monologue
夜明けに向けて
 



犬塚健市氏の退院に際して、わたしはなにかできることはないか、と考えた。病院で一番のイベントは退院なのにそれに見合ったことができない。歌でも歌ってあげたかった。
誕生日なら「ハッピーバースデイ」を歌って祝福できるけれど退院する患者さんに対して祝福する歌がない。ヘルパーや看護師はどれだけ仲良くなって気持ちが通じ合ってもそれをうまく表現することができずただ「おめでとう」や、「お元気で」といって送るだけで秋に枯葉が落ちたあとの寂しさを感じる。わたしは「おめでとうございます、これから素晴らしい余生をお過ごしください」と声をかけたけれど犬塚氏が去ってしまうとやっぱり置き去りになったようななにかを失ったような感覚を覚えた。歌でも歌って祝福して楽しく送ってあげたかったけれどその祝福する歌がないのなら自分で作らなければと思ったのである。
fumio

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