風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

110番

2010-07-20 16:23:52 | 時事
 暴力はいけない、まして無抵抗な赤ちゃんへの暴力など許されるわけがない。分かり切ったことである。
それを承知で、だが、しかし、である。
 
 少し前に、一歳児のわが子の後頭部を叩いたとして、三十代の夫が暴行容疑で逮捕されるという事件があった。
 110番したのは、同じ三十代の妻である。
夫婦喧嘩のあげく、妻への腹いせに子供を叩いたと夫は供述しているらしい。
 平手で一発とあるし、子供に怪我はなかったというから幸いである。

 おそらく、夫婦喧嘩のあげく、夫は、かっとして子供を叩き、妻もまた、かっとして、警察に言ってやるゥ!、とかいうことになったのであろう。
 夫は新聞に実名が出たから、会社も首になったかもしれない。いや、温情ある雇い主で、無事に勤務しておられることを祈る。
  
 暴力は悪い、悪い……が、何を隠そう、風子ばあさんだって、息子たちが小さかったころ、一度ならず、頭のひとつやふたつ小突いたことはある。
 夫は一一〇番をしなかったが、出ていけ! とは怒鳴った。
 今は、「出ていけ」も、言葉による暴力のひとつなのだという。

 風子ばあさんが、まだ可愛いフーちゃんだったころ、夫婦喧嘩のあとは、泣きながら実家の母に訴え、子供と一緒にデパートの食堂へ行き、気晴らしに美味しいものでも食べて、わざと夕方遅く帰ってきた。
 まだ、むっと怒った顔をした夫の、しかし、妻子が帰ってきたことで、内心、ほっとしたような、すまなそうな顔をみて、それでひとまず一件落着となったものである。
 
 なんでも警察沙汰というのもどうかと思うし、それがすぐに新聞沙汰になるのも、風子ばあさんはまたどうかと思うのである。