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三多摩の鐘

The Bells of San Tama -関東のキリスト教会巡り-

東方正教会の徹夜祷

2013年07月15日 | 東方正教会
日本正教会 東京復活大聖堂教会
(住所:東京都千代田区神田駿河台4-1-3)

7月13日(土)、正教会の東京復活大聖堂(通称ニコライ堂)で徹夜祷(主日前晩祷)に参祷した。主日や祭日の前夜に行われる徹夜祷(晩祷)とは、時課(注)晩課・早課・一時課を組み合わせ、翌日の聖体礼儀に備える奉神礼のこと。古くは夜を徹しての大儀式だったが、この日のニコライ堂での徹夜祷は約2時間15分ほどであった(実際に徹夜はしない)。なお、ラフマニノフの有名な「晩祷」は、この徹夜祷の典礼音楽であり、ロシア正教聖歌の神髄ともいうべき傑作(と思う)。

「君や祝讃せよ」。まだ日が高い午後6時、徹夜祷の始まりを告げる輔祭(助祭)の高誦と共に、ダニイル府主教、仙台のセラフィム大主教が厳かに入堂。この日は日本正教会の大きな会議(全国公会)が開催されたらしく、聖所内にカミラフカ(円筒型の帽子)を戴く多くの神品(聖職者)の姿を見かけた。天井の照明が落とされ、第一部の晩課が始まった。聖堂内は献燈台の蝋燭の火だけが輝く神秘的な世界になった。連祷と誦経(しょうけい)が繰り返され、聖歌の美しい調べが響き渡る。

セラフィム大主教の司祷(司式)で第二部の早課が始まった(ようである)。ここでも連祷と誦経が繰り返された。「ポリエレイ」という聖歌が流れると、再び聖堂内の灯りがともされ(多油祭)、やがて福音経の誦読となる。私はこの辺から徹夜祷の式順を見失い、「迷子」になってしまった。延々と続く連祷と誦経。「生神女小讃詞(聖母賛歌)」が流れたので、最後の一時課が終わりに近づいてきたらしい。それにしても、荘厳な徹夜祷の「宗教的恍惚感」は筆舌に尽くし難いほどであった。<続く>


夜の大聖堂入口
“ 主は神なり、我等を照らせり・・・ ”

(注):一日を3時間ごとに区分した祈祷の日課(聖務日課)。晩課・晩堂課・夜半課・早課・一時課・三時課・六時課・九時課の8つ。「時課の内容としては、主に聖詠(詩編)を読み、祈祷文を歌ったり読んだりする構成となっています」(日本正教会公式サイトより)。

◆主な参考文献・CDなど:
・「ギリシア正教入門」 高井寿雄著(教文館・1980年改版)
・「ギリシャ正教」 高橋保行著(講談社学術文庫・1980年)
・CD「ラフマニノフ:晩祷」 ミーニン指揮/国立モスクワ合唱団(Arts Core:ATCO-1005)
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続々・東方正教会の聖体礼儀<後編>

2013年06月29日 | 東方正教会
日本正教会 東京復活大聖堂教会
(住所:東京都千代田区神田駿河台4-1-3)

<前編の続き>。この日は聖体礼儀に続いて、五旬祭主日晩課が行われた。最初、私はそれが分からず、再び連祷が始まり、聖堂内を香炉で清める炉儀などが行われたので、何だか聖体礼儀の「振り出し」に戻るような動きに戸惑っていた。聖堂受付のご婦人にお尋ねすると、「これは聖神(聖霊)降臨を記念する特別な祈祷であり、また五旬節中に絶っていた伏拝という所作が再び始まります」とご教示いただいた。伏拝とは土下座(!)のように、地にひれ伏す姿勢である。

