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5/20 就職しました。

2020-05-20 18:50:53 | Dreams

5/20

昨今の世界情勢に鑑み、私も暮らしの安定を計らねばと就職をする気になった。
いい具合に近所で頃合いの会社を見つけた。
さっそく面接が通り、私はめでたく仮雇いの勤め人となった。

働きによっては本雇いにしてくれるらしい。しかし正直ヤル気はない。
同じように一緒に仮雇いになった新人が他に二人いた。
若くもなく年寄りでもない男たちだった。

さて何の会社かというと、
おでん屋である。
しかも牛乳屋も兼ねていた。
昨今のコロナ禍により学校の休みが続き、牛乳の卸販売が滞っていて、
中年男の社長は売れ残った分を政府に買い取ってもらう気でいるらしく、
私も「いいアイデアですね」とテキトーな相槌を打った。

牛乳は売れなかったが、おでんも売れなかった。
おでんは1階の店で対面販売である。売れないからもう真っ黒である。
煮詰まった黒いおでんを見つめながら私は現実感を失いボーッとしていた。
しかし現実感を失うのはあたりまえの話で、すべて夢の中の出来事なのだから。

とはいえ、夢の中でこれは夢だと認識できる時は稀で、今回は曖昧であった。
私はなるべくラクをして給料を毎月もらいたいと考えていた。
謂わば、目の前の黒いおでんに私の未来があるといっても過言ではないのだった。

ところが実は、
この会社のおでんと牛乳は表の看板で、本業は裏稼業であるらしかった。
というより話を聞いていると、どうやら本来の裏稼業がおもわしくなくて、
ただの看板であったおでんと牛乳の稼ぎに頼っているというのが実情の様子であった。
つまり今になっては、おでんも牛乳も裏もすべてダメなのである。
それで人を新規に雇うということは何か事情があるのだろう。

さて、おでんにしろ牛乳にしろ裏稼業にしろ、
私にはどれも気が進まないことばかりであった。
しかし強いて言えば「おでん」かなぁ。
ここで辛くともおでんの修行をしておけば、
もしこの先食えなくなってもおでん屋の開業もできるではないか。
私の未来において希望をしない選択肢の最後の一つとして残してもいい保険だ。

しかしそんな消極的な心構えでおでん屋が成り立つほど甘いわけもなく、
しかも目の前のあの臭くて黒いおでんを見ていると、
先ほどの主張とは逆になるが将来役に立つとも思えなかった。
だいたいテキトーにおでん屋を開業するくらいなら、
本気でコーヒー屋をやるに決まっている。

「ガチャ」
社長と新人二人が部屋に入ってきた。
これから本雇いの儀式を始めると言う。
「儀式」か。
なにしろ胡散が大変に臭うのである。

さてその儀式とは、
仮に「中途採用本雇いの儀」とでもしておこうか。
社長と新人ひとりが組みになり、お互いの袖をめくった右腕を交差し合わせるのだが、
ただ合わせるのではなく、
その合わせた腕の間に熱いおでんではなく、
真っ赤に焼けた1センチ角ほどの鉄片を入れることが肝であった。

悩む間もなく始まった。
「あ゛ぁー」と新人。
「くぅー」と社長。
そりゃあ熱いだろう。小さくとも焼けた鉄である。
大袈裟に叫ぶ新人に対して、さすがに社長は目をつぶり小さく呻くだけであった。

さて、どうやって逃げようか。
こんなのにつき合ってられないよ。
夢でした。

おしまい。E V O L U C I O

コメント
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