三多摩の鐘

The Bells of San Tama -関東のキリスト教会巡り-

ランチタイム・パイプオルガン・コンサート

2014年06月24日 | 音楽を聴く
日本聖公会 神田キリスト教会
(住所:東京都千代田区外神田3-5-11)

6月18日(水)、神田キリスト教会(日本聖公会)で、ランチタイム・パイプオルガン・コンサートを聴いた。JR秋葉原駅で下車。今やアキバは「オタクの聖地」と化し、街中に美少女アニメの看板が溢れている(下写真2)。私のような元オーディオ少年にとっては、一抹の寂しさを禁じえない光景だ。その只中にある神田キリスト教会は、オタク文化の大海原に浮かぶ聖なる島のようである(?)。喧騒のアキバに響くランチタイム・パイプオルガン・コンサートは毎月第3水曜日に開催(入場無料)。

この日の演奏は、神田キリスト教会主任オルガニストの和田純子さん。プログラムに記されたプロフィールによれば、和田さんはウィーン国立音楽大学で学ばれ、海外でのコンクール入賞・入選もある。さて、今回のコンサートの冒頭を飾ったのは、前奏曲とフーガ ハ短調(BWV.549)。青年時代のバッハがオルガニストとして活躍しながら、ブクステフーデの音楽に大きな感銘を受けた頃の作品だ。この日の掉尾を飾った「我ら唯一の神を信ず」(BWV.680)と共に、バッハの劇的表現力を堪能。

バッハと私の出会いは小学生時代にさかのぼる。下校時の音楽が「G線上のアリア(管弦楽組曲第3番の第2楽章)」だったのだ。今でもこれを聴くと、夕映えの校舎の情景を懐かしく思い出す。だが、私はバッハに傾倒することはなく、もっぱらロマン派の音楽を聴いていた。その後、自発的に教会を巡り始め、パイプオルガンの生演奏を聴く機会も増えて、ようやく私はバッハの魅力に目覚めたのである。そして、その音楽が「録音」の技術ではとらえきれないスケールの大きさであることも。


神田キリスト教会のパイプオルガン
(1997年に設置されたオランダ・ライル社製)


聖と俗の交錯。秋葉原の街角で。

◆第202回「ランチタイム・パイプオルガン・コンサート」演奏曲目(全てJ・S・バッハ作曲):
前奏曲とフーガ ハ短調(BWV.549)、「クラヴィーア練習曲集」第3巻より5曲(「キリエ、永遠にいます父なる神よ」BWV.669、「全世界の慰め主、キリストよ」BWV.670、「キリエ、聖霊なる神よ」BWV.671、「いと高きところには神にのみ栄光あれ」BWV.676、「我ら唯一の神を信ず」BWV.680)。

◆主な参考文献・CDなど:
・「バッハ」 樋口隆一著(新潮文庫・1985年)
・CD「バッハ:管弦楽組曲集」 ミュンヒンガー指揮/シュトゥットガルト室内管弦楽団(KING:K30Y-1511)
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立教大学「クワイア・フェスティバル」

2013年11月16日 | 音楽を聴く
秋の気配が漂う立教大学モリス館
(住所:東京都豊島区西池袋3-34-1)

「立教大学教会音楽研究所(注)では、この秋、『クワイア・フェスティバル』を開催いたします。東京近郊の5つの大学の聖歌隊が一堂に集まり、ともに奉唱する、とても貴重な機会です。僅かですが、一般の方々の聴講席をご用意しました。ぜひ、足をお運びください」(同研究所公式HPより)。参加団体は青山学院大学、桜美林大学、フェリス女学院大学、ルーテル学院大学、そして立教大学の各校聖歌隊。残念ながら、上智や聖心女子など、カトリック系大学は不参加。

11月9日(土)、立教大学チャペル(日本聖公会)で開催された「クワイア・フェスティバル」に行ってきた。少し早めにキャンパスに着いたので、映画『ハリー・ポッター』風の第一学食(下写真)で小休止。私の学生時代、ここのカレーライスは普通盛 210円だった(はず)。塩味が強く、玉ネギがゴムのように硬かった(笑)。そんなことを思い出しながら、チャペルに向かう。午後4時、開会。総勢140人ほどの聖歌隊員が集まった。各校とも演奏時間は約10分、色とりどりの正装で登場。

約1時間半、神の豊かな恵みに満たされたひと時であった。若い人たちの祈りが込められた歌声が素晴らしかった。「合唱コンクール」のように優劣を争う悲壮感もなく、ただ神への讃美と喜びがあった。閉会の部では、スタンフォード(1852-1924年)作曲の気高い聖歌「み栄えを世に告げる」を聖歌隊と聴衆とで合唱。この日、立教大学の金大原(キム・デウォン)チャプレンが「聖歌隊の歌声は、人々を神の愛と御旨に導く」と話されたが、私もその一人であったことは間違いない。