正教徒が伏拝(叩拝・大拝ともいう)するとは聞いていたが、五旬節中は主の復活を喜び祝い、それをしない習慣という。さて、晩課の流れはポロキメン(輔祭と聖歌隊との応唱)を終え、輔祭(助祭)が「膝を屈(かが)めて主に祈らん」と高誦。いよいよ「膝屈(しつくつ)祈祷」が始まる。府主教と司祭が長い祝文を誦読する間、信徒は伏拝。高齢者はもちろん、ロシア人の女性や子供たちも土下座。それは壮観な光景だった。途中の連祷を除き、通算して約30分は伏拝していたと思う。

一部の信徒は跪いていたので、私もそれに倣った(注)。聖堂内は絨毯が敷かれているが、聖イグナチオ教会のようなクッション付きの跪き台はない。両膝が痛み始めた頃、長い祝文(祈祷文)の誦読が終わった。このような祈りの姿勢を通して、神への畏敬と謙遜の心が湧いてきた。次回の聖体礼儀では、私も聖変化時におずおずと伏拝しよう。さて、晩課も終わりに近づいた。この日の奉事は聖体礼儀が始まってから約3時間40分を要したが、長丁場と感じなかったのは不思議。


大聖堂入口
“ 我が霊(たましい)や、主を讃め揚げよ・・・ ”

(注):正教会の祈りの基本姿勢は「起立」であり、聖所に椅子を置かないのが普通(ニコライ堂では若干の椅子が用意されているが、おそらく高齢者用)。だから、伏拝する場所的余裕がある。なお、ニコライ堂では聖所に未信者が入ることはできないので、聖所後方の啓蒙所というエリアで参祷することになる。

◆主な参考文献など:
・「ギリシア正教入門」 高井寿雄著(教文館・1980年改版)
・「ギリシャ正教」 高橋保行著(講談社学術文庫・1980年)
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続々・東方正教会の聖体礼儀<前編>

2013年06月25日 | 東方正教会
日本正教会 東京復活大聖堂教会
(住所:東京都千代田区神田駿河台4-1-3)

6月23日(日)、東京復活大聖堂(通称ニコライ堂)で五旬祭の主日聖体礼儀に参祷した。前回に続き、奉神礼(典礼)の流れを復習しよう。午前10時、聖体礼儀(ミサに相当)の開始を告げる鐘と共に、ダニイル府主教と司祭が厳かに入堂。ア・カペラの聖歌(注)が響く。第一部の奉献礼儀(約35分)は司祭が至聖所でパンとぶどう酒の準備をする。その間、聖所では祈り(時課経?)を捧げると同時に、升壇上で府主教の着衣式、及び聖堂内を香炉で清める全堂炉儀が行われる。

イコノスタスの王門が開き、第二部の啓蒙者のための聖体礼儀(約45分)。連祷とアンティフォン(倡和詞という聖歌)を繰り返すと、至聖所から福音経を捧持した司祭が現れる。この行列を「小聖入」と呼び、ハリストス(キリスト)の宣教活動を象徴するという。聖歌隊が「聖なる神、聖なる勇毅・・・」を歌い、輔祭(助祭)が「謹みて聴くべし」と注意を促して、使徒経と福音経の誦読(正教会訳は文語体)。その後、再び長い連祷を繰り返す。なお、説教は後述の領聖(聖体拝領)前に行う。

「ヘルヴィム(ケルビム)の歌」の天国的な調べが流れると、第三部の信者のための聖体礼儀(約75分)。至聖所から司祭がパンとぶどう酒を運んでくる。この行列を「大聖入」と呼び、ハリストスの葬送を表すという。聖変化で鐘塔の聖鐘が打ち鳴らされる瞬間(これを喜音と呼ぶ)は、最も美しく万感胸に迫るものがある。聖歌が絶えず流れ、連祷が続く。府主教の「平安にして出(い)づべし」との祝福を受け、約2時間40分の聖体礼儀が終わる。だが、この日はそうではなかった。<後編に続く>


東京復活大聖堂正門
“ 主や、光栄は爾(なんじ)に帰し、光栄は爾に帰す ”

