日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 9月入学制の中国にとっては今がちょうど卒業シーズンですね。

 なるほど道理で。……とは、教育部が中央組織部や人事部とつるんで最近、「若人よ内陸を目指せ」運動ともいうべきキャンペーンを中国国内のマスコミを使って展開しているのです。ユース共産党たる共産主義青年団(共青団)なども一枚かんでいる模様です。

 そうでもしないと「卒業即失業」となる学生が続出しかねないからですね。このキャンペーン、身もフタもなく言ってしまいますと、

「北京や上海でホワイトカラーなんて甘い夢は捨てろ。それよりも内陸部の田舎へ行くか末端組織に骨を埋めろ」

 という内容なのですが、中国のキャンペーンというのは一種の騒音公害のようなものです。関連記事が集中豪雨的に、紙面をそれ一色で埋めんばかりの勢いで出てきますから。ええ、それはもう嫌というくらいの数で。

 ちょっと前にそれらしき通知を見かけたと思ったら、本腰を入れてやり出しました。実例を御覧になりたい?……ごもっともです。

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 ●大学新卒者は末端組織を目指せ――国が指導・奨励へ
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/04/content_3174897.htm

 ●人民日報社説:末端組織に目を向け功業を為すべし
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/04/content_3174374.htm

 ●新卒者が末端組織に就職することを奨励――共青団中央と全国学聯
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/05/content_3179369.htm

 ●清華大学、新卒者の半数近くが末端組織に就職へ
 http://news.xinhuanet.com/edu/2005-07/06/content_3183138.htm

 ●安徽省、7年連続で大学新卒者4000名が農村の末端組織へ
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/06/content_3183863.htm

 ●上海の大学新卒者、400名以上が西部に就職
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/06/content_3184156.htm

 ●毎年1000名の大学新卒者を選抜、農村の幹部候補生に――河北省ケイ台市
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/06/content_3184268.htm

 ●大学新卒者による末端組織への就職を積極的に指導・奨励へ――中央組織部など
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/10/content_3199160.htm

 ●福州大学、卒業生500名以上が貧困地区に就職
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/10/content_3199388.htm

 ●石家庄鉄道学院、卒業生の60%が末端組織へ就職
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/10/content_3201005.htm

 ●「西部地区での就職」に熱を上げる――重慶の新卒者
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/11/content_3203238.htm

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 ……とりあえずこのくらいにしておきます(笑)。「末端組織=内陸部の農村」では必ずしもないのですが、外資系企業の小洒落たオフィスに比べれば遥かに地味で給料も安く、「這い上がる」ための起点として適した環境とはいえない職場です。

 まあ、わざわざ「奨励」「指導」なんて言葉が使われるくらいですから、人気のない就職先なのでしょう。上に並べた記事には「志願」なんて悲壮な言葉すら出てきます。まるで人身御供か決死隊かというところですが、実際にそういうイメージなのだと思います。もちろん「奨励」するくらいですから、「志願」者には奨学金や支度金のような御馳走がついてきます。

 で、国がここまで力を入れる、というより力づくになるのは、前述した通り、そうでもしないと「卒業即失業」となる学生が大量に出てしまうからです。

 前に失業問題()でもふれましたが、大学新卒者の就職率は昨年実績が73%。実に10人のうち3人までが、実数でいえば76万名が「卒業即失業」の憂き目に遭っています(中には卒業即留学などのケースもあるでしょうが)。

 ●大学新卒者204万名の就業を実現――来年の新卒予定者数は338万名
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-12/11/content_2320263.htm

 いま正にその「来年」が卒業しつつあるのですが、総数が前年比58万名増なのに対し、その分の雇用創出がなされているかといえば、答はNOでしょう。

「今年の就業圧力は例年にない強さだ」

 と厳しい表情の周済・教育部長、一応「昨年実績を下回らないこと」との目標を掲げてはいますが、各大学が就職率の水増し報告でもしてくれないと到底達成不可能な水準でしょう。ちなみに昨年の73%もかなり水増しされた数字のようです(笑)。

