Zooey's Diary

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「私の中のあなた」

2009年11月05日 | 映画
2009年アメリカ作品、ニック・カサヴェテス監督

白血病の姉のドナーとなるべく、遺伝子操作によって生まれた11歳の妹が、
姉への臓器提供を拒んで両親を提訴するという設定で、話は始まります。
しかし、そんなセンセーショナルな話題を提供した割には
その家族は、見れば見るほど愛に溢れているのです。
難病の娘の看病に自分のすべてを捧げている母(キャメロン・ディアス)。
家族を暖かく見守る消防士の父(ジェイソン・パトリック)。
失読症になって孤独に悩む長男ジェシー。
家族に負担をかけていることを心苦しく思う難病の長女ケイト(ソフィア・ヴァジリーヴァ)。
姉のドナーとなるために生まれてきて、遂に両親を裁判で訴えた次女アナ(アビゲイル・ブレスリン)。

しかし、誰もが相手を思いやっている。
親の関心を姉に取られ、寂しく思いながらも姉を思う弟。
姉のために作られ、身体的犠牲を強いられながらも
姉を愛し、甲斐甲斐しく姉を看護する妹。
そうして揺るがない親の愛。
そうした家族に感謝し、難病と必死に戦う姉。
どの切り口を見ても、仲の良い、愛に溢れた家族なのです。

なのに何故妹は、自分の親を訴えたのか?
その答えは終盤で分かるのですが
やはり溢れるほどの愛があった。
あっと息を呑むどんでん返しです。

またこの作品は、末期の病人の姿を半端なく描いていました。
それは綺麗ごとだけではすまない。
髪が抜け落ちるだけでなく、眉も抜ける。
顔は青黒くむくみ、嘔吐・排泄・下血でベッドを汚すこともしばしば。
眼は赤く血走り、唇は熱でひからびる。
そうした病人の姿を、ソフィア・ヴァジリーヴァ、見事に演じていました。
カメラワークがまた、美しい。
トランポリンで青空に飛び跳ねる家族、
海辺で波と風と光とカモメとたわむれる家族。
病室での淀んだシーンとのあまりの対比に
息を呑むほどです。

ケイトと癌仲間のテイラーとの淡い初恋も美しかった。
二人の暗い無菌室での密かな逢引。
それは情欲からというよりは、お互いの生を必死に確かめているようで
これも涙なしでは見られませんでした。

難病の子どもをかかえた家族のありかたや、命の尊厳の見つめ方。
色々な問題を投げかけてくれる、胸に染み入る作品です。

惜しむらくは、長男ジェシーの事情がよく分からなかった。
失読症を抱えて遠くの学校に追いやられた彼の孤独は分かるような気もしますが
夜の町で何をしていたのか、何故屋上でケイトの似顔絵を引きちぎったのか…
あれでは説明不足でしょう。
原作が読みたくなりました。

「私の中のあなた」
コメント (2)
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