(注):日本の正教聖歌の多くはロシア正教聖歌のメロディを流用しているが、それらを日本語の歌詞で自然に歌いこなしていることに驚く。なお、この日の聖体礼儀中に歌われた「ヘルヴィムの歌」は、ロシア聖歌の父・ボルトニアンスキー(Dmitry Bortniansky:1751-1825年)の作曲。「西のモーツァルト、東のボルトニアンスキー」とも言うべき珠玉の調べである。

<付記>
ユリウス暦に重きを置く正教会は、この日が五旬祭の主日(ペンテコステ)。領聖前の説教で、市村直巳神父は「聖神(聖霊)降臨祭を迎えました。イイスス(イエス)が天に昇られてから、私たちの傍にいて助けてくださる方、それが聖神です。『いつもあなたがたと共にいる』というイイススの約束は、聖神の降臨により果たされたのです」と話された(福音経はヨハネ7・38-52、8・12)。

◆主な参考文献・CDなど:
・「聖体礼儀のお話し」 東京大主教教区教務部編(日本ハリストス正教会教団東京大主教教区・1990年)
・「神さまの国へ ~聖体礼儀について」(日本ハリストス正教会教団 全国宣教委員会・2009年)
・「ギリシア正教入門」 高井寿雄著(教文館・1980年改版)
・CD「正教会聖歌集」 大阪・豊橋正教会聖歌隊ほか(日本ハリストス正教会教団府主務庁:CD-001)
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続・東方正教会の聖体礼儀

2013年06月07日 | 東方正教会
日本正教会 東京復活大聖堂教会
(住所:東京都千代田区神田駿河台4-1-3)

6月2日(日)、東京復活大聖堂(通称ニコライ堂)でサマリア婦の主日聖体礼儀に参祷した。携香女の主日以来、私にとって東方正教会の奉神礼(典礼)は2回目。聖堂内ではロシア人(と思われる)女性たちがイコンに十字を描いてお辞儀し、接吻している。そのエレガントな所作にウットリ。また、この日はロシア人(と思われる)男の子が堂役(侍者)を務めていた。府主教座下のジェーズル(権杖)を捧持したり、プロスフォラ(聖パン)を運ぶ姿が健気(けなげ)でカワイイ。

午前10時、聖体礼儀(ミサに相当)の開始を告げる鐘と共に、ダニイル府主教と司祭が厳かに入堂。ア・カペラの荘重な聖歌がドームに響き渡る。私が聖体礼儀の進行を把握するには、この聖歌を集中して「聴く」ことが必要だ(注)。この日の聖体礼儀は約3時間を要したが(奉献礼儀:35分、啓蒙者の聖体礼儀:50分、信者の聖体礼儀:95分ほど)、それはカトリックの簡素な現行典礼とは対照的に、正教会の奉神礼は連祷などの長い祈りを果てしなく歌い続けているからである。

「聖歌が奉神礼の肉とするなら、連祷は骨といえる」(高橋保行著『ギリシャ正教』より)。連祷の形式はカトリックの「諸聖人の連願」を思わせるが、これを聖体礼儀中に何度も繰り返す(大連祷、小連祷、重連祷、増連祷など)。聖歌隊が「主憐れめよ(賜えよ)」と応唱する度に、会衆は十字を描いてお辞儀する(その回数は50を超えていたと思う)。連祷と聖歌、そして乳香の匂いを通して、今ここに神の国が近づいてくるようだ。機会があれば、土曜の徹夜祷にも参祷したいと思う。<続く>


大聖堂入口
“ 来たれ、ハリストスの前に伏し拝まん ”

(注):聖体礼儀中は「ただ今から聖体拝領です」などのアナウンスは一切ない。ぼんやりしていると、前後関係を見失ってしまう。だから、輔祭(助祭)の「謹みて聴くべし」などの言葉、イコノスタスの王門の開閉、そして特徴的な聖歌を手がかりに、目と耳で進行の流れを確認しなければならない。例えば、「聖、聖、聖なる哉(「サンクトゥス」に相当)」が歌われたら、すでにアナフォラ(奉献文)に入っており、間もなく聖変化の瞬間を迎えることに注意する。

