風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

お賽銭

2011-01-21 18:13:29 | 時事
 ついでと言っては神様に大変失礼だが、九州国立博物館、ゴッホ展の帰りに太宰府天満宮に寄った。
受験シーズンでもあり、相変わらずの賑わいではあったが、どうにか賽銭箱の前まで進み出た。
 
 風子ばあさんにしては、奮発して500円玉を投げた。

あいにく賽銭箱の中に落ちず、桟のふちにひっかかってしまった。
入り損ねた賽銭は他にもあり、見ると、折った1000円札もすぐそこにとどまっていた。

ゲンをかつぐわけではないが、ま、このさい、と、今度は100円玉を投げたら、うまくチャリンと中に入り、ほっとした。

 そんなわけで、いつもならしげしげと見ない賽銭の行方を仔細に眺めていた。
そのときである、となりで神妙に手を合わせていた男の手がふいと伸び、賽銭箱のふちにひっかかっていた千円札をひょいとつまみあげた。

 見事な早技だった。

 袖をつかんで、賽銭泥棒! と叫べば叫べる距離だったが、なぜか咎める気にはなれなかった。
ホームレスという風情ではなかったが、男のジャンバーの裾からは糸が垂れていて、ズボンの膝が丸くなっていた。

 おじさん、よかったね、神様のお恵みだよ、と風子ばあさんはこっそり思ったが、さて賽銭を入れた当人のご利益はどうなるのだろうか。

 神のみぞ知る……ということにして、 神様、この世知辛く寒い時代です、どうか許して上げて下さい。

                              2011年1月21日

新年会

2011-01-05 11:09:39 | 友情
 仲良しばあさん三人で新年会をすることになった。
 どの店にしようか? と楽しい相談だが、なかなか店の名前が出てこない。

 風子ばあさんが、あそこ……、と言った。
 ばあさんの頭の中にはすでにその馴染みの店の様子が浮かんでいるのだ。
しかし、店名が思いだせない。

 二人目が、うん、ロシア料理だね、と、こちらも分かっているらしいが、もどかしい。
 三人目、グランドホテルの前だった……。

 三人とも瞼の裏に店内の模様も、アツアツの壺焼きのカップも浮かんでいるのに、店名が思い出せない。
 しばらく顔を見合わせていたが、ついにその店の名前を思い出させないまま、「あそこ」に決まった。
 
 ばあさんは、ばあさん同士が気楽でいいのである。

 あけましておめでとうございます。              風子ばあさん
                  
                     2011年1月5日