「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

無差別殺傷衝動は 僕にもあった……

2008年11月23日 14時05分45秒 | 僕と「ジャン=クリストフ」
 
 「 元厚生次官を殺した 」と、 男が警視庁に 出頭してきました。

 この男が 本当に犯人か、何かに対する 怨みが動機なのか、

 まだ分かりませんが、 6月の秋葉原での 無差別殺傷事件が彷彿させられます。

 秋葉原の加害者は、 自分の不運な境遇や、

 周囲から疎外されたことに対して、 社会全体への怨みを 募らせていきました。

 孤立が あまりに高まると、 直接の引き金は 身近な出来事だったとしても、

 怒りや憎しみの対象は 不特定多数の世の中に なっていってしまいます。

 自分対社会という 対立の構図になってしまうのです。

 実は僕は、 この加害者と 同じような感情を 抱いたことがあります。

 道行く人を、 無差別に殺傷したい という衝動を……。

 それは 僕が27才のときのことでした。

 拙著 「境界に生きた心子」 でも 少し触れましたが、

 僕は人生最大の 挫折の危機にあり、 泥沼の底を のたうち回っていました。

 失恋と 創作上の価値観の崩壊が 相まって、

 それまで自分を支えていた 全てを失い、

 苦しみと憎しみに 長いあいだ 責め苛まれていたのです。

 苦悶のあまり 胸が押しつぶされて 呼吸もままならず、

 一刻も早く この場からいなくなりたい, 存在をなくしたい

 という欲求に駆られました

 道の両側の建物が 赤錆びた廃墟となって、

 僕にのしかかって来る 妄執に襲われます。

 街を歩いている 人間たちは、 無機質の塊のように 感じました。

 正に 異常な精神状態でした。

 自分がこれほどまで 苦しんでいるのに、

 安穏と過ごしている 人間たちを見ると、 激しい憎悪が 沸き上がってきました。

 道ですれ違う人 (塊) を 殺傷したいという 恐ろしい衝動と、

 僕は 闘わなければなりませんでした。

 実際に刃物を手にして 実行するには まだ距離があったものの、

 その妄動を 僕は現実に抱いたのでした。

 上記の加害者が、 僕ほど異様な 地獄の中にいたとは 思えませんし、

 彼らの行為は 言うまでもなく 決して許せない犯罪です。

 しかし、 不特定多数の人間に対する 殺意というのは、

 僕には 理解できてしまうのでした。

 この機会に 当時の僕の体験を、 今日から 書いていってみようと思います。

( 昔、あるセミナーで発表したときの 原稿を元にしています。 )

(次の記事に続く)
 


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