バアチャンは12人の子を産みながら、
死ぬ前は、うちの夫と、その二歳上の姉しか残っていなかった。
47歳で産むときは、恥ずかしゅうて、生まれたらすぐに、どこぞへやるつもりだった……そうだが、
顔を見たら、可愛ゆうしてどこもやりきらんだったということで、溺愛された。
年寄りっ子の三文安の夫である。
結局、バアチャンは、どこぞへやるつもりだったこの恥かきっ子に最後の世話になった。
わからんものである。夫はバアチャンを風呂にも入れ、下の世話もした。
しかし、いずこの男も同じ。余計なことは言わない。
しみじみ話相手にはなるのはたまにくる姉のほうである。
鈴ちゃあ~ん、と心を通い合わせ、夫には言わない甘えを口にする。
そして、男の子しかいない、わたしに言ったものである。
あんたにも、おなごんの子がひとりおったらほんによかとになあ。
あれから50年、我が家の息子は親を気遣う優しい息子である。
不足を言ったらバチがあたると分かっていても、
娘がいて、女どうしのお喋りが出来たらどんなにいいだろうと思う。
病気になったとき、男の子には、パンツ買ってきてとは言えない。
おなごの子がひとりおったらなあ。バアチャンの名言をしきりに思うこのごろである。