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なぜかシャンソン 4 石井好子

2015-07-06 20:07:50 | なぜかシャンソン
石井好子さんのことのつづき。

私が観に行った時にステージ上で本人が
「82歳です」と言っていたが、
背が高く堂々としたドレス姿は舞台によく映え実に風格があった。
声量も豊かで、
「やっぱり歳だな」と思わせるところは微塵もなかった。

当日、ホールの玄関に入った時に
石井好子がただの老歌手でないことは、すぐわかった。

私は彼女が日本シャンソン協会や毎年7月のイベント<パリ祭>の
創設者であったことなど、その時にはまったく知らなかった。

ただ、老いた歌い手がその生涯の終わりに…、
もちろん私が勝手にそろそろ終わりそうだと推測していただけだが、
きっと会場に半分くらいの客の前で、
どんな歌を歌うのだろうか、と観に来ただけだった。
ところがそんな私の想像は入場にして吹き飛ばされた。

ホールの玄関から入ると広いロビーは花、花、花で満ちていた。
置く場所に困るほどの花輪、花束、花スタンドであった。

私も若くはないので、すぐに綺麗な花の裏に潜んだ
業界の力関係ということに考えが及んだ。

なぜかというと、
他のシャンソン歌手を観に行ったこともあったが、
こんなに花が飾られたロビーを見たことはなかったからだ。

ああ、これは大変な人なのだな。

私は私にとって少し場違いな感のあるロビーで素直にそう思った。

後になって少し調べると、
石井さんは、日本のシャンソン界を牽引し、発展に尽力された人であった。
歌手であって、プロデューサーでもあった。
だから、いわば門下生たちも多く、花の数の意味も理解出来た。
そしておそらく力関係だけではなく、最初に書いたように
彼女は相当な人物であったのだろう。
その人柄の良さや大きさが歌を通して私にも届いた。

うまいヘタでは計りきれない表現力、
それは底にしっかりとした嘘のない彼女の人生があってこそ。
それがそのまま偽りなく無骨にしかし優しく歌に聴こえてくる。

石井好子の特筆すべきは、何を歌っても明るいことだろう。

いわゆるシャンソンは暗い歌も多い。
しかし石井好子の歌うシャンソンはどれも暗く聴こえない。
何を歌っても人柄が前に出てしまって、なぜか希望を感じさせる。

今は落ちてしまって聴けないが、
以前、Youtubeに石井好子の歌う「帰り来ぬ青春」という動画があった。
これは実に大変によかった。
この歌はたしかシャルル・アズナブールの歌だったと思うが、
日本でもいろいろなカバーがある。その中でも、
石井好子のそれは額縁に収まらない絵のような感があり、
歌い出し最初の4小節でつい笑ってしまいそうになるのを堪えれば、
あとは素晴らしい感動のゴールが待っているというものである。
私はその動画で涙腺が緩んだこともあると最後に書き残しておきたい。

次は美輪明宏。
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