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20220805 夏の歌・岡しのぶ/歌集より4

2022-08-05 17:11:40 | 本の要約や感想
20220805


夏服の立ちつくす君二番線 蟬時雨降る八月五日




──岡しのぶ / もし君と結ばれなければ──より

    (ネスコ発行 / 1996文芸春秋発売)


ちょうど今日と同じ日付の歌があり、上に紹介した。
ただ、この「夏服の君」が誰なのか簡単ではなく、考えたが答えは明確には出なかった。
この歌一首だけでは判断はできず、歌集全体から焦点を絞っていかなければならないだろう。絞り切る時間もさすがにないわけだが。

著者は10代の女の子で、歌集はある男との陰影の深い日々を思う歌が多い。しかし長く付き合うことは叶わなかったらしい。

とうとう別れの日なのか、二番線のホームで蟬時雨の中、最後の言葉を俯き加減に交わし、男は列車に乗り込んだ。そして窓から見える夏服の彼女を見つめた。

列車はゆっくりと走り出す。離れてゆく彼女は涙も拭かず口を結んだまま自分を見つめて立ちつくしている。小さくなる。やがて見えなくなった。8月5日。

というふうに著者が男の視線で歌ったように今日の私には読めるが、違ったらごめんね。

でも、夏服の男が立ちつくしても邪魔なだけで絵にはならないから、おそらく正解だろう。

この歌集には、君、きみ、私、わたくし、わたし、汝、吾、我、などと人称表現が多様で、その判別や想像がし難いのだが、まあいいんですよ些末なことは。その時その時、読みたいように読めばいいだろう。勘違いも醍醐味のひとつとして。

いずれにせよ8月5日が著者にとって忘れられない日であったことは間違いなく、今日、おそらくその日から26,7年後?の同じ日に、まったく何ら関係のない部外者のブログに断りもなく載せられて、しかも勝手なことを推測され書かれているわけだが、それもこれも時代の罪ということで済ませたいと私は思っている。

そして、私は今年たくさんの本を処分したが、しかしこの歌集はまだ私の手を離れては行かない。

E V O L U C I O


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