昨日の花火大会の花火と稲光の写真が西日本新聞に載っていた。
やはり、フィナーレの花火を最初にあげて45分間で終了したとのことだった。
今日は暑くて外に出られず、本を読んで過ごす。
ふつう、二冊を同時に読み進めることはしないし、出来ないが、
この二冊はまるで違う世界なので、それができる。
平安の恋物語に飽きると、平成の老人物語の頁に戻る。
昨日の花火大会の花火と稲光の写真が西日本新聞に載っていた。
やはり、フィナーレの花火を最初にあげて45分間で終了したとのことだった。
今日は暑くて外に出られず、本を読んで過ごす。
ふつう、二冊を同時に読み進めることはしないし、出来ないが、
この二冊はまるで違う世界なので、それができる。
平安の恋物語に飽きると、平成の老人物語の頁に戻る。
やがて消えていく桜、夕焼け、蛍、花火。
はかなさは生きているのか、死んでいるのか、あるのか、ないのか。
その両方を切り結ぶ重要な概念。
人の心には表の役を演じる自分の裏の楽屋がいる。
楽屋での無意味な充実、それは温泉かもしれないし、河原や海かもしれない。
(きたやま おさむ コブのない駱駝より)
親しみのある柔らかい色と線が魅力的な絵本作家として
その名を知ってはいたが、その生い立ちもその後の彼女の背景も
これを読むまで知らなかった。
無収入の夫、松本善明が弁護士になるまで、
いっさいの家計を筆一本で支え続けた。
社会派の思想家としてのたくましさと、母としての包容力と、
ちひろの絵の奥にある世界を覗きみたような気がする。
著者 松本猛はちひろの一人息子である。
講談社 1800円
とても大きな文字ですから、年寄りでも読めます。
在るものはなくなる……、
とはじまる大正7年生まれ、99歳になる画家のつぶやきは、
「私が私のために生きられる世の中であってほしい」と願い、
「戦災は人災です。戦争は他殺です」と断じる。
○ 私を突き動かしているのは充たされぬ思いではなかったか。
○ 物を創る人間は、一人でいることを自分に課さなくてはならない。
○ 人間は究極には一人。
○ 自然が起こした天災地変はある意味平等だが、
戦争は人間が造るもの、だから反対しなきゃ駄目なのです……に共感。
小学館 1300円
福岡県の53自治体の中で、図書購入費が一番低いのが福岡市だと聞いて、
随分待たされることへの納得がいった。
この本も、忘れたころに貸出オーケーを知らせてきた。
あまりの分厚さに、期間中に読みおおせるかと心配したが、
面白くて、久々に首が痛くなるくらい夢中で読んだ。
時は日中戦争のさなか、舞台は上海。
主人公は工部局公安課勤務の警察官、芹沢一郎。
ふとしたことから陸軍参謀本部の嘉山少佐にはめられて
上海の黒幕との橋渡しをさせられる。
阿片中毒の元女優の黒幕の妻、ロシア人の男色美少年。
長い物語の紹介は出来ないが、これだけの人物が登城して面白くないはずがない。
いきがかり上、二人を殺し、殺人犯として追われる身になった芹沢だが、
戦後も生きのびたエピローグまで一気に読んだ。
国家は国民の財産も命も徴用してよいという国家総動員法が本会議で、
可決された昭和13年前後の話で、国民の代表で構成される議会が承認したのだから、
国民総意の総力戦に突入したということになる。
歴史は繰り返す……にならねばよいのだが、と孫や子の行く末を案じる昨今である。
新潮社 5400円
38歳の女流作家が主人公。
離婚歴があり、目下恋人と同棲中。
自分が正しいという思いこみの強い母との確執。
「放蕩記」というほどの放蕩はどこにもなかった。
図書館で 21名待ちでようやく借りたけど。
集英社 1600円
「火宅の人」 檀一雄
1975年発行だから、ずいぶん古い本だが
当時、映画にもなったベストセラーである。
妻子ある作家が愛人と過ごした数年間が描かれている。
書きだしの
「第三のコース、あ、飛び込みました」
と、プールで泳ぐさまを父がつたえると、
寝た切りの我が子がよろこぶ場面が読み返したくて再読。
再読ついでに、
「檀」 沢木耕太郎 1995年 新潮社 1500円
これは「私」と一人称で描かれた「火宅の人」の妻の立場である。
「火宅の母の記」 高岩とみ 1978年 新潮社 800円
こちらは、長男一雄はじめ三人の子を置いて家を出た母の記である。
「人間 檀一雄」 野原一夫 1986年 新潮社1300円
これは檀一雄と親しかった編集者が書いた評伝である。
ついでにあげれば、
「檀一雄の光と影」 入江杏子 1999年
こちらは「火宅の人」の愛人のモデルとなった女優が書いているがこれは読んでいない。
老齢の好色は命の賛歌である、と書く著者は1942年生まれ。
年をとると、昔できたことが出来なくなる、
大事なことを忘れる、全力で走れない、すぐトイレに行く。
やたらと屁が出る。
どれもこれも面白いじゃないですか、と笑い飛ばす
「早く今が昔になればいい」という境地らしい。
しかしなあ、著者よりずっと超高齢のワタシラの境地には
いやあ、まだまだ……ですなあ。
「竹林に旧年ひそむ峠かな」 橋本鶏二
新講社 1400円
平成22年、名著復刊で、32年ぶりの復刊。
大森馬込の古本屋さんが
正宗白鳥、尾崎士朗、尾崎一雄、上林暁、野呂邦暢、多くの文学者との交流や
日々の思いを綴っている。
「本」に寄せる著者のその思いの篤さが読んでいて心地よく伝わる。
上林暁を初めて訪ねたとき、署名を願ったら、
「本を愛する人に悪人はいない」と書いてくれたとある。
尾崎士朗が危篤になり、
「おれの好きだった歌を唄ってくれ」と言うので
誰からともなく「桜井の駅」が歌われたが、実は彼が歌ってほしかったのは
「白虎隊の歌」だったとか。笑いもいっぱい。
「虫のいどころ」には、声を出して笑った。
厠の5燭の電燈を消されたことからの夫婦喧嘩の顛末。
5燭とは懐かしい。
30数年前に書かれた本が、今読んでも少しも古びていないどころか
心にのこる「昔日の客」だった。
夏葉社 2200円
題名は、自転車に乗って旅をしたら、下り坂になるとラクなので、
そうか、人生も下りになるのがいいんだと思うところからついた。
以下、脈絡なく、本分から。
「原稿はすべて手書きである。忘れた漢字は辞書を引いて調べ、一字一字原稿用紙に書きつけていく。
思考するときは文字を書く。パソコンを使うと思考が蒸発してしまい、蓄積されない。文字を書いて思考する」
謝罪会見について。
申し訳ありませんでしたというところでいっせいに頭を下げる。
「このとき、頭の下げ方が揃っていないと見栄えが悪い。
ひとりが下げ遅れると、見ているほうは、ダラケておるな、と腹をたてる。
ぴたりとあって頭を下げればすっきりする。まだらはげもいい。
あれは、控え室で予行演習をしているはずだ。
頭を下げるきっかけを責任者が、セーノと声をかけるわけにはいかず、アウンの呼吸でいっせいに頭を下げる。
それには稽古が求められる」
「男と女が、短い一生のあいだに幸福でいられる時間は限られている。
どれほど仲のよい夫婦でも、賞味期限があり、期限切れを我慢しているうちに家庭内離婚となる」
「さて、あと何年生きるかわからぬが、風雅に行きたいと考えた。
ところが風雅というのは、やってみると退屈する」
というような事が書いてありました。