風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

門司港駅

2012-07-30 22:44:08 | 旅行
      門司港駅は、現存する木造駅として国の重要文化財に指定されている。
   九月になると解体復元作業に入るので、数年間は、テントに覆われてしまうという。

       その前に行ってみたいが、連日、35度の猛暑が続き、
          熱中症で何人も死者が出ている昨今である。

        まあ、ふつうは、やめておく、というのが無難だろう。

            しかし、家にいても暑い!
       節電の夏で、エアコンの使用が罪のごとくに躊躇われる。

         いっそ、出かけるか……と思いたった。

       ところが、案ずるよりなんとやら、門司港駅まで、
     バスも電車も充分に冷房が効いていて、にんまりするほど涼しい。

      この時季、出歩く人間も少ないと見えて、車内は空席だらけで、
         ゆっくりしている。家にいるよりずっと極楽だった。

           レトロな街で、焼きカレーを食べて、
            トロッコ列車の「潮風号」に乗って、
         駅舎の中のレストランでアイスクリーム食べて、

                ウフフの一日だった。

電化製品

2012-07-27 23:14:42 | ショッピング
          電気釜が古くなった。
       使えないことはないが、そろそろ、買い替えたい。

         ガスレンジもだいぶ汚れてきた。
            新しくしたい。

        昔なら、電化製品の買い替えは心弾むものだった。

        今は違う。たったこれだけのことが億劫になった。

       この頃の電化製品は、うっかりすると、物を言ったりするからねえ。
   ゴハンがタケマシタ、タケマシタ……なんていちいちうるさく言わないだろうねえ。

   ガスレンジも、頼みもしないのに高温になると勝手にガスがとまるというではないか。

         しぶしぶ出かけた電器屋でまず炊飯器を物色した。
        これまで使っていたのは、10まで目盛りのある一升炊きだ。

     むろん、老夫婦二人だけだが、大は小を兼ねるというではないかと探すが、
          5.5のメモリはあっても10と言うのはない。

        何かさびしい。いつか、み~んなが集まったときに、
           一升炊いてモリモリ食べる……、
     もう、そういうことはありませんと引導を渡されたような気がする。

        「今度買ったらこれが私の人生最後の電器釜だわ」
   などと、電器屋さんが返答に困るような余計なことを言って心弾まぬ買い物をしてきた。

先生

2012-07-16 15:07:29 | ギター、映画など他
       風子たちの三重奏は、そもそも先生を外しては成り立たない。
           ギターのテクニック的なことのみでなく、
          三人の関わりにも、さりげないサポートがある。

      コンサートは、三人が勝手に思いついたが、むろん先生に指導を仰ぐ。

          で、私たちが、いつもどれだけお世話になっているか、
           どれだけあたたかいお人柄か……、
        当日舞台で、先生を紹介して、花束を贈呈する数分を予定に組んだ。
 
           進行表があるので、いきなり、というわけにはいかない。
            事前にこれをお見せしたら、先生は、難色を示した。

              ヤダ、ダメだ、と言われる。
             ぼくは裏方に徹すると譲らなかった。

             風子の仲良しが、あとで言ってた。
         風ちゃんたちは演奏しててわからなかっただろうけど、
       会場での先生のこまやかな気配りや働きはたいしたもんだった。
     ちょうど花嫁の父が、今日の結婚式が滞りなくすむように気をつかっている、
          そんな感じで、わたしゃ、先生見てて感動した。
 
             平均年齢70ウン歳の花嫁が三人もいては、
      お若い先生には気の毒だが、そうなんだよねえ、そういう先生なんです。

           自分たちの勝手な思いつきで企画したが、
         先生なくしては、とても当日は迎えられなかった。

       舞台の上でお礼を述べて、花束贈呈ですむようなことではなかった。

                 先生に、最敬礼!

わたし、聴くひと

2012-07-15 16:08:51 | ギター、映画など他
         あなた作るひと、わたし食べるひと……
        というテレビコマーシャルが昔、流行った。

             一流のプロならいざ知らず、
         風子ばあさんたちのようなお遊びコンサートには、
         「わたし聴くひと」の役がいないとなりたたない。

           風子のブログにちらりと宣伝したら、
      さっそく、いきま~すと、一番に声を上げてくれたのが、スズメさん。
     スズメさんは、風子のブログに熱心なるコメントを寄せてくれる応援団長である。


       団体の「聴くひと」ご一行様は風子の体操サークルの仲間たち。
      前から、一度聴いてみたいわあ、などとお世辞を言ってくれていたから、
          いまさら逃げられずにつき合ってくれた。

        十数名のご一行様は、いつもは、楽しいお喋りがはずみ、賑やかである。

       「いい、当日はね、静かに聴くのよ、お喋りしたらいかんよ」
              風子の老婆心である。

            それぞれ素敵なお洒落をしたご一行様は、
           みなさんとても良き聴衆をつとめてくれた。

               風子がお助けマンと呼ぶYさんは、
       付き人よろしく、最後の片づけまでして、車で荷物を運んでくれた。

               み~んな、み~んな、ありがとう!

