Zooey's Diary

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「ムーンライト」

2017年04月13日 | 映画


マイアミの貧困地域で暮らす少年シャロン。
母親は麻薬常習者で、時に体を売って暮らしている。
母親からも育児放棄され、誰からも愛されない子どもが、自分に自信を持てるわけがない。
暗くいつも俯きがち、体も小さく弱々しいとなれば、いじめられるのは目に見えている。

ある日いじめられるところを助けてくれた男性フアンは
唯一、シャロンを気に掛けてくれた大人だった。
頑なに殻に閉じ籠っていたシャロンは、少しずつフアンに心を許していくが…
彼は、母親にヤクを売る密売人であった。



この映画、シャロンが暮らす近所も学校の中も何処を見ても、
殆ど黒人しか出て来ないのです。
アメリカには何度も行っていますが、こんな所があるのかと今更ながら驚く思い。
高校に入っても相変わらずいじめられている、弱々しいシャロン。
つい母親目線になって、これ以上悪いことが起こらないでと祈るような思いで見ていると
シャロンの唯一の友人、幼馴染のケヴィンに、徹底的に裏切られてしまう。



映画は、シャロンの少年期、青年期、成人期の3部に分けて描かれます。
このポスター、なんとその、3人の顔で合成されていたのですね。
成人期のシャロンが現れた時には目を見張りました。
小さく弱々しく何処でもいじめられていたシャロンが
筋骨隆々、金歯と金のネックレスで武装した牡牛のような姿となって現れる。
彼が選んだ職業は…
悲しいが、しかしあの境遇では、仕方がなかったのだろうなあ。

全編を通して台詞も説明も極端に少なく、
視聴者は自分で想像しながら観なければならない。
フアンは突然死んでしまうが、どうせロクな死に方じゃなかったろうとか
少年院でいじめられっ子のシャロンはどんな酷い目に遭ったのだろう、
それを克服するために身体を鍛えて、あの牡牛のような姿になったのだろうとか。
逆に言えば、行間が多くを物語る作品でもあります。
最後に、シャロンの魂が救われたように見えるシーンがあり、
我々も、かろうじてホッとすることができます。



貧困、麻薬、暴力、黒人、ゲイ。
この作品がアカデミー賞を取ったのは「強い白人のアメリカ」を主張するトランプに
対抗してのことであるとも言われているようですが
それを差し引いても、静かに心に沁みる作品です。

2017年アカデミー賞作品賞。
監督はバリー・ジェンキンス、脚本も。
「ムーンライト」 http://moonlight-movie.jp/index.html


コメント (8)
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