1918年竣工の立教学院諸聖徒礼拝堂
“ 楽(がく)の音(ね)は みな一つ・・・(聖歌305) ”


1918年竣工の立教大学第一学食

(注):立教大学教会音楽研究所は「教会音楽の研究とその普及を目的とし、学内外の教会音楽関係者のためのセミナー、ワークショップ、講演会、レッスンなども企画・運営」する機関で、所長は立教学院教会音楽ディレクターのスコット・ショウ先生(文学部教授)。私の学生時代、この研究所の前身に当たる「立教学院教会音楽学校」は女子寮「ミッチェル館」の近くにあった(と思う)。

◆各校聖歌隊の演奏曲目:
オルガン前奏:プレリュード(デュボワ)、青山学院:洗い清めたまえ(ウェズレー)、シメオンの讃歌(ウィールクス)、桜美林:聖エドワード王のミサ(ヒッギンソン)、フェリス女学院:キリエ(グレゴリオ聖歌)、パニス・アンジェリクス(フランク)、夜明けの光まばゆく(ハリス)、ルーテル学院:主を誉めよ、いざ!(ハスラー)、主なるイエスはわが喜び(バッハ)、祝祷(ルッケン)、立教:マニフィカート2曲(サムション、ラング)、神よ、汝は我が神なり(パーセル)、ジェリコの戦い(黒人霊歌)。全聖歌隊アンセム:主のみ住まいは(ヴォーン・ウィリアムズ)、全聖歌隊・聴衆合唱:ほめ歌え 主に向かい(聖歌304)、み栄えを世に告げる(聖歌305)。
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スモールクワイア・コンサート

2013年01月18日 | 音楽を聴く
ある晴れた日のカトリック多摩教会
(住所:東京都多摩市聖ヶ丘1-30-2)

1月13日(日)、府中教会で主の洗礼の祝日ミサに与った後、多摩教会でスモールクワイア(イエスのカリタス修道女会聖歌隊)のコンサートを聴いた。スモールクワイアは、「創立当初から常に歌声を絶やすことなく神を讃えるため、また神の愛を人々の心に伝えるため歌うことを大切にしてまいりました。大きな聖歌隊ではありませんが、スモールクワイアはカリタス会の伝統として祈りの時、喜びの時、歌うことで感謝をあらわしています」(CD「わたしをお使いください」より)。

多摩教会に到着。聖堂内は満席である。私はCDを通してスモールクワイアを聴いていたが、ライヴは今回が初めてだ。この日のメンバーは総勢10人(指揮を含む)。フォークソング風の曲が中心のプログラムだが、シスターの祈りが込められた歌声は本当に素晴らしかった。特に新成人の祝福のために歌われた「君は愛されるため生まれた」と「いのち」では、あちこちで涙ぐむ人々の姿が。清らかなハーモニーによって、私の汚れた心も洗われたようである。神に感謝。

コンサート後、聖堂のエントランス・ホールは、スモールクワイアのCDを求める人々でごった返していた。私はイエスのカリタス修道女会の創立75周年を記念した最新CD「祝福の歌」を入手。この日のコンサートで歌われたアルバム・タイトル曲と「いのち」、八王子教会子どもミサの定番曲(?)「感謝の賛歌」(上村幸一郎詞・曲)、そしてチマッティ神父の名歌「アヴェ・マリア」などが収録されている。透明感のある歌声を聴きながら、私はコンサートの余韻にひたるのであった。


乞田(こった)川に臨むカトリック多摩教会

◆コンサートで歌われた曲目:
「天は神の栄光を語り」、「祝福の歌(詩編67)」、「クレド(弱い者の信仰宣言)」、「Maria, vogliamo amarti(マリアよ、あなたを愛したい)」、「君は愛されるため生まれた」、「いのち」、「神を賛えよう」、「神さまといつもいっしょ」、アンコール:「わたしをお使いください(マザー・テレサの祈り)」。
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“ Sempre il Rosario ”

2012年10月26日 | 音楽を聴く
ある秋の日のカトリック調布教会
(住所:東京都調布市富士見町3-21-12)

「いつもロザリオ、なんでもロザリオ、すぐにロザリオ、みんなでロザリオ・・・」。調布教会の年間第29主日ミサで歌った「ロザリオ」の歌詞とメロディーが、私の頭の中で何度も繰り返され、耳にこびり付いてしまった。作詞は『長崎の鐘』などの著書で知られる永井隆博士(1908-1951年)、作曲は名歌「アヴェ・マリア」などを手がけたサレジオ会宣教師のチマッティ神父。なお、本記事のタイトル「Sempre il Rosario」は、イタリア語で「いつもロザリオ」という意味(らしい)。

