日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 理非もなく言ってしまいますが、やっぱりラッキー・アドミラルなんだと思います。もちろん小泉首相のことです。

 火事場や修羅場を鮮やかに切り抜けるのは手腕だけでなく運も味方しないと。よく言われるように、「悲運の名将」という物言いは単なる言葉遊びで、実在することはないのでしょう。

 歴史的大勝利。その勢いを駆って靖国神社参拝を是非、と言いたいところですが、お隣にジリジリと焦れる国があるので(笑)、もう少し焦らしてあげてもいいかなと。

 ●中国青年報:自民党圧勝で「5度目の靖国参拝近い」(サーチナ・中国情報局)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050912-00000003-scn-int

 ……ね?あちらさんもドキドキなのです。せっかく胸ときめかせて待っていてくれるのですから、期待を裏切ってはいけません。

 10月開催予定とされる中共の重要会議「五中全会」(党第16期中央委員会第5次全体会議)直前に参拝、あたりが絶好のタイミングかも知れません。緊急事態にシナリオが狂って重要会議は紛糾、ていうのを一度見てみたいのです(笑)。

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 ●小泉首相の「タイトル防衛」がアジアの喝采を浴びるのは無理ぽ?(新華網)
 http://news.xinhuanet.com/world/2005-09/12/content_3476464.htm

 この標題は一種の負け惜しみなのでしょうか。十八番の「アジア」が出ましたね。さてさてどういう範疇の「アジア」なんでしょう?すでにタイのタクシン首相は祝意を表明しているんですけどね(※1)。

 例によって隣国限定の「アジア」?としても韓国の基地外大統領からは祝電が届いていますし(※2)、台湾政府の東京における出先機関のトップ、つまり駐日大使である許世楷・駐日代表もお祝いのメッセージを寄せています(※3)。アジアではありませんが中共外交官続々亡命のオーストラリア、あそこのハワード首相からも「偉大な改革者」との賛辞が(※4)。

 ……あとは中共と北チョソだけですね。温家宝祝電マダー?チンチン(AA略)てなもんです。胡錦涛?いや胡錦涛はそれどころじゃないでしょう。米国でいきなり被告人になっちゃいましたから。

 ●民主化運動家の王丹・王軍涛両氏、米国で胡錦涛国家主席を告訴(明報即時新聞)
 http://hk.news.yahoo.com/050912/12/1gjkb.html

 裁判が終わるまで出国できなかったら面白いんですけど。ラッキー・アドミラルとは好対照ですね。衰運一直線。

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 で、自民党の圧勝に終わった衆院選に対する中共の反応を楽しみにしていたんですが、目下のところは「新華網」(国営通信社・新華社のウェブサイト)も「新浪網」(SINA・大手ポータル)も同じ記事を使って特集を組んでいます。前掲の『中国青年報』の記事もその中の1本。……つまり一種の報道規制が敷かれているということです。中共にとってはデリケートにならざるを得ない選挙結果なのでしょう。

 衆院解散からこのかた、ずっと注目されてはいました。「新華網」をはじめとした中国国内メディアがどんどんニュースを流していましたから。日本での世論調査結果(首相支持率、政党別獲得議席予想など)もあれば、中国社会科学院あたりの専門家の分析もあって、もう色とりどり。

 情報を流し過ぎて民主化運動のタネ火になるんじゃないかとこちらが心配するほどでした。だって「小日本」のくせに普通選挙制が常識で指導者の支持率調査もできるなんて生意気すぎるじゃないですか(笑)。

 ところが選挙結果が判明してからは、とりあえず使っていい記事が限定されました。突き付けられた現実に対する党中央の腰が未だ定まっていないからでしょう。この段階で勝手に変な分析記事などを載せられては困る訳です。

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 ●右翼勢力強大化の証し 批判目立つ中国ネット(共同通信)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050912-00000031-kyodo-int

 【北京11日共同】11日投開票の衆院選で自民党が圧勝したことが伝えられると、中国の大手ニュースサイト「新浪網」では「日本で右翼勢力がますます強大になっていることを示した」などと、選挙結果を日本の民意の右傾化とみて批判する書き込みが増えた。

 中国では小泉純一郎首相の靖国神社参拝などに関心が集中しており、選挙結果は首相の外交政策への信任と受け止められている。「小泉首相が退陣するのがいいとは限らないし、権力の座に残っても悪いともいえない。冷静にみるべきだ」という客観的な意見もあったが、「過去も現在も日中友好などないし、将来もない」などといった感情的な書き込みが多数を占めた。

 ……この記事がなかなか重要だと思います。

 要するに中国としては「小泉圧勝」という現実とそれを実現せしめた日本の民意、これをどう受け止めるかということです。ここでは、

「日本で右翼勢力がますます強大になっていることを示した」
「日本の民意の右傾化=日本国民の総右傾化」

 という二者択一になっています。この2つから選べというなら、後者の方が現実に即しているように思います。中国のネット世論も多くがそういう反応だったのではないでしょうか。もちろん連中のいう「右傾化」は私たちにとっての褒め言葉(笑)。日本国内であればより適切な単語が使われることでしょう。

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 ただ、中共としては後者を選べないのです。「日本国民全体の右傾化」だと、例えば「反日」の鉾先が「日本の右翼勢力」から「日本人」に変わる訳ですから。

