monologue
夜明けに向けて
 



 米国シカゴにチェス・レコード (Chess Records)というブルース、リズム&ブルース系のレコード・レーベルがある。マディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフ、チャック・ベリー、エタ・ジェイムズなどが在籍し、そこのチェス スタジオでレコーディングしているのでイギリスのミュージシャンたちもその音を求めてレコーディングに来るようになった。ローリングストーンズもセカンドアルバムを録音して成功した。スタジオにはそれぞれ独特の音がある。電子エコーその他の機械エコー以前の時代はエコーチェンバーというエコー用の箱というか部屋によってエコーの効きが違うのでスタジオ探しにはエコーチェンバーをまずチェックしなければいけなかった。エンジニアによっても音が違うのでミュージシャンたちは好みの音が録れるスタジオを捜すのである。

 わたしは「カリフォルニア・サンシャイン」のシングルのマスターリング(レコードの原盤を作る作業)に当時ロサンジェルスで一番評判の良かった「マスターリング・ラボ」というスタジオに予約を入れようとした。すると「今週一杯は無理です。ピンク・フロイドのディヴィッド・ギルモアが個人アルバムのマスターリングでずっとリザーブしてますから」といわれた。それで一週間待った。

 スタジオに入ってどんなアンプを使っているのかと訊くと50ワットの手作りアンプだという。100ワット以下ということに驚いた。ひとりはいかにも職人的な技術者でひとりはなんでも楽しく話してくれるフランクなオジサンだった。スタジオに一番大切なのは大容量のアンプや最新機器ではなくエンジニアの腕と耳らしかった。
fumio

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