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10/13 映画「SAVIOR」ボスニア紛争に於ける神の顕在

2019-10-13 19:04:13 | 映画



この映画は、1992年から1995年に続いた「ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争」を舞台としている。

この紛争はクロアチア人、セルビア人、ムスリム(ボシュニャク人)の相関が複雑で、私はほとんどその実体を知らないから、誰が悪いとか善いとか、まったく明確に書けないが、この映画では厳しい紛争の中で、人間の問題と本質を戦火に浮かび上がらせている。

主人公ジョシュア・ローズはパリのアメリカ大使館員であった。
ある日、カフェで妻と子に会っていると同僚が来て緊急の呼び出しを伝え、二人は外に出た。
するとカフェが爆発し、テーブルに残っていた妻と息子は死ぬ。
イスラムによるテロであることを知ったジョシュアは近くのモスクへと行き、怒りにまかせて罪のないモスリムを無差別に殺害してしまう。
逮捕を免れるため、ジョシュアはフランス外人部隊へ偽名(ギイ)で入隊する。
部隊では、名前も家族も国も政治信条もすべて忘れろ、と叩き込まれる。
そして「敵をリスペクトせよ」と強く言われる。
やがてセルビア側の傭兵としてボスニアに駐留するようになる。
イスラムを分離監視する橋で狙撃手として配置されるが、ある日ジョシュアは、山羊を追ってきたモスリムの子供を狙い殺してしまう。
その報復によりパリから一緒に来た友人であり同僚のピーターを死なせてしまう。

ジョシュアますます焦燥感は募り、混迷し、生の価値も希薄で、ただ生きて任務をこなしているだけであった。
そんな日々の中、クロアチア側から捕虜が交換により解放されて戻ってきた。
その捕虜たち中のヴェラという女は妊娠をしていた。

ここの理解が難しいのだが、当時この紛争中には女性捕虜は計画的に敵にレイプをされ、中絶不可能の時期になると解放されることが頻繁に行われたらしい。なぜかというと、
敵にレイプをされ妊娠出産をすることは保守的な社会において理由にかかわらず許されざることで、それにより家族、村社会、やがては民族の分裂を引き起こすだろうと考えられ、敵対行為として推奨され行われた、らしい。詳しく正しくは調べてください。

ジョシュアは現地人ゴランという同僚兵士と一緒にヴェラを彼女の家に連れて行くことになる。
車の中でゴランはヴェラは保身のためにイスラム過激派(ムジャヒディーン)と寝たと考えている。
ジョシュアは彼女はレイプされたのだと反論する。
ゴランは保守的かつ冷酷な男で、トンネルに車を停めるとヴェラを降ろし、その腹を乱暴に蹴り始める。
早産をさせ、産まれた子を殺そうとする。
しかしジョシュアは看過できずゴランを射殺する。
衝撃でやはりヴェラは産気づき、ジョシュアの助けによりその場で子供を産み落としてしまう。
ヴェラは失語症かのように放心しままで、産んだ子供に興味もなく、気になり世話をするのはジョシュアであった。

村のヴェラの家に着く。
ヴェラの母と弟は歓迎をするが、帰宅した父は厳しく、ヴェラに出ていくように命ずる。
ジョシュアとヴェラはミルクなどを持ち車で出発する。(どこへ向かうのか、よくわからず。たぶん難民キャンプか赤十字か)
しばらくすると父が弟と車で追ってくる。(ゴランの死を知ってジョシュアを追ってきたようだ)
ヴェラは疾走する車から子供を捨てようとするが、やはり出来ず、抱きしめる。
一旦はうまく逃げることが出来、束の間の安らぎにヴェラは子供用のミルクを飲んでしまう。
子が泣くと困るから、近くに牧場を見つけ、ジョシュアは乳を求め山羊を追う。しかし逃げられる。
その滑稽な姿を見てヴェラは微笑む。
そこにヴェラの父が追いつき、ジョシュアの腹を撃つ。
ヴェラと子供にも銃口を当てるが、しかし撃たずに弟と去ってゆく。

怪我をしたジョシュアとヴェラと子供はまた車で走り始めるが、とうとうガソリンがなくなり、車は止まる。
夜になり、家を見つけたジョシュアはタンクを持ち、ガソリンを盗むつもりで家に忍び寄るが家人に見つかる。
しかしその夫婦(クロアチア人の夫。セルビア人の妻)は親切で、怪我を治療し、事態が落ち着くまではここにいろと二人に勧める。
しかしジョシュアはそれを聞き入れず、そこで夫婦はボートを提供し、ジョシュアたちはボートで移動を再開する。

陸地に着いたが、ジョシュアの容態が悪く、ヴェラは木陰にジョシュアと子供を残し、独りでバスを探し? 街へ行く? 何か良い計画? を立てて、なるべく早く戻ってくると言い残し、歩いて去ってゆく。

ジョシュアは湖の岸に廃船を見つけ、その中に避難をする。
うたた寝をしているとバスのエンジンの音がし、バスが他の車に先導をされ、こちらへと向かってきた。
ジョシュアが廃船に隠れて見ている前でバスと車は止まる……。

と、ここまでが前置きで、ここからが本番です。

非常に衝撃的なシーンがあり、心臓の弱い人は見ない方が良いと思われ、私もそこはどうしても目を瞑ってしまいますが、母が湖で歌い始め、その声と心が娘に届くシーンは誰もが感動をするでしょう。

最初に書いたように、誰が悪物であるか、私は不勉強につき、まったく明確には書けない。欧米的にはセルビアのいわゆる「民族浄化」というスローガンが(広告代理店により)強く喧伝され、私も長くこの紛争はセルビアが悪であると思っていたが、詳しく調べていくとまったくそういうことだけでもなく、とにかく相関が複雑であり、調べただけでは真実はわからない。これは研究というアプローチが必要だろう。しかしそれにしても子供が可愛い。天使とはこのことかというくらい可愛い。

ジョシュアは、パリのモスクで怒りにまかせて無差別殺人を行った。
ボスニアの橋の近くで山羊を追いかけて現れた子供を撃ち殺した。
そのことは彼がどれほど贖いを重ねたとしても赦されることではないが、しかし、現れた天使━━セルビアの女捕虜がレイプをされ産まれた子━━が彼の手に遺されたなら、彼の罪はそのままではあっても、彼の魂は生を肯定する側へと再び傾いたのではないだろうか。
だから、赤ん坊を救ったのはジョシュアであるが、救われたのもジョシュアであった。
以上、月並みな感想で申し訳ない。
ちなみにジョシュアはつまりヨシュアのことで、ヨシュアは旧約聖書のモーゼの後継者である。そのことがこの映画に関係しているかはわからない。ありふれた名前なので。

そして、これは蛇足であるが、冒頭に死んでしまうジョシュアの妻役のナスターシャ・キンスキー、そしてヴェラ、さらに最後に出てくる女性、この三人どう見ても雰囲気が似ていて、監督か誰かの好みが強く反映されているのではと勘ぐらざるを得ない。

また、ボスニアの内戦は終わったが、しかし今現在、シリアで同じようなことが続いていることも現実であり、やはりきっとその戦場では弱者の声は聞こえないほど銃声がするのだろう。

昨夜の台風の中、この映画を観ていたので、概略や感想を少し書いた。しかし字幕でも吹き替えでもないので、間違い勘違いがあるかもしれない。ご理解のほどを。 E  V  O  L  U  C  I  O

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