「聖母信心の伝統的方法のうちにロザリオがある。彼(チマッティ神父)は徒歩で出掛けるときはいつもロザリオを繰っていた。生涯中どれだけとなえたであろう」(『ほほえみ、慈愛と祈りの人 チマッチ神父』より)。チマッティ資料館の作品リストによれば、「ロザリオ」が作曲されたのは、敗戦直後の1946年頃、作品番号554(又は555)に該当するものと思われる。長崎の被爆者で敬虔なカトリック信徒の永井博士と、どのように出会ってこの歌は誕生したのだろうか。

残念ながら、私の手元にあるチマッティ神父CDには「ロザリオ」が収録されておらず、作曲事情の詳しいことは分からない。当時、チマッティ神父は宮崎県に滞在していたから、長崎の永井博士と協力して、敗戦の悲哀に混乱する信徒を励ますため、「ロザリオ」の歌を作曲したのかもしれない。現在、チマッティ神父は調布サレジオ神学院の地下聖堂に眠っているが、そこには生前のチマッティ神父が弾いていたオルガンもある。最近、オーバーホールを終えたという。


カトリック館林教会の扶助者聖母像
(住所:群馬県館林市大手町11-21)

◆主な参考文献など:
・「ほほえみ、慈愛と祈りの人 チマッチ神父」 A・クレバコーレ著(ドン・ボスコ社・1991年第2版改題)

<付記>
「人類よ、戦争を計画してくれるな。原子爆弾というものがある故に、戦争は人類の自殺行為にしかならないのだ。原子野に泣く浦上人は世界に向かって叫ぶ。戦争をやめよ。ただ愛の掟に従って相互に協商せよ。浦上人は灰の中に伏して神に祈る。ねがわくば、この浦上をして世界最後の原子野たらしめたまえと」(永井隆著『長崎の鐘』より)。プロテスタント系の高校時代、私は修学旅行先の長崎国際文化会館で本書を入手した。
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クリスマス・コンサート

2011年12月15日 | 音楽を聴く
コンサート当日の東京純心女子大学
(住所:東京都八王子市滝山町2-600)

12月11日(日)、カトリック系の東京純心女子大学で行われたクリスマス・コンサートを聴いた。昨年に続き、私は再び江角記念講堂を訪れた。この演奏会は、1996年の開学時(短大を改組)より続けられ、今年で16回目を迎えた。短大時代から通算すると、42回の長きに渡る。芸術文化学科音楽コースの学生による独唱、合唱、パイプオルガン、ピアノ独奏で、幅広い曲目が組まれている(入場無料)。校舎がそそり立つ滝山丘陵は、この日も晴天に恵まれた。

午後2時、開演。石川和子シスターの指揮で、グレゴリオ聖歌が歌われる。「ミサ曲2」の作曲者として知られる石川シスターは、純心女子大の客員教授。先月の「グレゴリオ聖歌でささげるミサ」での熱血指導も記憶に新しい。J-POPの「信仰なきクリスマス・ソング」と異なり、その聖なる調べに心が洗われた。続いて、バッハのオルガン曲「トッカータとフーガ」。冒頭の名旋律は、子どもでも知っている。純心女子大が誇る(?)パイプオルガンの大音響は圧巻。

今年もまた、若々しい歌声のソプラノ独唱や二重唱が華を添えた。もちろん、職業音楽家と比べると、学生たちの表現は粗が目立つ箇所もあった。しかし、アマチュア・オーケストラの演奏を聴いた吉田秀和氏が指摘したように、「少々下手だろうと、ここには月並みのマンネリ化した演奏態度が全く見られない」(「音楽展望」より)。純心女子大の学生たちの演奏も、邦人プロ音楽家の「マンネリ」を補って余りあると言えよう。2時間半に及ぶ音楽の饗宴を満喫した。


江角記念講堂内の聖マリア・マグダレナ像
<「長崎26殉教者記念像」を手がけた舟越保武氏の作品>

◆クリスマス・コンサートの主な演奏曲目:
グレゴリオ聖歌5曲、トッカータとフーガ ニ短調(バッハ)、「メサイア」より「シオンの娘よ大いに喜べ」(ヘンデル)、歌劇「フィガロの結婚」より「恋とはどんなものかしら」(モーツァルト)、ピアノ協奏曲第12番より第1楽章(モーツァルト)、アヴェ・マリア(マスカーニ)、歌劇「ラ・ボエーム」より「私の名はミミ」(プッチーニ)、スケルツォ第2番変ロ短調(ショパン)、讃美歌「神の御子は今宵しも」、さやかに星はきらめき(アダン)ほか。
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