日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 いやいや、別に前回紹介した江西省・九江学院の「学生運動」(暴動)が遊び半分のイベントだった、という訳ではありません。あれはあれで学生の怒りの発露であり、世相の一端を映す鏡。

 ……というか中国社会で遍く行われている汚職あるいは汚職まがいの行為に対する行動ですから、数々の都市暴動や農民暴動と同じ範疇に含め、同列に論じていいと思うのです。だから「21世紀型」と枕詞をつけてみました。

 ただ「従来型」であろうと「21世紀型」であろうと、同様に大学で起きた事件なら、やはり「命がけの闘争」の前にはニュースとしてのインパクトを失います。

 ええ、昨日書き漏らした一件、山東省の大学で発生した学生による民族衝突(ウイグル族vs漢族)のことです。情報の確度はまだ「?」なんですが、500人が刃物などを振り回しての大立ち回りですから、インパクト優先で記事になったのだと思います。

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 元ネタは香港紙『太陽報』(2005/07/02)で、そのソースは「国内のネット情報」。学校側が同紙の電話取材に対し事件の存在そのものを否定しているのはお約束としても、やはりソースの弱さからうーんと考えてしまうところです(※1)。

 でもやはりインパクト優先なんでしょうね。日本では共同通信電を掲載する形で『産経新聞』(電子版)が報じています。

 ●中国で学生同士の衝突相次ぐ 山東省、江西省で(Sankei Web)
 http://www.sankei.co.jp/news/050702/kok086.htm

 2日付香港紙、太陽報によると、中国山東省の山東理工大で6月27日、学生計500人が漢民族とウイグル民族に分かれて衝突、重傷者5人を含め少なくとも9人がけがをした。(中略)
 報道によると、山東理工大の衝突は、バスケットボールの際のもめごとが発端。刃物などを持ったウイグル民族の学生約30人が、寮で漢民族の学生らに暴行を加えたため衝突が拡大。武装警官が鎮圧し数人を拘束した。(後略)

 ……と、この記事で九江学院のニュースとの合わせ技により、「香港紙、太陽報によると」という形で民族衝突が伝えられました。九江学院は「学生同士の衝突」ではないのですが、そこは大人の事情ということにして大目に見ることにしましょう。性質の異なる2つの事件(共通項は「大学生」のみ)を1本の記事に無理矢理詰め込むと、こうやってタイトルで行き詰まってしまうものです。

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 それでは『太陽報』の記事を基に話を進めていきましょう。

 ●ウイグル族と漢族計500名が流血の衝突――山東理大騒乱、武警出動し鎮圧
 http://the-sun.com.hk/channels/news/20050702/20050702013740_0001.html

 舞台は山東省●博市(●=左がさんずい、右は上が巛、下が田)の山東理工大学。『産経』にある通り、発端はウイグル族の学生と体育学部の学生(こちらはたぶん漢族)がバスケットボールに興じている際に起きたトラブルのようです。たぶん戯れにバスケをやるというより、「ウイグル族vs漢族」といった意気込みが両者にあったのではないでしょうか。トラブルの詳細は不明ですが、幸いその場では衝突に至りませんでした。

 ただウイグル族側には恨みが残ったとみえて、6月27日午後10時ごろ、30名以上のウイグル族学生が武器を手に体育学部の22号宿舎を急襲。肝心の相手は居合わせなかったものの、乱入したウイグル族学生は当たるを幸いにその場にいた漢族学生たちをタコ殴り。学生会主席を務める学生を含む漢族学生多数が負傷する事件となりました。

 目標の相手はいなかったけどこいつら漢族だ。構うもんか、やっちまえ。……というノリに、ウイグル族学生と漢族学生の間に以前から某かの反目が存在していたことがうかがえます。

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 一方的にやられた漢族学生も、もちろん黙ってはいません。午後11時半ごろ、いざ反撃とばかりに体育学部の数百名を動員し、こちらも棍棒などを手にウイグル族学生が住む外国語学部8号宿舎を包囲。

