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monologue
夜明けに向けて
 



  わたしが一番影響されたマンガといえば白土三平の「忍者武芸帳影丸伝」である。テレビの普及以前、庶民の娯楽のひとつに貸本 があった。銭湯の帰りなどに貸本屋に寄って娯楽小説雑誌やマンガ雑誌などを借りて帰るのである。そんな貸本マンガから劇画というジャンルを生み出す、さいとうたかをの「黒い子猫」や「台風五郎」シリーズがわたしのお気に入りだった。「街」や「影」といった劇画的マンガを掲載する雑誌が創刊廃刊を繰り返すうちに時代の要請か「少年王者」で一世を風靡した山川惣治の流れを汲む白土三平が紙芝居の絵から貸本マンガへ転進してきたのだ。かれの大作「忍者武芸帳影丸伝」の持つ思想性に学園闘争に明け暮れる当時の学生たちは圧倒され影響された。わたしは大名・武家や僧侶といった支配者層の弾圧政策に対する百姓、被差別民の解放運動、土一揆一向一揆に眼を開かれた。それをサポートする歴史の表には描かれることのなかった忍者達の影の戦い。1967年に大島渚監督が、白土三平の絵をそのまま映す実験的技法で映画化したのもうなづけた。実写で役者を使うよりリアルに伝わると考えたのだろう。
fumio

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