ご降誕前夜の聖イグナチオ教会マリア聖堂(千代田区)
御降誕節。カトリック信徒の祖父が教会へ連れて行ってくれたのは遠い昔。聖歌「あめのみつかいの」の調べをおぼろげに記憶している。自らの意思で降誕祭へ行くのは、昨晩の聖イグナチオ教会での前夜ミサが初めてだ。早めに現地へ到着したつもりが、既に長蛇の列が出来ている。瞬く間に主聖堂は大会衆で埋め尽くされ、立錐の余地もないほどだ。若いカップルや会社帰りのサラリーマン、様々な外国人の姿も多い。このような前夜ミサが計6回も行われる。
ミサ開祭。「きよしこのよる」が厳かに歌われる。式が進むにつれて、私はある種の歓喜の波に襲われ始め、主任司祭の説教が思い出せないほどの体たらくとなった。ただ、聖歌の余韻だけは鮮やかに残っている。奉納の歌は「きたれ友よ(アデステ)」。プロテスタントでは「神の御子は今宵しも」のタイトルで歌われている。スチーブ・マックイーンらが主演した映画「大脱走」(1963年)の中で、連合軍の捕虜たちがこの歌を合唱していた場面をご存じの方もあると思う。
聖体拝領は案内係の誘導で粛々と行われる。この日、跪き台の使用は禁止されていたが、拝領後に跪いて祈る多くの信徒を見かけた。亡き祖父の姿と重複し、何だか感極まってしまった。閉祭の歌「もろびとこぞりて」が歌われるなか、聖イグナチオ教会の鐘が大きく鳴り響いた。謹んで主のご降誕のお慶びを申し上げます。「神よ、御子の上に輝く光でこの世界を照らしてください。あなたの恵みに信頼し、み心にかなう平和と正義を求めることができますように」(共同祈願より)。
聖イグナチオ教会のクリスマス・クリブ
“きょう、わたしたちのために救い主が生まれた”