
大失敗である。初めて観る映画は地上波ではだめだ……とわかっているのに。やっぱりひどいもので、こんなことなら途中で観るのをやめてレンタルビデオにするかDVDを購入して見た方がましだった。
先日金曜日、日本テレビで放送された「アバター」は、ノーカットということで放送枠は3時間19分あり、期待していた。ところが、とてもノーカットとはいえない編集で、せっかくすごい映画なのにがっかりさせられた。
民放にとって番組とは、コマーシャルを包む包装紙である。コマーシャルを見せることを目的に番組を作るのだ。すなわち、視聴者は豪華にパッケージされたコマーシャルを見せられている、と思っていい。だから、番組を無料で見られる我々が文句を付ける筋合いではないかもしれない。
それにしても、である。まず、ノーカットの意味はテレビ局側と映画ファンとでは大きく異なるようだ。局にすれば、冒頭のクレジットやエンドロールなどは本編ではないからカットしても「ノーカット」といってさしつかえないと思っている。ところが、映画ファンにすればそんなものを「ノーカット」といってほしくない。特にエンドロールは重要だ。本編が終ってバッツンと切られるほど悲しいことはないだけでなく、エンドロールには映画の重要な情報が含まれていることが少なくないからだ。しかも、「アバター」ではエンドロールの背景に映像がある。普通に考えてもカットはできない部分である。それをカットするのに気が引けたのかどうか知らないが、本編が終ったとたんにタレントの無用なおしゃべりがはじまって、画面の右下の小さな枠にエンドロールを流すという姑息なことをやった。
タレントのくだらないおしゃべりとどちらが大事だというのか。
コマーシャルの入れ方にいたっては、ど素人以下だ。一気に見せるべきシーンの途中で突然フェードアウトしてコマーシャルになる。そのくせシーンの切れ目でここならコマーシャルを入れやすいだろう、という個所は通過している。配置もでたらめである。つまり、映画の進行内容にかかわらず、コマーシャルの放送時間をあらかじめ先に決めているからなのだ。
営業がスポンサーと交渉するとき、「◯◯時◯◯分頃に放送します」とあらかじめ伝える。一つの番組のなかでも、前後真ん中と、放送時間帯によって注目度が異なるからだ。しかし、営業がスポンサーに売り込みにいった時点では編集が終っていないことが、普通によくある。かといって、莫大な広告料を払ってくれるスポンサーとの約束を勝手に変更はできない。だから、多少変でも強引にコマーシャルを挿入してしまうということが起きる。それでもベテランの技術者なら違和感なくできるのだが、最近は専門学校を出ただけで一人前面をしている、理屈ばかり達者で未熟な技術者が多い。
さらに、コマーシャルの前後は本編がフェードアウト、フェードインになっていて、その部分は当然本編に食い込み黒身が入る。白身は本編外だが黒身は本編ということになっているから、当然フェードアウト、フェードインでつぶされた部分は本編扱いだ。これではせっかくの大作がもう、ぼろぼろである。
たぶんテレビ局のなかに映画を愛する人間がほとんどいないか、上層部の人間がほんとうに包装紙としか考えておらず、数字さえ上がれば視聴者がどう思おうと知ったこっちゃない、ということなのだ。こんなことでは、地上波の映画番組はいずれ視聴者から見放される。最近はCSやBSでほんとうのノーカッットやっているので、どうしてもそれと比較される。もう少し意識を高める必要があるのではないか。
これは映画ではない、映画を素材にしたバラエティーだ、と思った。
◇
文句が長くなった。少しだけ映画について話そう。
この映画、ひとりで観に行くのに気が引けて、カミさんとスケジュールをあわせているうちに見損なってしまったのだ。評判を聞いて、見逃したことを後悔していた。WOWOWでやったらしいが、ウチは契約していない。
ストーリーは、資源を枯渇させた人類が、他の星に資源を求めて侵略していく話である。
その星の先住民そっくりのアバターという人造人間を送り込み、情報を得たうえで武力で侵略する計画だ。
アバターとは特定の人間の意識を遠隔操作でリンクさせて、その人間が人造人間のなかに入り込んだように活動する。
しかしアバターは、先住民と馴染むにしたがって、この侵略がきわめて非人道的な行為であることに気づき、反旗を翻す。
当初、「印象が悪くなるから」と先住民の殺戮を躊躇していた人類の軍隊も、抵抗されることがわかったとき、「ゴキブリを退治する」と、重火器を使って森を焼き払い、先住民の殺戮を開始する。
この物語の先住民の隠喩はあきらかにネイティブアメリカンである。そしてこれは、日本の中国大陸侵略にも通じる。
アメリカという国は、資源と新天地を求めてやってきたイギリス人の手によって、先住民が大量に虐殺され、その暴力行為によって奪い取られた土地の上に作られたことはだれでも知っている。資源に乏しく不況に喘ぐ日本も、広い大地と豊かな資源を求めて満州国を作った。日本の場合はアジア太平洋戦争の敗戦と中国の「抗日運動」によって排除されることになるのだが、アメリカは白人の国として建国されてしまった。
しかし、「アバター」が日本映画だったらどうだろう。大ヒットどころか右翼に脅されて上映すらままならないかもしれない。
映像は見事である。実写は司令部のシーンと地球人だけで、それ以外はほとんどすべてCGというのにもおどろかされた。登場人物は当初、特殊メイクとボディペインティングかと思っていたら、実写をトレースしたCGだという。「ロード・オブ・ザ・リング」のCGは違和感を覚える個所が多々あって、あまりいい気分ではなかったが、「アバター」は「やられた!」と脱帽した。
ところで、「アバター」のDVDとBlu-rayには3種類の編集版があるそうだ。劇場公開版に未公開シーンが加えられた「エクステンデッド・エディション」と、どういうものかわからないけれど、「特別版」というのもある。近々「エクステンデッド・エディション」を購入して、あらためて観なおそうと思う。
これはやっぱり、DVDではなくBlu-rayだろう。DVDではあの映像の美しさは表現しきれない。ただ、Blu-rayはメーカーにより、ときどき再生できないことがあるらしい。今のところ我が家ではそういった不具合は生じていないが、購入の際は注意が必要だ。
◆~~~~◆~~~~◆~~~~◆~~~~◆~~~~◆
(PR)【GALLAPからのお知らせ】
自費出版承ります
●自費出版、企画出版、書店流通。
*編集から流通まで、責任持ってすべて引き受けます。
■ご相談は無料です。まずはメールで galapyio@sepia.ocn.ne.jp まで。
★ライティング & エディトリアル講座 受講生募集中★
●個別コンサルティング承り。当オフィス、またはスカイプ利用でご自宅でも受講できます。
*1ヵ月2回コース~12ヵ月24回コース。(1回60~90分)
●出張講座承り(1日4~5時間)
■ご相談・詳細はメールで galapyio@sepia.ocn.ne.jp まで。