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高い城の男

2015-08-22 23:59:58 | Diary



一時期のあの暑さはどうしたのだろう。
あれに比べると、
30度くらいは「涼しいな」と思う。

1週間ほど続いたあの猛暑の日の昼間、
あまりの暑さに仕事が手につかず私は、
浴槽に水を張って入ってみたのだった。

エアコンで「部屋がキンキンに冷えている」という状態が
苦手な私は水中に活路を求めたわけなのだが、
これがよかった。
実によかった。
すごく快適で、
それからの猛暑の日々には、
日に3度くらい水に頭まで沈めた。

次亜塩素酸を少し入れると、
これはプールの消毒剤なので、
なんとなく「夏」の匂いになるのもよかった。

しかし頭まで水に沈めたままだと、
そのうち浮かべなくなってしまうので、
「そうだ。ここで本を読もう」とひらめき、
昼の一番暑い時間に1時間くらい、
水に浸かったまま本を読むことが
しばらくの間、日課になった。

買っておいたフィリップ・K・ディックや、
小泉八雲を読んだ。

小泉八雲はまあ「小泉八雲」なんだけど、
P.K.ディックを読むことは、なかなか難しい。

有名な作家だから改めて説明することもないのだが、
リドリー・スコットの「ブレードランナー」の原作になった
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」を書いた人だ。

原作と映画では追求点が違うのだが、
やっぱり映画が名作すぎたということが特筆される。

P.K.ディックも映画の脚本に反対しつづけていたが、
リドリー・スコットのフィルムを見た途端に、
完全支持に回ったという。

いろいろな考え方があるわけだが、
映画では、
「本当に生きていることとは」
という部分を主題にしている、かな。

原作でも同じように、
「生命とは」を主題にしているが、
「生きていることにはどんな意味があるのか」と
問われているような気がする。

それは「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」のさらに
元になった短編「小さな黒い箱」に顕著で、
読後にバリバリと仕事をする気は決して起きない。

P.K.ディックの著作にはほとんどが
「現実と虚構」「自分の意識は本当はどこにあるのか」など、
後の映画マトリックスや、デイビッドリンチなどの作品に顕れる
形而上的世界が物語の奥に潜んでいて、
はっきり言って、これらを深く読み込んだ場合、
素質のある人は統合失調症を発症しかねないと思う。

話を戻して、
猛暑の水中で読んだのは「高い城の男」だった。

第二次世界大戦で、日本とドイツが勝ち、
アメリカ大陸を分割統治しているという設定の物語である。

その物語の中で、
「もしもアメリカ及び連合国が勝っていたら」という設定の
小説が人々によって読まれている。

P.K.ディックの作品の中では読みやすい。
錯綜につぐ錯綜ということもない。

とはいっても、
読み始めたら最後まで一気に読んでしまう、というように
面白いかというと、そんなこともない。

活劇ではないから、
一々考えながら進まなくてはならないし。

物語を通して「易」が重要な位置で語られ、
「易」は「易経」ともいい、
私も「易経」を一冊持っているが、
「易」とはご存知の通り占いのことで、
偶然と必然を「易経」という回答書によって判断し、
今後の道筋を占うというもの。

ただし、
「易経」に書かれている文章は象徴詩的なので、
解釈によっては、どうとでも言える。
それに、
「易経」はどうしても翻訳文なので、
その翻訳が合っているのかという心配もある。
漢文は翻訳が難しいと記憶している。

だから、
出た目を3人の易者に解釈してもらいたい気がするのは
やはりタブーなのか。
まあそのへんの回避の仕方もきっと用意してあるのだろうね。

いや、決して占いを否定しているのではない。
ただ、せっかく「コイン投げ」など偶然の中の必然を、
言い方を変えれば「未知の力」を使っているのに、
理解するには「人の解釈」という仲介が入るという部分が
どうにももったいない気がする。

もっと言えば、
「無意識の力」で得た目を、
「意識の解釈」で占うという、ここに釈然としない。
まあいいんだけどね。

その東洋的「易経」を
決して日本人だけではない登場人物たちが場面ごとに使う。

この小説は最近、映画だか配信動画だかになったらしく、
日本での公開はいつなのかわからないが、
それなら「易」が流行るかというと、そんなこともないだろう。
「易経」は難しいからね。
難解なものは今の日本では流行らないと思う。
これが「コックリさん」だったら再ブレークだったが。

小説の最後は、
やはりF.K.ディック原作の
映画「トータル・リコール」みたいな感じがある。




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