◆主な参考文献など:
・「ギリシア正教入門」 高井寿雄著(教文館・1980年改版)
・「ギリシャ正教」 高橋保行著(講談社学術文庫・1980年)
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東方正教会の聖体礼儀

2013年05月22日 | 東方正教会
日本正教会 東京復活大聖堂教会
(住所:東京都千代田区神田駿河台4-1-3)

5月19日(日)、東京復活大聖堂(通称ニコライ堂)で携香女の主日聖体礼儀に参祷した。私にとって東方正教会の奉神礼(典礼)は初めてである。ユリウス暦に重きを置く正教会は復活大祭(パスハ)を終えたばかり。その2週間後の日曜を「携香女の主日」として祝う。携香女とはイエスの遺体に塗る香油を携えたマグダラのマリアたちのこと。なお、正教会ではイエス・キリストを「イイスス・ハリストス」、聖霊を「聖神」、聖母マリアを「生神女(しょうしんじょ)マリヤ」と呼んでいる。

午前10時、聖体礼儀(ミサに相当)の開始を告げる鐘と共に、ダニイル府主教と司祭が厳かに入堂。ア・カペラの聖歌がドーム内に響き渡る。この世のものとは思えないほど美しい。イコノスタス(注)の向こう側で司祭がパンとぶどう酒の準備をする間(奉献礼儀)、聖所では祈りが捧げられ、祭服を召す府主教の着衣式も行われた。やがて王門が開くと、啓蒙者の聖体礼儀(言葉の典礼)。連祷とアンティフォン(倡和詞という歌)を繰り返し、福音経の誦読。歌は絶えることがない。

「ヘルヴィム(ケルビム)の歌」が流れると、信者の聖体礼儀(感謝の典礼)。領聖(聖体拝領)の前に説教という位置づけが意外。首司祭の山口義人神父は、「今日、私たちは携香女に敬意を表し、彼女たちの固い信仰、ハリストスへの愛を記憶します。身近な者に幸いを与える女性の愛は、ハリストスの教えの賜物、そして教会全体の宝です」と話された。荘厳な聖体礼儀は約2時間半に及んだ。しかし、それは天の国のようであり、本当にキリストの息吹きを感じるほどであった。<続く>


大聖堂入口
“ 父と子と聖神の国は崇め讃めらる、今も何時も世々に。アミン ”

(注):イコノスタスは聖堂内正面に見える壁。その向こう側が至聖所であり、聖体機密(秘跡)が執行される。壁の中央に王門、左右に南門・北門と呼ばれる扉があり、聖体礼儀中に司祭や輔祭(助祭)が出入りする。例えば、小聖入では司祭が福音経を掲げて進み(キリストの宣教を表す)、大聖入ではパンとぶどう酒の捧物を運ぶ(キリストの葬儀を表す)。ともに門を経て「行進」する。聖変化は至聖所内となるが、その瞬間は鐘塔の打鐘(喜音)によって知ることができる。

<付記>
上述のように、聖体礼儀は奉献礼儀、啓蒙者の聖体礼儀、信者の聖体礼儀の三部から成る。この日の聖体礼儀は聖金口(せいきんこう)イオアンが編纂したもの。聖体礼儀中、司祭と聖歌隊はひたすら歌い続ける。会衆が歌う場面は少なく、「真福九端」「ニケヤ信経」「天主経(主の祈り)」など。2時間半、会衆は殆ど起立して臨む。これは「神により死の床から起こされた人間の姿勢」であり、それによって「生じる苦痛を幾度となく感ずるたびに、この意味を思い起こす」という。

◆主な参考文献・CDなど:
・「ギリシャ正教」 高橋保行著(講談社学術文庫・1980年)
・「聖体礼儀のお話し」 東京大主教教区教務部編(日本ハリストス正教会教団東京大主教教区・1990年)
・「神さまの国へ ~聖体礼儀について」(日本ハリストス正教会教団 全国宣教委員会・2009年)
・CD「正教会聖歌集」 大阪・豊橋正教会聖歌隊ほか(日本ハリストス正教会教団府主務庁:CD-001)
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