冥土のみやげコンサート

2012-07-14 15:43:12 | ギター、映画など他
          今回のギターコンサートが間近に迫ったある日、
           指導して下さる先生に進行表を、見せた。

       受付がカナちゃんのお嫁さん、司会はクミちゃんのお嫁さん。

          先生は
       「ウハハハ 家族総出の冥土のみやげコンサートだなあ」と言われた。

           大事な休日に他人を助っ人には頼めない、
           この際、身内に甘えようという魂胆だった。

        お嫁さんを頼めば、息子たちも家でじっとはしていられない。
         早くから会場に来て、セッティングなど手伝ってくれた。
        連れてこられた孫たちも、プログラムの配布などよく働いた。
 
      司会のユキちゃんは、声も雰囲気も私たちの望んだとおりの品のある人で、
         短い打ち合わせにもよく対応してくれて、満点だった。

        さらに、これにさりげなくサポートを買って出てくれたのが、
             ギター仲間の Iさん、Tさん。
         心配そうに、息をつめて見守ってくれた多勢のギター仲間。

                  ありがとう、ありがとう。

         ほかの二人はいざ知らず、風子ばあさんにとっては、
   よき生前葬になったと位置づけて、今日も、百合の芳香に、にんまりとしている。

花束

2012-07-13 22:33:51 | ギター、映画など他
       家中に大輪の百合や真紅の薔薇があふれている。

         先週の日曜日、カナちゃんとクミちゃん、風子の三人で
           ささやかなギターコンサートを催した。
 
   思いたったのはいいが、無謀だったかと途中で少しばかり悔やんだこともある。
     
       なにしろ、風子ばあさんは、こう見えて上がり性である。
  これより二週間ばかり前にあった別の発表会で、リベルタンゴを弾いたときはひどかった。
 
        控えのロビーで、調弦をしているときからアガッテしまい、
          チューナーの針が見えなくなった。
 
         まずいなあと思いながら、舞台に出たら、
        案の定、のっけから一拍早く飛び出してしまった。
 
          何とかなるかと思ったが、なんともならず、 
     クミちゃんが、ぱたっと弾きやめて、すみません、と客席に向かって謝ってくれた。
 
            椅子の具合が悪いので、ちょっと、座り直しますと、
    クミちゃんは機転のきいたセリフでごまかし、三人ではじめから弾きなおした。
 
         今度はうまく調子にのれたと思っていたら、
          楽譜の三枚目まで来て、ぎょっとした。

          最終の四枚目の楽譜が広げてなかった。
       とっさにめくったが、その間に、一小節、ずれた。

             あれはさんざんだった。
   長く三重奏をしてきたが、あれほどひどかったことは後にも先にもなかった。
  いくら他の二人が上手く弾いても、ひとりがこければかくのごとくぶち壊しである。

             すまないねえ、ごめんねえ。
       百万回詫びを言っても言い足りぬくらいの切腹ものである。

             しかし、あのとき失敗したおかげで、
         今回はとにかくなんとか集中して最後まで弾きとげた。

 いまは、楽しかったのひとことで、花束に囲まれてまだ夢見心地の風子ばあさんなのである。

     クミちゃん、カナちゃんのおかげで、風子の人生は幸せなのである。
              二人にありがとうを百万回!

今生の別れ

2012-07-06 15:23:26 | 友情
       東京から来てホテルに滞在中の友だちと、博多駅で待ち合わせた。
 
      相変わらずの美人ではあるが、20年という歳月は隠しようもなく、
         道ですれ違ったら判るだろうかと首をかしげた。
 
    変貌はお互い様のはずだが、風子さん、変わらないわねえ、と言ってくれたので、
           あなたも、ちっとも……と言った。

       こういうときに、真実を語るのは、必ずしも誠実とは限らない。
     お互い、口に出すまでもなく、胸のうちは語らずとも分かりあっているのである。

           駅ビルのなかの中華料理店で食事をした。
          遠来の客なので、風子は奢るつもりでいたが、
            彼女は頑固なまでにワリカンを主張した。

           そうか、今生の別れになるかもしれないのに、
     カリを作りたくないのかもしれないと、彼女が望むようにワリカンにした。
 
          もうこれが最後かもしれない……、
       これも互いに口には出さず、またね、元気でね、と言い交わした。

        齢をとって、さようなら、と言う挨拶は寂しすぎる。

      店の外に出て、テーブルの横に傘を置き忘れてきたことに気付いた。
           ちょっと取って来るわと言うと、
        「いやあねえ、風子さんったら、オッホッホホ」と笑われた。
          
          今生の別れらしからぬ展開に、小さくなって店内に戻った。
         さっきまで座っていたテーブル脇の自分の傘に手をかけ、
             ふと足もとを見ると、
    ビニール袋に入った折りたたみ傘がもうひとつあるのに気づき、持って出た。

        「ひょっとして、これ、あなたの?」
        「あらあ。そうよ、わたしの」
     
     これもお互いさま。今生の別れが笑いでしめくくれて、よかった、よかった。

光陰矢のごとし

2012-07-05 10:17:28 | 日記
       外出から帰ったら、留守中に電話があったという。
      
        「誰から?」と訊くが、
        ジイサン、忘れた、と言う。 

        「どうしてメモしてくれなかったの」
        「メモすることを忘れた」

   腹はたつが、物忘れはお互い様だから、ここでジイサンをせめてもはじまらない。
        
         あんたの仲良しの友だちだったという。
     二、三年前に関東だか関西だったかへ引っ越して、今は遠くにいるという。

        ふうん~、二、三年前ねえ、思いあたらないなあ。
   だいいち関東と関西ではまるで違うでしょう、と言ってみてもこれまたはじまらない。

        痩せて美人だったと、そこだけやけにくわしい。
         よく電話で話してたじゃあないかという。
          思い出せないのかと言われても困る。
            判じものみたいな話である。


    突然、「あ、思いだした。××さんだった!」 とジイサンが声をあげた。

      いやあねえ、××さんが東京へ行ったのは二十年も前ですよ。
         そうかなあ、そんなになるかなあ。

       ついこの間のような気がするとジイサンに言われてみれば、
        たしかにその通り、ついこの間のことのようでもある。

      人生振り返ればまことに何もかもがあっという間の出来事である。