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 贅沢言うな大学生、と説教してやりたいところですが、恐らく中国はスケールが違うのでしょう。「格差」のスケールです。地域間格差もあれば業種間格差もあります。生涯賃金を弾いてみれば、貧富の格差も相当なものになるかも知れません。

 雇用者側からみれば、学生が己を買いかぶって高望みしているという側面が目につくのでしょうが、女子学生はもちろん、男子学生ですらも面接で好印象を勝ち取ろうとプチ整形に走ったりする御時世です。必死なのです。

 必死になるべき方向がズレているような気もしますが(笑)、その厳しい就職状況には同情してやりたくもなります。フリーターで何とかやっていける日本は、不景気だ何だと言っても経済の基礎体力が中国とは比較にならぬほどしっかりしているということでしょう。

 かつて仕事の一環として香港を例に試算してみたことがあるのですが、実家住まいならともかく、賃貸で独り暮らしとなると、時給が低すぎて話になりませんでした。現在の中国にフリーターの存在を許容するほどの余裕はあるのかどうか、これは私にはわかりません。

 ところが、そのくせ生意気にもニートがいるのです(笑)。いや冗談ではありません。これについては以前紹介したことがありますが()、最近また関連記事がいくつか出ています。これも卒業シーズンだからなのでしょう。

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 ●成人の30%が親のスネかじり――若者のニート化は誰のせい?
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/08/content_3191461.htm

 標題の通り、驚いたことに中国の成人のうち3割は親に養われているとのことです。「ニート」という単語は何種類かの意訳があり、あるいは「NEET」とそのまま使われたりもして、まだ用語としては定着していないという印象です。

 ただニートの実質を備えた若者はたくさんいるのです。親から小遣いをもらってネットゲームに熱中したり、家でゴロゴロしたりしているようです。蝶よ花よと育てられた一人っ子世代、いわゆる「小皇帝」ですから、親もつい甘くなってしまうのでしょう。

 この記事はそのニートを「要するに無職」と見立てているようで、その類型を6種類に分けています。

 (1)就職先について高望みが過ぎて「理想の職場」と出会えないままの大卒者。
 (2)就職したものの、仕事は疲れるしストレスもたまって、と言い訳して無職へとリターン。
 (3)起業家幻想型。起業意欲はあるものの目標とノウハウがなく、さりとて人の下で働くこともよしとしない。
 (4)流転型。転職を重ねた挙げ句、最後には無職に落ち着いてしまう。
 (5)依願退職者。自分の仕事をキツいと感じ、楽な仕事を求めて退職するも、結局は一番楽な無職に収まる。
 (6)学歴もなく技能もないタイプ。3K業種しか選択肢はないが、それもイヤ。無職でいいやという結論になる。

 「若者のニート化は誰のせい?」とタイトルで問いかけているこの記事は、「小皇帝」「一人っ子」という単語が後段で出てくるように、まず親の躾に原因を求めています。次に中等教育の段階で職業・技能訓練を十分に受けていないことも原因のひとつとしています。

「だからニートは仮に短期の仕事をするにしても、サービス業の中でも若い世代が担当する店員やウエイトレスのような仕事しかできない。いきおい年齢を重ねるにつれて、就業機会はどんどん少なくなる」

 ……と指摘しています。なるほどそういうものなのかも知れません。

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 国を挙げて大卒者に就職の世話をし、「失地農民」や中高年の失業者(「4050」と呼ばれています)が出口の見えない塗炭の苦しみに喘いでいる一方で、成人男女の3割が事実上ニート化している、という現実はどう理解すればいいのでしょう。

 やはりこれも「格差」をキーワードに理屈付けるべきものなのでしょうか。とりあえず隣国で馬鹿が大量生産されているのは有り難い限りですけど。

 ニートのままでいいから、ネットを駆使して同時多発都市暴動でもやってほしいものです(笑)。



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