三多摩の鐘

The Bells of San Tama -関東のキリスト教会巡り-

続々・東方正教会の聖体礼儀<前編>

2013年06月25日 | 東方正教会
日本正教会 東京復活大聖堂教会
(住所:東京都千代田区神田駿河台4-1-3)

6月23日(日)、東京復活大聖堂(通称ニコライ堂)で五旬祭の主日聖体礼儀に参祷した。前回に続き、奉神礼(典礼)の流れを復習しよう。午前10時、聖体礼儀(ミサに相当)の開始を告げる鐘と共に、ダニイル府主教と司祭が厳かに入堂。ア・カペラの聖歌(注)が響く。第一部の奉献礼儀(約35分)は司祭が至聖所でパンとぶどう酒の準備をする。その間、聖所では祈り(時課経?)を捧げると同時に、升壇上で府主教の着衣式、及び聖堂内を香炉で清める全堂炉儀が行われる。

イコノスタスの王門が開き、第二部の啓蒙者のための聖体礼儀(約45分)。連祷とアンティフォン(倡和詞という聖歌)を繰り返すと、至聖所から福音経を捧持した司祭が現れる。この行列を「小聖入」と呼び、ハリストス(キリスト)の宣教活動を象徴するという。聖歌隊が「聖なる神、聖なる勇毅・・・」を歌い、輔祭(助祭)が「謹みて聴くべし」と注意を促して、使徒経と福音経の誦読(正教会訳は文語体)。その後、再び長い連祷を繰り返す。なお、説教は後述の領聖(聖体拝領)前に行う。

「ヘルヴィム(ケルビム)の歌」の天国的な調べが流れると、第三部の信者のための聖体礼儀(約75分)。至聖所から司祭がパンとぶどう酒を運んでくる。この行列を「大聖入」と呼び、ハリストスの葬送を表すという。聖変化で鐘塔の聖鐘が打ち鳴らされる瞬間(これを喜音と呼ぶ)は、最も美しく万感胸に迫るものがある。聖歌が絶えず流れ、連祷が続く。府主教の「平安にして出(い)づべし」との祝福を受け、約2時間40分の聖体礼儀が終わる。だが、この日はそうではなかった。<後編に続く>


東京復活大聖堂正門
“ 主や、光栄は爾(なんじ)に帰し、光栄は爾に帰す ”

(注):日本の正教聖歌の多くはロシア正教聖歌のメロディを流用しているが、それらを日本語の歌詞で自然に歌いこなしていることに驚く。なお、この日の聖体礼儀中に歌われた「ヘルヴィムの歌」は、ロシア聖歌の父・ボルトニアンスキー(Dmitry Bortniansky:1751-1825年)の作曲。「西のモーツァルト、東のボルトニアンスキー」とも言うべき珠玉の調べである。

<付記>
ユリウス暦に重きを置く正教会は、この日が五旬祭の主日(ペンテコステ)。領聖前の説教で、市村直巳神父は「聖神(聖霊)降臨祭を迎えました。イイスス(イエス)が天に昇られてから、私たちの傍にいて助けてくださる方、それが聖神です。『いつもあなたがたと共にいる』というイイススの約束は、聖神の降臨により果たされたのです」と話された(福音経はヨハネ7・38-52、8・12)。

◆主な参考文献・CDなど:
・「聖体礼儀のお話し」 東京大主教教区教務部編(日本ハリストス正教会教団東京大主教教区・1990年)
・「神さまの国へ ~聖体礼儀について」(日本ハリストス正教会教団 全国宣教委員会・2009年)
・「ギリシア正教入門」 高井寿雄著(教文館・1980年改版)
・CD「正教会聖歌集」 大阪・豊橋正教会聖歌隊ほか(日本ハリストス正教会教団府主務庁:CD-001)
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