主人公 岡田匡、出版社の編集人
「離婚をした」が
小説の書きだしである。
妻と住んでいたマンションを出た匡は、
公園の傍らの古家を借りた。
大家は園田さん。
園田さんは、息子のいるアメリカへ移るので、猫のふみを大切にすること
ときどき家の様子を知らせることなどを条件にする。
匡は、この家の近くに住む元恋人の佳奈と偶然再会する。
佳奈とのいきさつは、
妻との離婚に少なからずの影響があったと思われる。
再会した佳奈には、介護が必要になった老いた父親がいる。
三人で暮らすことを提案した匡に、佳奈は隣どうしですむことを提案して
火事で更地になった土地に、家を建てる計画のところで物語は終わる。
みんな、みんな、優しい。
猫のふみへも、火事を出した佳奈の家の隣人の老女にも。
認知症になった佳奈の父親へも。
むろん、匡と佳奈の双方も。
駅を通過するプラットホームに偶然見かけた
元妻には、寄り添う体格のいい男性がいて。
作者は、元妻をも不幸にしない配慮を示して
あくまでも優しい作者の心を感じる小説である。
「火山のふもとで」「沈むフランシス」に続く三作目の小説である。
前二冊についてはただいま閉鎖中ブログ「ばあばの読書記録」にメモあり。