monologue
夜明けに向けて
 



犬塚健市氏(ワンちゃん)が退院して抜けたあとの入口左のスペースに他の病棟から移動してきたベッドが入ったので病室の入り口の名札で確認すると「木村玉雄」とあった。

作曲ソフトに織物を織るように音符と歌詞を打ち込んで、退院する人を祝福して送る歌「きみよ、幸せに」の1番がやっとできあがった、11月6日の朝、担当の照屋恵看護師が近づいてきてわたしが毎日、パソコンに向かってしていることに興味を示したので、退院する人を祝福して送る歌を作っている、と説明してイヤフォンで聴いてもらった。作曲ソフトの譜面の音符と歌詞を見ながら聴き終わると感動したといって泣いていた。病院で働く人の胸には実感をもって迫るようだった。
リハビリにやってきた川上政孝PTにも制作中の曲と説明して聴かせると「名曲の誕生につきあっている」と反応が良かった。それからその夜ウトウトしながら2番の歌詞にとりかかった。翌7日(土)一日中、2番と間奏などをまとめてその夜中にその歌「きみよ幸せに」がほとんど完成した。それで8日日曜の朝、夜勤明けの照屋看護師に聴いてもらった。
するとその日担当の吉田ゆう子看護師が、木村玉雄氏が11時前に退院するというので、退院する人を祝福して送る歌を作ったから歌うと説明してパソコンのイヤフォンを抜いて音を出してパソコンをカラオケにしてできたての「きみよ幸せに」を歌って祝福した。どこから聞いてきたのかその時、病室の外の廊下は看護師、療法士、ヘルパーのみなさんが鈴なりになって聴いていた。それが初めてのパフォーマンスだった。木村玉雄氏は歌ができあがるのに合わせてやってきてその歌に送られて風のように退院していったのである。なにか用意されていたシナリオをわたしたちが演じたようで不思議といえば不思議…。
fumio

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