咳止めを飲み、のど飴を持ち、クッションを抱えて映画へ行った。
風邪気味のオバアサンは、映画ひとつ観るのも大変なことなのだ。
そうまでして観た映画は、
「25年目の弦楽四重奏団」というアメリカ映画で、
長年、四重奏団の仲間だったチェリストが、
病に侵され、指が震えてチェロが弾けなくなり、
最後の舞台で去るところまでの話なのである。
楽器こそ違え、私たちギターの仲良しバアチャン三人で
それを観に行く約束をしたので、風邪を押しても行きたかったのだ。
私たちも、楽器の適齢期はとうに過ぎて、
ただ三人一緒が楽しいだけで三重奏を続けているが、
いつまで出来ることかという思いは常にあり、
映画「四重奏団」と重ねて、涙がとまらなかった。
三人がそれぞれのパートを受け持ち、
ひとつの曲を心をあわせて仕上げていく過程は
ほんとに3人にだけ分かる幸せなのだ。
いつか終わりがあるのはわかっていても、
また来週ね、と言える今日を喜ぼうね、と言って別れたことである。