Zooey's Diary

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昭和の大女優の意外な一面

2012年03月06日 | 


婦人画報四月号の特集「高峰秀子のレシピ」。
女優高峰の著書「台所のオーケストラ」をもとに
そのレシピやエッセイのいくつかを取り上げています。

邦画をあまり観ない私は彼女のことを
近年に亡くなった正統派美人の大女優、くらいにしか知らなかったのですが
こんなにも細やかな料理を作り、こんなにもさっぱりした江戸っ子風の文章を
書く人であったのですね。

例えば「三つ葉」の頁。
”最近の野菜や果物の風味が落ちたのか、私の鼻が鈍感になったのか知らないけれど、
三つ葉の香りにも、以前のような上品さ、爽やかさが全然ない。
だから、少し野暮っちい匂いだけれど、私は根三つ葉を専ら愛用している。
パリで藤田嗣治画伯と食べ物の話をしていたとき、私が
「日本の何が食べたいな、と思いますか?」と聞いたら、
「根三つ葉、しその葉、みょうが、ふきのとう、柚子に筆しょうがにくわいに納豆…」
とたちどころに十品ばかりをあげたのでビックリしたことがあった。
根三つ葉を見ると、だから藤田先生を思い出す。”

その三つ葉を使ったレシピ「ささみと根三つ葉のわさび醤油」は
”ごく新鮮なささみを一口大にそぎ切りにしてザルに入れ、熱湯をそそいで霜降りにして、
よく水気を切ります。。
わさびをおろして醤油と混ぜて「わさび醤油」を作ります。
(わさびはゆめゆめケチらずにたっぷり使い、鼻にツーンとくるくらいの方がおいしいのです)
わさび醤油でささみをサッとまぜて小鉢に盛り、三つ葉のみじん切りをたっぷり乗せ、
更に焼き海苔の千切りを展盛りにします。”
という、簡単で美味しそうなもの。
だけどチューブじゃなくて、本わさびが要るのね…

そして、晩年の高峰秀子・松山善三夫婦の養女になったという作家斎藤明美の
「亡き母に捧ぐ」という文章からの一節。
”松山が誰かと外で昼食を取らねばならなかったある日、高峰は私に電話を
かけてきて言ったことがある。
「今日ね、昼はラーメンでも作ってやれと思って、一人で食べたの。
丼に移すの面倒だったから、鍋で直接食べたら、唇やけどしそうになっちゃった」
「かあちゃんったら…」
言いながら、私は妙にじんときた。
この人は、自分のために料理を作るのではない。
愛する人のために、考えて、工夫して、精一杯美味しいものを作るのだ。
その人に喜んでもらうために。”



高峰秀子という人の略歴を見ると
5歳の時に子役でデビュー、生涯で三百本以上の名作に出演したと。
あの美貌で若い頃はどれだけ忙しく、どれだけちやほやされたか分からないのに
こんな繊細な料理を作り、こんな一面を持ち合わせていたとは。
「台所のオーケストラ」私も買いました。

コメント (6)
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