風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

デパート

2019-09-28 11:36:09 | ショッピング

 デパートは疲れるからめったに行かない。

先日、ギフトの用で久々に出かけた。早めにすませたくて、開店と同時にエスカレータに乗った。

すぐ前に高齢の女性とたまたま乗り合わせたらしい若い女性が喋っている。

 どうやら、二人は最上階の靴の売り出しに行く模様である。

「お元気そうですけど、おいくつになれらますか」

 若いほうがぶしつけに訊ねる。 いやあ、わたしも聞きたい。

 おばあさんは、高齢ながらモダンな模様のスカートをはいている、

 わたしなどもう忘れるほどに、何十年もスカートなどはいたことがない。

 スカートだから、当然ストッキングをはいている。

 びっくりしたことに、かかとは低いがなんとパンプスである。

 おいくつ? と聞きたくなるではないか。

 「94歳なんですよ」

 杖もついてない。ひとりで来た様子である。

 あれ~~である。話の様子では、靴の売り出しでお目当てのものがあるらしい。

はやるおばあさんに、「大丈夫ですよ、まだ早いから」と若い方がなだめている。

 走り出しそうなおばあさんに、度肝を抜かれた。

 94歳でまだ靴が欲しいというその前向きの姿勢。

 いやあ、たまには街に出てくるのもいいもんだ、

 こんなお婆さんを見ただけで元気が出ると

 大いに刺激された一日でした。


メイド・イン・パリ

2012-09-23 17:26:51 | ショッピング

              肌寒くなってきたので、ちょっと重ねる薄物を買った。
             

         店頭でマネキンが着ていたのは、色がイマイチなので、そう言うと、
            「グレーの素敵な色をお取り寄せできます」という。

              予算よりちょっとオーバーするので、思案していると、
            「パリ製です、パリからのお取り寄せになります」 とのこと。

                  ならば、少々お高くつくのもやむをえんねえ、
                    ということで後日受け取りにいった。

                        家に帰って広げたら、
               ミシン目は雑だし、ピンク色のチャコあとは消えていないし、
                         ひどいもんだった。

                      これで2万円とは、ぼったくりに近い。

                     なにが、パリ製ね、と腹立ちまぎれに
               タグを見たら、やっぱりメイド・イン・パリとは書いてある。

                 そうだねえ、パリも広いもんねえ、裏街の小部屋で、
           どこかの国の移民か難民かが、安い手間賃で縫いあげたものかもしれない。

                縫い目の印のチャコは、洗っても消えないけど、
               お針子さん、いまごろ少しは上手になったかしら……。

                          メイド・イン・パリ。

                   パリの空の下にもいろいろ事情がある。
                    あまり不満を言ったらバチがあたる。

                海の向こうに思いをはせて、大事に着ることにしよう。


電化製品

2012-07-27 23:14:42 | ショッピング
          電気釜が古くなった。
       使えないことはないが、そろそろ、買い替えたい。

         ガスレンジもだいぶ汚れてきた。
            新しくしたい。

        昔なら、電化製品の買い替えは心弾むものだった。

        今は違う。たったこれだけのことが億劫になった。

       この頃の電化製品は、うっかりすると、物を言ったりするからねえ。
   ゴハンがタケマシタ、タケマシタ……なんていちいちうるさく言わないだろうねえ。

   ガスレンジも、頼みもしないのに高温になると勝手にガスがとまるというではないか。

         しぶしぶ出かけた電器屋でまず炊飯器を物色した。
        これまで使っていたのは、10まで目盛りのある一升炊きだ。

     むろん、老夫婦二人だけだが、大は小を兼ねるというではないかと探すが、
          5.5のメモリはあっても10と言うのはない。

        何かさびしい。いつか、み~んなが集まったときに、
           一升炊いてモリモリ食べる……、
     もう、そういうことはありませんと引導を渡されたような気がする。

        「今度買ったらこれが私の人生最後の電器釜だわ」
   などと、電器屋さんが返答に困るような余計なことを言って心弾まぬ買い物をしてきた。

恥ずかしながら

2012-06-19 22:40:23 | ショッピング
         断捨離という言葉はあまり好きではないが、
        物にとらわれずに生きるのはカッコいいと思う。

      洗濯機もあることだし、ほんらい衣類などは数枚あれば事足りる。
     箪笥の引き出しを開けると、清潔に畳まれたシャツが二、三枚、というのが、
          風子ばあさんの理想の暮らしである。

       しかし、理想と現実はかけ離れているのが常である。

           風子ばあさんは、洋服が好きである。
          見たら欲しくなる。見ないでも欲しくなる。

    昨日も街に出たら、マリンブルーに白襟のかっこいいシャツが店頭にあった。

             すうっと身体が寄っていってしまう。 
         しかし、鏡の前であててみると、いささか若向きに過ぎる。
 
          店員は買わせようと思うから、そんなことはないという。
           
         「いや、これはちょっと無理だわねえ」というと、
         「では、こちらなんか……」
       と持ってきたのは、一転、歴然としたババア色、ババア型である。

          「なに、これ。おばあさん向きじゃない」
           言ってから、しまったと顔が赤くなった。
 
     74歳の風子がおばあさんでなくて、どこにおばあさんがいるというのだ。
      
          「今日はやめとこう」
      
      おかげで、昨日はひとまず箪笥のこやしをふやさずにすんだ。
          いくつになっても愚かなことである。


スニーカー

2012-05-03 10:06:34 | ショッピング
          水色か紫がちょっと入っててもいいけど、
          白がたくさんの「瞬足」ってスニーカー。