 中共は今までずっと、

「悪いのは日本の一部の右翼勢力」
「右翼勢力が台頭し軍国主義が復活する気配をみせている」

 という趣旨のスタンスを維持してきました。それを「日本の民意の右傾化=日本国民の総右傾化」としてしまうと、お題目の「日中友好」が語れなくなり(だって握手する相手がいなくなる訳ですから)、日本を敵国同然の扱いとせざるを得なくなってしまいます。
「日本人=敵」です。でも現実を考えれば、文化大革命のような魔女狩りをやって日本企業と日本人の全てを国外追放にでもしない限り、そういう位置付けはできようがない。だから現時点では一種の報道規制でしのいでいる、という印象を受けます。

 ところが、ネット世論はこの束縛から自由でした。少なくとも選挙結果の大勢が判明した9月11日夜時点では、です。今後もこの話題を自由に語れるかどうかはわかりません。ということで、刹那を逃さずネットの声を拾った共同通信はGJ!でした。

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 「右傾化」

 というこの言葉、私にとっては年初以来ずっと気になっていたものです。中国国内メディアの日本関連記事において「右翼勢力」という言葉はすっかり定着していますが、今春の「反日騒動」前後から、「右傾化」という単語もしばしば見かけるようになっていました。

 「右翼勢力」はそのものズバリなのですが、「右傾化」なら「国民の」「政治家の」「社会の」といった主体が必要になります。今年4月からで調べてみると、「政界の右傾化」「政壇の右傾化」といった使われ方が主流ですが、「社会全体の右傾化」という際どい表現を使った文章もありました。いずれも歴史観や歴史教科書問題に絡んだ記事です。

 ただ、これまでは基本的には「日本で右翼勢力が強大になってきている」という文脈の中で語られたものでした。「日本が右傾化しつつあるのは……」という一節のある「新華網」の記事には、

「反対する相手は日本企業ではなく、日本人民ではなく、日本文化、日本製品、日本の技術や資金などでもない。日本の右翼勢力とその政策こそ反対する対象だ」
(※5)

 と、ちゃんとフォローが入っています。蒋立峰・中国社会科学院日本所所長も『人民日報』によるインタビューの中で「右傾化」について言及し、

「日本の指導者と民衆を同一視する向きが中国では一部にあり、日本政治の『右傾化』を日本民衆の『右傾化』と捉えている。だが現実に『右傾化』という一言で日本の政治的現状を規定するのは正確ではないし、日本民衆の思想傾向をその言葉で表現するのはより大きな誤りだ」

 とわざわざ述べています(※6)。でも民意が反映される普通選挙制の下にあって「政治の右傾化=民衆の右傾化」とくくることは決して誤りとはいえないように思うのですが……。一党独裁制の下で呼吸する所長さんの気苦労が忍ばれるようでもあります。

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 ともあれ報道規制中の現在、「小泉圧勝」は、

「『女刺客』などの言葉がマスコミを賑わせた劇場型政治の帰結」
「小泉マジックが有権者を『洗脳』した」
「郵政改革にテーマを絞ってわかりやすい選挙にし、浮動票を取り込んだ」

 といった理由で説明されています。まあそういう側面も確かにあるにせよ、何だか日本国民が主体的に選択したのではなく、「揃いも揃ってコロリと騙された」とでも言いたそうな論調です。
選挙結果が民意の反映であることを認めたくないようでもあります(笑)。

 ともあれ、「日本国民の総右傾化を示すもの」といったベタすぎる分析は、現時点では御法度のようです。もちろん「小泉圧勝=靖国参拝支持が圧倒的多数」ということはないにせよ、「いい加減にしろ中国」という思い(=右傾化w)が広範かつ着実に浸透しつつあることには留意すべきでしょう。

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 ちなみに中国の政局への影響ですが、これは間違いなくあるかと思います。「自民圧勝」ならともかく、実質は「小泉圧勝」です。中共現執行部に対するヘタレ認定を裏打ちするようなものですから、胡錦涛の首がいよいよ締まるということです。

 実はもうかなり締まっているようにも思えますけどね。例えば先日、東シナ海資源紛争の現場である天然ガス採掘施設「春暁」付近に中国海軍の駆逐艦など5隻が出現、それも日本の主張する中間線にギリギリかからないところを航行しましたが、あれは投票日直前を狙ってやったものではないでしょうか。

 台湾の総統選挙のときに大規模な軍事演習を行ったりミサイルを試し撃ちしてみたりしたのと同質なもので、いかにも軍人的発想の示威行為です。結果からみるといずれもみな自慰になってしまいましたが(笑)、軍権を握った筈の胡錦涛が制服組の一部を掌握できていない証左といえるかも知れません。

 台湾総統選挙時の軍事演習は江沢民が軍部に迎合した結果でしょうが、今回も胡錦涛が同じように迎合したのか、それとも胡錦涛の知らぬところで勝手に先走った一派があったのか。いずれにせよ、政情不安定を示すシグナルということになります。

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 何だか普段に増して散漫な内容になってしまい申し訳ありません。今回の圧倒的すぎる選挙結果を受けて、中共の対日政策に何らかの変化があるのだろうかという話をしたかったのですが、どうも道草を食い過ぎました。本来語るべき内容は宿題にさせて下さい。


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【※1】http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050912-00000234-jij-int
【※2】http://www.sankei.co.jp/news/050912/kok049.htm
【※3】http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050912-00000028-san-int
【※4】http://www.sankei.co.jp/news/050912/kok094.htm
【※5】http://news.xinhuanet.com/world/2005-04/12/content_2818298.htm
【※6】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/22/content_3251534_2.htm



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