風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

生きがい

2010-07-22 10:11:24 | ギター、映画など他
 定年後の趣味に、皿まわしを習い始めたという男性のことをテレビでとりあげていた。
何人かが一堂に集まって、一心不乱に天井に向けた棒の先で皿をまわす。
 なかなか難しくて上達しないが、今はこれが生き甲斐ですと楽しそうではあった。
 しかし、あれが生き甲斐ねえ、とちょっと考えさせられた。
くるくる皿を回すだけのことは、いくら上達してもこちらから見たら、たいしたことには思えない。
 本人がいくら打ちこんで生き甲斐と言われても、こちらは、そうですか、と言うしかない。
 
 生き甲斐と言って憚られないことって何だろう。
 そこで、はたと我が身を振り返る。ギターを弾く、雑文を書く、どちらも、風子ばあさんは力を入れている。
だけど、それがどうした……と言われたら、どちらも下手の横好きでしかない。
皿まわしと同じで、何かを生むわけでもない。
 世のため人のためにもなることでもない。こんなことをしている暇があったらラッキョウや梅干しでも漬けているほうが、なんぼか家族だけでも喜ぶ。
 もうばあさんの人生も終わりにさしかかっている。
 ああ、生き甲斐です、と胸を張って言えることに打ち込んだ人生を生きたかった、と、ばあさんは、もう間にあわないことを愚かにも悔やむのである。
コメント (3)
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