夜の9時過ぎになって、近くの友人が訪ねてきた。
雨も降っている。
「どうしたの? 今ごろ……」
「風子さん、今日もどこか出かけてたね、三回も来たけど留守だった」
「なにごと?」
「いやあ、昨日千円借りたから」
二つ折りにした封筒を差し出された。
「なにも今夜でなくたっていいのに。水くさいねえ」
いつも車に乗せてくれるし、おかずはわけてくれるし、
肩が凝れば揉んでくれるし、彼女は風子ばあさんの良き助っ人である。
姉妹同然のつきあいである。
ほんとに千円くらいどうでもいい仲なのである。
「いやあ、そういうわけにはいかない。
お金のことだけはきちんとしとかないとね、
忘れるといけないからね、気になって」
「それはわざわざどうもどうも」
というようなことで、封筒を受け取り、……またね、とバイバイした。
ひとりになって取りあえず封筒の中を覗いた。
ない! 封筒の中がカラッポである。
うふふふふ……。 なんだか笑いがとまらない!
ちなみに彼女はまだ呆けてるわけではない。
しっかり者の彼女でもこういうことがあるのだとおかしい。
こんな雨の中持って来てくれたんだもの、
中味なかったよ、なんて言えない。 言わない。
たぬきの木の葉っぱじゃないけど、もらったよ、たしかに。
わざわざありがとう。たまにはこういうこともあります。
一万円でなくてよかった!
雨も降っている。
「どうしたの? 今ごろ……」
「風子さん、今日もどこか出かけてたね、三回も来たけど留守だった」
「なにごと?」
「いやあ、昨日千円借りたから」
二つ折りにした封筒を差し出された。
「なにも今夜でなくたっていいのに。水くさいねえ」
いつも車に乗せてくれるし、おかずはわけてくれるし、
肩が凝れば揉んでくれるし、彼女は風子ばあさんの良き助っ人である。
姉妹同然のつきあいである。
ほんとに千円くらいどうでもいい仲なのである。
「いやあ、そういうわけにはいかない。
お金のことだけはきちんとしとかないとね、
忘れるといけないからね、気になって」
「それはわざわざどうもどうも」
というようなことで、封筒を受け取り、……またね、とバイバイした。
ひとりになって取りあえず封筒の中を覗いた。
ない! 封筒の中がカラッポである。
うふふふふ……。 なんだか笑いがとまらない!
ちなみに彼女はまだ呆けてるわけではない。
しっかり者の彼女でもこういうことがあるのだとおかしい。
こんな雨の中持って来てくれたんだもの、
中味なかったよ、なんて言えない。 言わない。
たぬきの木の葉っぱじゃないけど、もらったよ、たしかに。
わざわざありがとう。たまにはこういうこともあります。
一万円でなくてよかった!