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映画「恋の罪」感想

2016-09-04 22:10:12 | Diary
園子温監督の映画を知人が面白いというので「恋の罪」を観た。

最近の邦画をあまり観ないし、園子温の監督作品を観るのは初めてだった。
だいたい園子温という人を私はよく知らなかった。名前だけは知っている程度。
調べてみると、ああ「東京ガガガ」の人か。
しかしその「東京ガガガ」も名前だけで、実際はなんだか知らない。

「恋の罪」は、東電OL殺人事件を下敷きに換骨奪胎という感じで描かれた作品。

しかし見始めて少し後悔した。
なぜなら私の思想の背景にはエロはあってもグロはないので、
あからさまな狂気と演出過剰気味の映像に、
昼の定食屋でずいぶんと間違ったものを頼んだような微妙な気分になった。

日常に潜む狂気、そして狂気の果てに見い出す、または
見い出そうとしたかった真実、もしくは何かの手応え、
といったことが描かれている気がしたが、

リアリティのない映像が最初から最後まで続き、一篇の詩をもって
物語の特殊構造をそこに収束させようとした手法は面白いのかもしれないが、
だいぶ観念的であるなと個人的には感じた。

途中からあまり気を入れて観ていなかったせいか、二人の女、いや三人か、
彼女らが壊れていく、逆に言えば目覚めて行く過程の心理描写の積み重ねが
どうにも少なく思えて、随所に唐突な印象を残した。

演出のことをひとつだけ書くと、
殺人現場の部屋の壁に血文字のような書きなぐりがあるのだが、
あれは効果的なのだろうか。疑問である。はっきり言って苦手だ。

たしかに脚本も演技も全編で現実離れしているから、
あのように、さもありそうな演出はわかり易いのかもしれないが、
「ほら怖いだろう。ほら狂っているだろう」と非日常、または
半社会的なものを見せたくて仕方がないといったふうで、苦手だ。

好き嫌いでいえば「隠しても隠しきれない狂気」の方が、好みである。

映画監督が日常のさりげない物語を撮ったつもりで、
完成したらつい柔らかなそして確実な狂気が画面から滲み出てしまった。
というようなのが好きである。

だから、この園子温という監督は、きっとすごくまともな人なんだろうな。
そんな気がした。もちろん良い意味で。

この東電OL殺人のルポルタージュをだいぶ以前に読んだことがあるが、
まあ、実際の事件の方が闇が深くて怖かったかな。
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