monologue
夜明けに向けて
 



現在、オバマ大統領が国民健康保険問題で戦っている。がんばってほしい。先進国で国民みんなが入る健康保険がないのはアメリカだけである。その点ではまだ後進国なのだ。自分で高いプライベート健康保険に入れる層はいいけれど貧民層は健康保険なしに病気の不安を抱えて暮らしている。歯が痛くても実費で高いので歯医者にも行けない。

 ある日、わたしたち夫婦が買い物から帰ると息子が倒れていた。どうしたのかと思うとなにかをノドに詰まらせたようだった。いつも小銭を置いてある棚に登って25セント硬貨を口に入れて飛び降りた拍子に呑み込んだのである。口を開けて取り出そうとしてもうまくゆかない。水を飲ませたり逆さまにして揺すってもダメ。考えられることは全部試したけれど無理だった。しかたなくLAチルドレンホスピタルに運び込んだ。

 しばらくすると黒人の先生がやってきてまず丁寧に自己紹介してから、簡単な手術して取り出すからと了承を求める。それで誓約書にサインした。かなりきつく詰まっていたらしく1時間近くかかって終了した。

 その後、何日かしてビル(請求書)が届き始めた。一括ではなくLAチルドレンホスピタルの受付やかかわった色々な部門から次々に来るのだ。そのたびに支払いチェックを送って結局手術代を合わせて支払いは全部で1万ドルほどになった。ノドに詰めた25セントが1万ドルに変貌してしまったのである。あの時、国民健康保険があればと今さらながら思ってしまう。
fumio

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