             これが孫娘からの注文である。
 
       はいはい、お安いご用とばかりに近所のショッパーズへ行った。
             このショッパーズ内に、
          三店も靴屋さんがあるのをはじめて知った。

        三店まわったが、サイズ23.5と19の二足、
          水色か紫がちょっとの「瞬足」なるものが揃わない。
     昔人間のばあさんは、デパートなら何でもあるだろうからとバスに乗った。

           三越で訊いたら、キッズ売り場を紹介された。
          キッズに23.5があるはずもなく、岩田屋へ回った。
         サービスカウンターであちこち電話をして調べてくれたが、
            「お取り扱いがございません」そうである。
            「ダイエーさんへ行かれたらあるかもしれません」
 
     敵に塩をおくるような案内はお見事で、教えられて、ダイエーにまわった。

            ここでも親切な店員さんに助けてもらい、
            紫がちょっとで白がいっぱいの「瞬足」を、
         サイズもばっちりにようやく手に入れることができた。

             たかがスニーカー、されどスニーカー。

ファックス電話機

2012-01-15 11:47:59 | ショッピング
       老齢とは罪もないのに罰を受けるに等しい、と
      誰か有名な人が言ったそうである。

       自分ではまだまだ……のつもりでも
      見知らぬ人から、ばあさん扱いを受ける。

       こういう場合、尊敬の念で接してくれることは少ない。
      たいがい、幼児扱いか、それに準ずる。

       昨日ファクス電話機を買いに行った。

      「なに探してんの?」
       店員が寄ってきた。

      「ファクスかあ。そうだなあ、これなんかどう?」
      タメくちというより、人をなめたナメくちである。

      「字が大きいよ、スピーカーの音量も大きくなるし」

       むむむ。
      風子ばあさんは、まだまだ文庫本が読める、
      玄関のピンポンだって聞き逃さない。
      大きなお世話である。

       おすすめのとは違う機種を買った。
      「え、お宅まで配送しないでいいの?」
       大丈夫、このくらい持てます。

      「設定とか行かないでいいの?」
       ええ、自分でします。

     ……というわけで、今から、これを取りつけないといけない。
ばあさんが意地を見せるのもなかなか大変なのである。

アシックスの靴

2012-01-12 22:59:07 | ショッピング
     夏のサンダルのオカダさんのことは、昨日ここに書いた。

    冬はアシックスのサルテスとペダラの中にお気に入りがあった。

    同じ紐靴を三足、スリッポンは二足、履きつぶした。

    買う店も、三越の地下、と決めていた。

     昨日、またそれを買いに行ったら、廃番になっていた。

      似たような、と勧められても、
     微妙に違うから駄目なのである。

      何で廃番にするのか! 
     ファンを大事にしなさいと店員に一席ぶってきた。

       申し訳ありません、伝えておきます、と店員は恐縮していたが、
      伝わることはないでしょうねえ……多分。



オカダさんのサンダル

2012-01-11 11:04:26 | ショッピング
       足腰の弱いものにとって、
     靴が合うか合わないかは大問題なのである。
 
       風子ばあさんは、
     夏のサンダルは、あとりえオカダ、冬はアシックス。
    苦労した末にようやくこれに落ち着いたお気に入りなのである。

        オカダさんの同じサンダルは、
       黒を三足、ベージュは二足履きつぶした。

       そのあと、ネットで注文しようと、
         ようやく見つけて、
       一生分で10足頼もうかと思ったが、
       いつまで生きるかわからないので、取りあえず5足にした。

   パスワードやらなんやら面倒なことをすませてほっとしていたら、
      翌日、オカダさんから電話がかかった。

       あれはご注文の24サイズでなく、
       23ならあるんですがとのこと。

      すでに廃番で、それ以外は入手できないという。
    23ならあるんですが、と言われても、こればかりはねえ。

       あのサンダルは風子の足に実によくなじみ、
      偉い人に会うときも、コンサートに行くときも、カンボジアへ行くときも、
      夏の間、ず~っと履いた。

      ああいうサンダルは、オカダさんの定番として、
     会社の存続するかぎり作り続けて欲しかった。
 
      電話があったときもそうお願いしたが、
     風子ばあさんがお願いしたくらいで、あちらも、
     ハイ、そうしましょうと言うわけにはいかないのだろう。 

    早く気づいて、一生分、10足? いやもう少し長生きするとして20足? 
   買いだめしておけばよかったと悔やまれてならない。

カップ麺

2011-12-26 14:54:33 | ショッピング
      スーパーの食品売り場へ行く機会の多いこのごろである。

      人さまのカートの中を覗きこむのは、はしたないことではあるが、
     つい目のいくことがある。

      痩せたおじいさんが、すがるようにして押すカートの中に、
     カップ麺一個、レトルトカレーひとパック、ひじき煮の惣菜一つ……。

      一人暮らしなんだろうなあ。
     奥さんは亡くなったのかなあ。
     もうすぐお正月だけど、誰も来ないのかなあ。

      想像力のたくましい風子ばあさんは、
     勝手に想像して勝手に切なくなってしまった。

   これが、おじいさんでなく、おばあさんだと
       またちょっと印象が違うだろうから不思議だ。

     カップ麺とおじいさんはどこか物哀しい組み合わせである。

        大きなお世話だけど。