風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

恥ずかしながら

2012-06-19 22:40:23 | ショッピング
         断捨離という言葉はあまり好きではないが、
        物にとらわれずに生きるのはカッコいいと思う。

      洗濯機もあることだし、ほんらい衣類などは数枚あれば事足りる。
     箪笥の引き出しを開けると、清潔に畳まれたシャツが二、三枚、というのが、
          風子ばあさんの理想の暮らしである。

       しかし、理想と現実はかけ離れているのが常である。

           風子ばあさんは、洋服が好きである。
          見たら欲しくなる。見ないでも欲しくなる。

    昨日も街に出たら、マリンブルーに白襟のかっこいいシャツが店頭にあった。

             すうっと身体が寄っていってしまう。 
         しかし、鏡の前であててみると、いささか若向きに過ぎる。
 
          店員は買わせようと思うから、そんなことはないという。
           
         「いや、これはちょっと無理だわねえ」というと、
         「では、こちらなんか……」
       と持ってきたのは、一転、歴然としたババア色、ババア型である。

          「なに、これ。おばあさん向きじゃない」
           言ってから、しまったと顔が赤くなった。
 
     74歳の風子がおばあさんでなくて、どこにおばあさんがいるというのだ。
      
          「今日はやめとこう」
      
      おかげで、昨日はひとまず箪笥のこやしをふやさずにすんだ。
          いくつになっても愚かなことである。


主婦の座

2012-06-17 01:37:16 | 家族
          風子ばあさんには、二人の弟がいる。
         どちらも脱サラのあと、自営業に転じた。

        どちらのお嫁さんも、サラリーマンと結婚したのであって、
        夫が事業を起こすなどは、夢思わぬ成り行きであったろう。

     零細企業のならいで、どちらもヨメサンがすぐに戦力としてあてにされた。

     下の弟嫁は、さっそくパソコンを駆使して、経理税務等、弟を助けた。
          一方、上の弟のところは、
 「あれは駄目だよ、得意先や銀行へ行かせると、帰りに必ず大根ぶら下げて帰ってくるんだよ」
         ということで、以来、花子さんは、子育てと家事に専念した。

     どちらも、この不景気な時代をなんとか生き抜いて、そこそこの企業に育った。
       下の弟のお嫁さんは、今や会社にとってなくてはならぬ存在となり、
          月月火水木金金の超多忙な日々をおくっている。
         これはこれで張り合いはあろうが、中々大変である。
 
      ところが、上の弟嫁の花子さんの方は、あれ以来、主婦の座にいて、
     今日は温泉センター、明日はショッピングの毎日で、優雅なものである。

    今にして思うに、大根ぶらさげて、「あれは駄目だよ」と弟に思わせたのは、
        もしかしたら花子さんの作戦勝ちだったかもしれない。

          人は、とかく頑張って見せたいものだが、
        ときには頑張らないほうがいいこともあるのかもしれない。
 

うちの女房にゃヒゲがある

2012-06-13 17:56:32 | 日記
        がんらいが臆病な上に不器用である。
      剃刀で顔をあたるという普通のことが怖いのである。

     で、どういうことになるかと言えば、うちの女房にゃヒゲがある、となる。

      皺ばんだ梅干し状の口の周りにはいつもうっすらとヒゲが生えている。
         貧相な眉もまだらにのびたままということになる。

        あるとき、見かねた体操の仲間が、剃刀を持参して来て、
             剃らせてくださいという。

      みんなに取り囲まれて座り、顔をあたられたのはちょっと恥ずかしかったので、
         以来美容院へ行ったときは眉カットをしてもらう。

      ただし、口のまわりは美容師はしたらいけなくて、理容師ならいいそうである。

         ついでにちょっと……というわけにはいかないところが
            まったく融通の利かない話である。

            初コメくださったこま子さん、
           顔そりはどうしていらっしゃるのかなあ。


           ごぶさたの風子ばあさんをお気づかいいただき、
             こちらが「じんわり」でした。