「ウイグル豚は出ていけ!」

 などと叫びながら投石し、窓ガラスが相次いで割られました。これと同時に漢族学生が大挙して宿舎内に乱入。ウイグル族学生を殴打するなどして、重傷者が少なくとも5名。宿舎内にあった机やベッド、PC、テレビなどは全て窓から地面へと放り投げられて破壊されました。ウイグル族学生は機敏に難を逃れた者もいましたが、それ以外は血祭りに上げられたそうです。

 こうなるともう大学側の手には負えません。市公安局(警察)から派遣された警官が事態収拾に務めましたが果たせず、とうとう武装警察(武警)を出動させて、午前3時ごろにようやく騒ぎが収まったそうです。漢族学生が襲撃した8号宿舎の荒らされ方はひどいもので、ドアというドアは全て蹴破られ、床にはガラスの破片や棍棒、レンガなどが散乱する有様。

 『太陽報』の記事は民族衝突に刃物も使われたと冒頭で書いているのですが、どの場面でどちらが使ったのかは具体的に言及されていません。衝突に加わった者はウイグル族・漢族合わせて合計500人にも及ぶとされていますが、それならもっと派手な場面があっても不思議ではありませんよね。例えば学生寮内だけでなく、屋外での衝突とか。……このあたりは謎です。

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 事件の翌朝、つまり武警投入で事態が終息してほどない午前6時には、大学内のネットや電話などが全てマヒし使用不能になりました。これは事件の噂が広まることを恐れた当局による封鎖措置でしょう。他にも寄宿舎の外には警官が警戒に立ち、学生には禁足令が敷かれました。

 大学生による集団的事件+民族衝突という事件の性質を山東省当局も深刻視し、同省公安庁や教育庁といった省レベルの担当者を大学に派遣。事態把握に努める一方、騒ぎの音頭をとったリーダー格の学生を逮捕する方針で調査が進められました。

 すでに学生数名が拘束されているといわれ、体育学部、外国語学部の学校側の責任者には、それぞれ行政処分が下された模様です。

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 ところで、ネット接続や電話が封鎖措置の対象とされ、外出も禁ずるという戒厳令状態とはいっても、携帯電話がありますよね。公安のバーカ(笑)。

 ……という訳でこの事件の話はすぐにネットに流れ、中国国内の掲示板の多くで話題となりました。ある掲示板では、自分は山東理工大学の漢族学生だとする者が出現、同大学ではウイグル族学生がこれまでもしばしば騒ぎを起こしており、漢族学生もとうとうキレたのだ、と発言しています。他にも今回騒ぎを起こしたウイグル族学生を「あいつらは鬼畜だ!男じゃない!」と罵る怒りのレスもあったそうです。

 ウイグル族側の反応はたぶん専用掲示板のようなところで拾えるでしょう。私も以前そのURLを持っていたのですが、いま探してもちょっと出てきませんorz。まあ「飛び火」に期待しつつ(笑)、続報待ちといったところです。とりあえず、中共政権が連呼する「調和社会の実現を」が未だに実の伴わぬお題目にすぎないことはよーくわかりました(笑)。


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 【※1】当ブログは昨日、書き手の体力という制約(笑)により九江学院とこの民族衝突の二者択一を迫られた訳ですが、インパクトはあっても民族衝突は確度の点で疑問符がつく。でもホンモノなら翌日以降に後追い報道があるだろうということで、九江学院を優先しました。その後追い報道が現時点まで待ってもまだ出でこないのですが……。

 【関連】「続・河南省の民族衝突事件(漢族vs回族)」(2004/11/03)
     「河南騒乱(漢族vs回族)第二稿」(2004/11/05)


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 【追記】
この事件の関連スレが「百度」に残っていました。御覧になるのもまた一興かと。(2005/07/04/20:27)

     http://post.baidu.com/f?kz=21631400
     http://post.baidu.com/f?kz=21486008
     http://post.baidu.com/f?kz=22227436



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