる上昇し、奔流はなお29匹が残っていたワニ池にも流れ込みました。水の勢いで飼育池を囲っていた柵が瞬時に破壊され、ワニ池は瞬く間に太子河に飲み込まれてしまいました。
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ということで標題通りです。体重300kgの「キング」を始め、ワニ29匹が行方不明に。地元当局にしてみれば反日デモなんかよりもシャレにならない事態です。本渓市には洪水警報に加え「ワニ警報」が発せられ、ワニ園職員や警察を中心とする捕獲チームが結成されました。
職員はワニ捕獲用の専用網を持ち出しました。よくわかりませんがワニの口を塞ぎつつ絡めとってしまうスグレモノのようです。ワニ池の周囲から捜索範囲を広げていき、2日間で15匹の捕獲に成功。そのうち1匹は民家からわずか20mのところで捕獲されたそうです。
体重300kgの「キング」は水位が下がったところで、ワニ池に残っていることが判明しました。重すぎて水の流れに乗れなかったようです。それでもなお13匹が逃亡中とあって、気を抜くことはできません。
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「太子河は全長400km。ウチの区内でも川幅は広いところで100mもある。水位が下がったとはいえ、川の水は濁ったままなので発見するのは困難だ。」
とは捕獲チームのリーダーである王陽介・水洞景区偵察大隊副隊長のコメントです。困難なのはわかりますけど、何だか区外に逃げたワニのことは関知しない、という官僚臭が漂っているようでもあります。ワニが市民を襲う可能性はあるのか?という質問には、
「もちろんだ!長年飼育されているから野生のワニと一緒にはできないが、侮れない攻撃力を有しているとみていい」
と表情を引き締めました。一方ワニ園の飼育関係者は、
「水温は低いし、気候もこれから涼しくなるから熱帯育ちのワニが冬を越せないのではないかと心配だ」
と、呑気なコメント。市民の安全よりワニの命かよ、とツッコミが入りそうです。
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/16/content_3359438.htm
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翌日に続報が流れました。13匹のワニは依然行方不明と事態は進展していません。そんななか、早くも責任のなすりつけ合いが始まりました(笑)。
ワニ園側が、「ダムの放水通知が遅く、時間的余裕がなかった」として賠償を求める構えを示したのです。これに対しダム側は自らの責任を否定。肝心のワニが見つからないまま、泥仕合いになりそうな予感を漂わせています。
地元警察当局は発見次第射殺することも選択肢に含めつつ、なおも捜索を続行中とのことです。
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/17/content_3366087.htm
……で、これ以降続報らしいものを私は目にしていません。
騒がれていないのですから人的被害は出ていないのでしょうが、一体どうなったのか。逃げたワニはいずれもタイ産のもので、水温が低いと水から上がって体を暖める習性があるそうです。でも遼寧省ですから陸地に上がっても涼しいことでしょう。ワニにとっては厳寒でしょうから生き延びるのは難しいのかも知れません。
以前、浙江省かどこかの動物園でやはりタイ産のワニを飼育しようとしたところ、動物園側に関連知識が乏しかったのか、冬に全滅してしまったそうです。
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それにしても、13匹が行方不明なんですからパニックめいた反応が市民の間に起きてもよさそうなものです。
実はそこら辺が一番の見所で、いかにも「中国クオリティ」な数々の面白いリアクションを見て楽しむのがこの事件の正しい味わい方のように思えるのですが、残念ながら報道はそれにふれていません。
少しは空気嫁>>地元メディア。ワニも寒さに負けず頑張れ。赫々たる戦果を期待しています。(不謹慎?何それ?)
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